〜抱擁〜 鳴るは銃声。 そして――罵声。 「何考えてんだ! アスラン!!」 「言うな!!」 ディアッカの叫びに、アスランは返す言葉もない。 つい数秒前、ディアッカとアスランは、扉の陰から部屋の中を覗き見た。そして――監視カメラの映像を映すたくさんのモニタの中から、カガリとミリアリアが走る映像を見て、彼が声を上げてしまったのだ。 「カガリ!!」 と。 おかげで「侵入者は排除せよ!!」というスローガンの下、激しい銃撃戦が始まってしまったのである。 「どーするよ」 「どーするって……どーにかするしかないだろ」 自分でまいた種ながら、アスランは呻くことしか出来ない。 「……じゃ、どーにかしましょーか」 先ほど、拘禁室で奪っておいた拳銃を手に、策を考える。 弾切れを待つ――は論外。この音を聞きつけ、増援が来る可能性が高い。よって、逃げると言う選択肢も選ぶことは不可能だ。何せ近くに、身を隠せそうな部屋も、物陰もない。 挟まれたら、それこそアウトである。 やはり――中に踏み込むしかない。 問題は、残り弾数。先ほど確認したところ、わずか二発の弾丸しか装着されていない。 「こりゃ、肉弾戦に持ち込むしかないな」 「……頭数減らして突入――か」 作戦を立てる内に、入り口から伸びる影を見つける。 通路に照明はない。しかし部屋には電気が点いている。 影は――通路に向かって生まれてくる。 「……らっきー」 同時にディアッカは、銃口のみを部屋に入れた。 床に着くか着かないかの高さで、まず一度、引き金を引く。 直後、中から痛みを堪える声と共に、膝を突く音が聞こえた。 一方でアスランは、目の前の壁を注視した。正確には――壁にかけられた、何らかの金属で出来た装飾品を。 装飾品の一部分が、鏡の原理で、部屋の内部を映している。おかげでアスランの目には、中の様子が手に取るように分かった。 〈六人……か〉 一点に集中し、一撃ずつ、的に当てる。 アスランが狙うは、武器を持つ手。 ディアッカが足を狙って動きを封じ、内部を把握できるアスランは、武器を撃ち弾き――頃合いを見計らって突入。あとは乱打戦にもつれ込んで…… こうして、圧倒的不利な状況から、二人は逆転勝利をおさめるのだった。 |