〜約束〜




「……デートか?」
「そんなんじゃないわよ」
カガリに聞かれたミリアリアは、瞬間的に否定した。


お昼過ぎの出来事――
国家元首として仕事に追われながらも取材に応じるカガリと、カガリの……いや、オーブという国の進む道を正確に伝えようとするミリアリア。取材の終わりに何気なく出た言葉から、その議題は始まった。
取材に使った応接室が、二人きりの密室状態だったからこそ出来た話かもしれない。もし取材が始まる時、アスランを筆頭にしたSPやお付きの秘書達が、もう少し「護衛を全て外すなんて出来ない」と粘ったら、こんな話題は出なかっただろう。

「え? でも、どう考えたってデートだろ?」
「どうしてデートになるのよ」
「だって、待ち合わせて夕食って……」

鈍いカガリですら、そういう結論に至ってしまう。
腕を組んで、天井を仰いで、再びミリアリアに視線を戻すと、カガリは続けた。

「しかも相手はディアッカだろ?」
「そうよ」

これまたあっさり、ミリアリアは言った。
「だからデートになるわけ無いの」
平然と。

「久々に会える機会が出来たから、ゆっくり話そうって」

それ以上でも以下でもない――そんな思いを、彼女は強い視線に乗せた。
追撃は許さない、と。
おかげでカガリの方が、目をそらす羽目になる。
だが金髪の姫君は、納得のいかない面持ちだ。何とか取っ掛かりを見つけ出し、詳しく話を聞きだそうと試みる。

「でも……あいつがザフトに戻って……それ以来なんだろ?」
「もちろん」

戦争が終わり、ザフトに戻ったディアッカ。彼は当初、赤服のエリートとして復隊した。
――今はただの一般兵に成り下がっているが。

そんな彼がプライベートで遙々オーブまでやってくるのは難しい。
ならなぜオーブにいるのか。
理由は簡単、仕事だから。オーブと外交協議を行なうプラント評議員の護衛として借り出されたらしい。
仕事とはいえ、会う機会が全く無いディアッカとミリアリアにとっては、まさに棚からぼた餅。

「……やっぱりデートじゃないか」
「カガリしつこい」
「今日は7月7日だぞ?」
「……そうだけど」
「まんまじゃないか」

言ってカガリは、どうだ! と言わんばかりにふんぞり返った。

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