〜事件〜 ディアッカは走った。ミリアリアとの待ち合わせ場所まで。 ただし、あまり土地勘の無い場所の上、熱を帯びた頭であることも手伝って、道を何本か間違え……結局森林公園に着いた時、時刻は八時を過ぎ去っていた。 ミリアリアの姿は――あるはずもなく。 「……だよなぁ」 膝に手をつく彼の顔には、なんとも言えない笑みがある。彼女がここに残っているとは思っていなかった。ただちょっと……ほんの少しだけ望みを持って来ただけだから、いないことに対する寂しさはない。 ――と考えながらも、心に吹くむなしい風。 「……どーすっかなー……」 ここにいないと分かった以上、彼女の向かいそうな場所をしらみつぶしに探すしかない。 ……のだが。 悲しいかな、ディアッカはオーブの地形に疎いうえ、ミリアリアが行きそうな場所など見当も付かない。強いて言うなら自宅だが、やっぱり場所は分からない。 あの時聞いておけば良かったと、ひたすら後悔する。 「あとは……そうだ、電話!!」 そう、電話。最初から、この文明の英知を使っておけば良かったのだ。 出てくれるか分からないが、見知らぬ土地をうろつくよりよっぽど効率が良い。 ディアッカはポケットに手を入れ――愕然とする。 「――イザークが持ったまんまじゃねーか……」 後悔の連続に、ディアッカは頭を抱えた。 |