ザフト襲撃


暗いカタパルトの中、三人の男が佇んでいる。
一人はドゴラ首領・ガイストロ、残り二人は、未だ十代と思われる少年だった。
彼らが見やるは、二つの機体。

「これが、俺たちの機体か」

オレンジの髪を持つ少年が、満足気につぶやく。

「で? 俺はどっちもらえるんだ??」
「改式だが……本当にいけるんだろうな」
「誰に向かって聞いてんだよ、なあ?」

彼は陽気に、同意を求めるよう、もう一人の少年に話を振った。しかし彼は、少年の方を見向きもせず、

「……俺に、乗れと?」
「嫌だとは言わせねえぞ?」

少年とガイストロの意味深なやり取りを見て、オレンジ髪の少年は、どんどん不機嫌なものに態度を変えていく。

「……首領! 飛行テスト行って来る!!」
「おい、待てアネハ!!」

アネハと呼ばれたオレンジ髪の少年は、ガイストロの制止を振り切り、『改式』へと乗り込んだ。
黒の機体に光が灯り、その様を、もう一人の少年は哀しげに見つめ続ける。

動く黒神の姿……それは、知る人ぞ知る『伝説』の名を冠する機体だった。







-ソラニマウヒカリ-
PHASE3−ザフト襲撃







「上層部は、何を焦っている?」

一口だけコーヒーを口にしてから、イザークは話を切り出した。
そこはザフトの食堂。機体受領を無事見届けたイザークが、痺れを切らせてアスランを強制連行したのである。
戦力が回ってくるのは嬉しいが……さすがに二つしかない改良モデルを、よりによって、復帰直後の二隊に渡すのは、如何なものか。

「……簡単なことさ」

アスランは椅子の背もたれに身体を預け、うめく。

「証拠が欲しいんだよ」
「証拠??」
「ギルバート・デュランダルが、悪人だったって証拠がな」

ため息混じりに、彼はカップに手をやった。

「戦争の元凶をロゴスと決め付け、あの人はそれを討った。地球でデストロイが街を襲撃したのも、表向きにはデスティニーってことになってる。あの人に救われたと思ってる人は、たくさんいるんだ。でも、新たに発足する評議会にとっては、そのイメージはマイナスでしかない。あの人の理論を肯定付ければ、ただでさえ不安定な地球外交が、再び暗礁に乗り上げるからな」
「つまり、決定的な悪役になってもらう――と?」
「実際……俺らはあの人の手の内で、どれだけ遊ばれてたのか分からないぞ?」

ごくん、と半分ほど一気に飲むと、アスランはイザークにとって、衝撃的な事実を告げた。

「あの人は……ギルバート・デュランダルは、ロゴスの一員だった可能性がある」
「――な!!」

それは、ごく一部の、わずかな人間しか知らない現実。


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