歯車の噛み合う時


宇宙が泣いてる――


あまたの命を飲み込んで、悲しみに震えてる。

それは自分の涙か。
自分の思いを、反映させただけか。


かなしくて、くるしくて、こわい……


彼は罪を犯した。

決して許されないと、分かっている。

ここにはいられない。
側にいてはならない。

だから彼は、誰にも言わず、姿を消した。
自分を知る人のいない場所へ行こう。

現実から逃げる。
そこに再び、罪の意識を感じても。


その日を境に、彼はぷっつりと消息を絶った――






-ソラニマウヒカリ-
PHASE1−歯車の噛み合う時






そして、同じ夜。

「どーだ? まだか?」
「もう少しです」

『彼』が『みんな』の前から姿を消した夜、宇宙で不審な動きをする船団がいた。
総計三隻の宇宙船……なりは小柄だが、全ての船に戦闘用の装備が施されている。
それも結構、強烈なものが。

「……奴ら、今日はやけに粘るな……」

メインモニタに映るのは、戦艦数隻と、作業中のMS達――要はザフトだ。
そしてもう一つ、今や原型も留めていないが、以前は『宇宙をさ迷う城』だった建造物。前議長、ギルバート・デュランダルの居城だった、移動要塞『メサイア』だ。
彼らの用事はここにある。しかしザフトにいられては、用事を済ますことは出来ない。

「……お?」

艦長席に座る男から声が上がる。
クルーの会話を聞きながら、ひたすらモニタを注視していた『船をまとめる者』は、MSの動きの変化をつぶさに読み取った。
MSが母艦へ戻っていく――すなわち、本日の作業が終了した証である。

「待たせやがって」

男の声に呼応する様に、ブリッジは途端に慌しさを見せた。皆がみんな、真剣な表情を作り上げる。
一方MSを全て帰還させたザフト艦は、足早にプラントへと戻っていった。
潜んでいる三隻の船になど、気づきすらせずに。
やがてザフトの船が、レーダーから消失し――

「よぉし!!」

威勢良く、中央を陣取る男が立ち上がった。

「偉大なるザフト諸君が戻ってくる前に、とっとと探し出すぞ!!」

彼らは無人となった戦場跡へと船を進める。
ザフトが調査中の、戦場だった場所。
ギルバート・デュランダルの眠る城。


求める『宝』を手に入れるために。


彼らは目論見通り、目指す『宝』を見つけ――
同時にもう一つ、予想だにしなかった『宝』をも発見する。



それはメサイアが崩壊して、わずか5日後の出来事だった。





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