未来の道標


その時、キラは夢の中にいた。レイが目を覚ましたことで安心し、少し横になろうとベッドに身体を預け、目を閉じて。
夢の中で、彼女を見つけた。
桃色の髪をたなびかせ、柔らかく微笑むラクスを見つけた。
まだキラは、彼女に会いに行っていない。
本当は、この地に降り立ったら、何よりも先に会いに行きたかった。けれど彼は、レイとミリアリアを優先した。
一連の事件から、すでに三日が経っている。どうやって連絡を取ろう……そう思いをはせた矢先、ふと、懐かしい香りが鼻をくすぐった。

違う。彼女はここにいない。
夢の中の幻。
でも……それにしては、すごくはっきりと…………
瞼は重たかったが、あまりの臨場感に、キラの瞳は開けられた。

「ごめんなさい。起こしてしまいましたわね」
「いや――……」

彼の瞳が捉えたのは、申し訳なさそうに謝るラクスだった。出来すぎた偶然に、キラは目を丸くする。
会いに行こうと思っていたのに、逆に足を運ばれてしまった三ヶ月ぶりの再会劇。

「……どうして、ここが……?」
「アスランから話を聞きました。で……お二人の様子は?」
「大丈夫。今のところは」

キラの笑顔に、ラクスは安堵の微笑を浮かべる。
二人は、色々話し合った。
ラクスがキラに話したかったこと。
キラがラクスに話したかったこと。
それは、どれだけ時間があったとしても、話したりない様な世界。互いに行なわなければならないことがあって、互いを最優先に出来ない状況にある、二人の願い。


傍にいたい。
けど、いられない。


だからラクスは願った。

「一緒にオーブに行ってもらう事は、出来ませんか?」
「いつごろ?」
「出来るだけ早い内に」

二週間後、ラクスは正式に議長に任命される。その後はもう、自分の自由に動き回ることは出来なくなってしまう。だから、出来るだけ早くオーブに渡って……そして『オーブでやり残したこと』に区切りをつけておきたかった。
それはキラも同じこと。
一ヵ月後には、レイの手術が控えている。
そこまでは、現在の薬で体調を整えることが出来るが、その後はしばらく、付きっ切りにならなければならないだろう。そこを考えても、行くなら、出来るだけ早い時期が良かった。


二人が互いを想い合える、尊い時間。
ラクスが議長になれば、次に触れ合えるのはいつになるか分からない。



そして二人はオーブに渡った。
最初に向かったのは、海岸沿いの慰霊碑。平和を願う、たった一つの墓標の元へ。
そこに向かったのは二人だけではない。
アスランも、メイリンも、ルナマリアも……シンも。





オーブに行こう。





そう決めたそれぞれが、一番最初に向かった先がそこだった。
そして、慰霊碑の前で。
六人は、邂逅の時を迎えた――……






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