シン きっと、あの時。 ミリアリアの脳内では、その光景が鮮明に思い出されていた。 腕の傷をつけられた時を。 彼女はライドンと一度、大きく接触している。シンとともにデュッセルカンパニーに入った時、その地下に行く最中、ミリアリアはライドンと二人っきりになった。 あの時以外、考えられない。 思い返してみれば、それらしい「不自然なこと」が指折り数えて挙げられる。 「なんで黙ってんだよ」 「ごめん……」 眉間にしわを寄せるディアッカに、ミリアリアはひたすら謝るのみ。 そうこうしている内に、電話から、再びクルゾフの声が響いてきた。 《……もしもし? 聞こえているか?》 「はい。申し訳ありません、任務中に私事を入れまして――」 《いや、良い。それより君の傍に、ライドンにより何らかの薬を投与された可能性のある人物がいる、ということなんだな?》 「そう、ですが」 《ならばすぐ、調べたほうが良い。早急に病院へ……ザフトの医療室へ運んでくれ》 「分かりました」 「――待って」 と、ミリアリアが二人を制した。直前まで今にも泣き出しそうだったミリアリアの表情は、モニタのある一点を目にした瞬間、危機感募るそれに変わった。 そこには、Lシステムの攻撃ラインが記されている。コンピュータ上で、発射されてから着弾地点までをひたすらシミュレートし続けているのだが、それは、二人の目を疑う場所へと伸びていた。 「ねえ、Lシステムの照準って……」 「……そうくるか……」 ある意味、ディアッカは納得した。 ライドンが選んだLシステムでの攻撃目標、それは――プラントだった。 -ソラニマウヒカリ- PHASE16−シン 戦火は、徐々に縮小していった。グランが敗れた、という情報が伝わったこともあり、敵の士気は著しく低下。制圧も時間の問題となっている。 そんな中、キラは不安なものを感じていた。 胸がざわざわする。とてつもない、焦燥感。 別の何か、大きな意思を感じ取る。 「イザークさん、僕、アスランの様子を見てきます」 《分かった》 イザークに伝え、キラは飛び立った。 嫌な予感がする。まるで、とても大切なものを失ってしまうような…… |