女神降臨


「キラ!」
《アスラン……大丈夫?》

グランとの戦闘が終わり、ようやくアスランはキラと通信を繋げた。そんなキラが最初に放ったのは、アスランを心配する言葉。
身体の心配ではない。心の心配だ。
自分の手で、ジャスティスを破壊したことに――


「問題ないさ」


平静を装い、アスランは言う。
……実は結構、堪えている。相手は「兵器」。情など感じてはならない存在。けれど彼は、何度も「ジャスティス」に助けられ、力を使い続けていて……

「どうせ、もうすぐ廃棄される運命だったんだ」

そうやって、ただの事象として片付けようとする。

「……それより、『これ』と同型のザクを見かけなかったか?」
《その、アスランの乗ってるザク……? いや、僕は見てないけど……》

今、はじめて見た機体だ、と目を伏せる。
キラも『彼女』を見ていない。本当に、どこへ行ってしまったのか――



《――ようやく追いついたぞ、アスランッ!!》



ルナマリアの捜索に戻ろうとしたアスランの耳を、またもイザークの声が貫いた。







-ソラニマウヒカリ-
PHASE14−女神降臨







モニタに大きく映りこむイザークの怒り顔に、アスランはただただ呆れ果てた。パイロットスーツをまとう彼は、どうやらこちらに急接近しているMSに乗っているらしい。

《貴様、俺を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!》
「いや、馬鹿にしてるつもりは……」
《してないわけが無い!! もし仮にしていなかったとすれば、あんな、いきなり通信を切ったりなどするものか!!》



――ああ、そうか。あれを怒っているのか。
さっき途中で通信を中断させた、あれを。


わざわざMSに乗り込んでまでそんな文句を届けてくれるイザークに、アスランは脱力してしまった。
何を言っても、こちらへの非難しか返ってこない。彼には、どうにか怒りが収まってくれることを待つことしか出来ない。
こんな時、ディアッカがいたら、イザークが程よく怒ったところで、程よくなだめて、程よくこの勢いを戦闘に向けさせてくれるのに……
アスランは、この場にディアッカが同行していないことを、ひどく恨んだ。そして不思議にも思う。
いつもイザークの傍で彼を守っているはずのディアッカは、いったいどこに行ったのだろう、と。


《聞いているのか、アスラン!!》
「聞いてる聞いてる。それよりイザーク――」
《それより、だぁ?!》
「……そっちも大事かもしれないが、こっちの大事な質問をさせてくれ。なあ、エルザはどこで戦ってる?」
《――エルザ?》


エルザ。
その名を出され、イザークは急に静かになった。


《……エルザなら、向こうの上司に聞いた方が早いだろ。――ウーレス隊長!》

彼はすかさず、ルナマリアの上司・ウーレスを通信に介入させる。面倒そうに回線を開いたウーレスは、エルザの配置場所を聞かれると、カンパニーの入り口に配置された第一部隊の後方支援、と答えた。

《ま、順当に戦っていれば、あの辺で混戦じゃないか?》





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