君のための正義


ミーアさん、聞こえますか?
貴女に、私の歌は届きますか?





魂を乗せ、想いを歌い伝えるラクスは、時折その脳内に、一人の女性を思い浮かべていた。
自分の身代わりを演じ、そして自分を庇って命を落とした『ミーア・キャンベル』を。
彼女が亡くなってから、ラクスの心は激しい後悔に襲われ続けた。


自分の歌を諦めてしまったミーア。
けど最期に、自分の歌を歌いたいと言って、彼女は息を引き取った。


もしも――……もし、自分がオーブに逃れなかったら。
もしプラントに残っていたら。
少なくとも、彼女の悲劇は防げたかもしれない。



〈違うよ。ラクスが悔やむことじゃない〉



そうやって、彼はひたすら慰めてくれた。
心の苦しみを取ってくれるのは、和らげてくれるのは、いつも――キラ。


目を閉じて、歌を続ける。
たくさんの人の顔が浮かび、そして消え……一通り廻った後、やはり彼は現れるのは、キラ。

優しく、抱きしめてくれる。
自分も、キラを抱きしめる。

辛い時、いつも傍にいてくれたキラ。
逆にキラが苦しい時は、全身全霊をかけて支えてきた。
傍にいない生活なんて、考えられない。



けど、もう、オーブには戻れない――



彼女はしっかりと、自分の立場を認識している。だからこそ、戻れない。ここで、こうして、自分を求めている人々を置いていくことなんて、出来ない。


だって彼女は[ラクス・クライン]。
[平和の歌姫]であり、[平和の象徴]。プラントと地球を繋ぐ[希望の欠片]でもあるのだから。



〈ごめんなさい、キラ……約束……守れそうにありません……〉



プラントに降りると言ったとき、キラは反対した。



――必ず、帰ります。貴方の元に、戻ってきます――



そうやって、説き伏せたのに……戻れない。
彼女の中に芽吹いた[正義]の[種]を貫くためには――







-ソラニマウヒカリ-
PHASE13−君のための正義





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