未来に続く扉







宇宙はいつも変わらない。
地球も、いつも変わらない。





感慨深く、ミリアリアは首から下げるカメラを撫でる。

あれから二年が経った。
たくさんのことがあった。
悲しいことも、苦しいことも。
ジャーナリストとして世界を飛び回り、危険な目にもあったし、再び戦争に参加することになってしまったり。




色々あって……ここに立っている。


オーブの、ターミナルドッグ。見上げればとても近い距離にマスドライバが映り、宇宙に飛び立つ船の姿がはっきりと確認できた。


そう。彼女が次に向かう先は、宇宙。もう一つの、人類が住まう場所であり、ミリアリアはなんとしても『プラントの姿』を写真におさめたかった。


いつも……参戦中も離すことのなかったカメラで。
偽り無く真実を――現実をとらえ続けた、トールのカメラで。


時間にしてわずか数秒。目線をマスドライバからターミナルの時刻表へと移し、左手首に光る時計へと流す。
搭乗手続きまで、あと五分ほど――



「ミリアリア!!」



――そんな折り、よく知る人物の声がミリアリアに届いた。見ると、公務で忙しいはずのカガリがこちらに向かって走ってくる様が目に飛び込んできて、彼女は内心「失敗した」と思っていた。
忙しいからこそ、見送りは良いという思いも込めて、電話ではなく手紙を使って出発を伝えたのに。

しかし彼女も、ただ見送りに来たわけではない。

「とにかく、これに目を通しておけ」

渡されたのは、現在におけるプラントの情勢等を記した資料だった。ミリアリアも、プラントが危険な状態であると認識しているが、そこには彼女が考える以上のことが書かれていた。

「ありがとう、カガリ」
「ほんと、気をつけろよ?」

心配する瞳に「大丈夫」と投げかける。それで安心できるわけでもないが、ほんの少しだけ、カガリの発する緊張感が解けたように感じた。

「……まじめな話、何かあったらディアッカ頼れよ? 変な意地張んないで」
「それはほんと、無理だから」

カガリの言葉に、ミリアリアは苦笑するだけ。




別れ際の言葉は最悪。
決別としか取れない響きに、ディアッカから連絡がくることはなく。
そしてミリアリアも連絡先を知らない。

長い月日が、二人の間をどんどん遠ざけていく。




会えるわけがない。
話せるわけがない。
でも願わくば……








願わくば、元気でいてほしい彼の姿を、一目で良いから見てみたい――……


そんな願望も抱えながら、ミリアリアはプラント行きの船に乗った。




その先で、どんな出会いが。
どんな事件が。
どんな再会が待っているかなど、知る由もなく……







-NEXT STORY of ソラニマウヒカリ-


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