言ってしまったコトバ





「――好き、なんだ!」

余裕なんて、無い。
堪え切れなかったものは、しようがない。
一度口に出してしまえば、簡単に撤回できるものでもない。


「俺は、お前が……好きなんだよ!」


一度言ってしまえば――もう、戻ることなんて出来ない。感情にブレーキをかけることが出来ず、ディアッカはミリアリアを抱きしめた。
方やミリアリアは、目を丸くした。
びっくりして。本当に――驚いて。

自分を、好き?
どうして?
私には、トールがいるのに……





トールという、立派な恋人がいるのに。





トールのことが、こんなに好きなのに。
トールを好きだと、ディアッカも知ってるはずなのに。


そんなこと、言われたって。
返せる答えなんか。


ひとつしか、ないじゃない。


「無理、よ……そんな……そんな、のっ……!」
「ミリアリ――」
「なんでそんなこと言うのよ!」



だめ。
だめ。
感情が。
爆発する。



心も。
疲れて。
精神が。
心の奥底が。
今にも泣き出しそうで。
狂ってしまいそうで。


何も。
なにも。
考えたくないのに。



なにも――……



「……きらい……」


できることは、唯一つ。
甘えちゃいけない。甘えたら……今ここで拒絶しなければ、きっと、二度とトールに顔を見せられない。




「あんたなんか、大ッ嫌い!!」




好き、と言われて――ほんの少しでも「嬉しい」なんて――思っちゃいけない。だから力の限り叫んだ。力を振り絞って、ディアッカから離れて、デッキを飛び出した。

「ミリ――…………っ!!」

方やディアッカは手を伸ばす。決して届かないと分かっていながら、反射的に伸ばされた手は虚空を掴み、やって来るのは後悔のみ。
なぜ――言ってしまったのだろう。
もやもやしたものを抱えながら、ディアッカもまた、デッキを出て行くのだった……

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