造反の楔






「空が高いわー……」
「ああ、高いですねー……」

その時、二人は空を見上げていた。
茶色の長い髪を裾で結わえた少女と、金色の短髪に眼鏡の良く似合う少年は、太陽が照りつける浜辺で二人きり。
賑わう海水浴場から少し離れた所で、まるで途方に暮れる様に。

「ねえ、眼鏡君。これからどうしたら良いのかしら」
「とりあえず、俺は『眼鏡』って名前じゃないです」

眼鏡呼ばわりがよほど気に入らないのか、少年は途方に暮れたまま、笑顔でツッコミを入れる。

「せめて、何か騒ぎでも起きてくれれば……」
「どうして騒ぎが必要なの?」
「あの面子が集まって、平穏無事に旅行できるわけ無いと思って」
「まあ確かに、あの馬鹿とアスラン・ザラだけで、大騒動引き起こしかねないわね」


――いや、どっちかと言うと、イザーク・ジュールが一番騒ぎ引き起こしそうなんですけど――
……とは口が裂けても言えず、少年が、止む無く押し黙った時だった。

「ん?」

少年が、何かに気がついた。

「あれは……」

少女もまた、それに気付く。
とある建物が視界に入った。それほど立派でもない、しかし、例えば地元の若者達が集まる場所としては、かなり最適と思われる物件。
そこに、沢山の人間が集まっている。統一された服装。まるで警官隊の様にも見える。
いや、まるでではない。れっきとした警官隊だ。


あれは――まさに、探し求めていた『騒動』ではないか?


「行くわよ、眼鏡君!」
「だから俺は眼鏡じゃなくて――」

そう判断した瞬間、二人は騒動へと飛び込んで行った。




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