彼の人を想う






ミリアリアとカガリは、一度決めたら行動が早い。
とにかく早い。
すこぶる早い。
まずカガリが自家用ジェットを手配して。
その間に、ミリアリアは着替え等の身支度を済ませ――二人がレテスティニ島に旅立つ準備は、一時間かからず完了した。
一つ、難点を言うのなら、

「カガリ! 一体どこまで行くんだ!」
「レテスティニ島だ!」
「レテス……待て、カガリ! 今日出かけるのは構わんが、明日には重要な会議が――」

出発直前に、キサカに見つかってしまったことだろうか。
今日、明日とカガリはオフ日となっている。しかし、行き先が観光地であることに、キサカは懸念を示した。
今日は良い。でも明日は、オーブ官邸に居てもらわなければならない。

「分かってる! 昼までには戻るから!!」
「戻らなかったら、連れ戻しに行くからな!」

半ば無理矢理キサカをやり過ごし、カガリはジェット機の中に入った。

「ったく……変なところで融通が利かないんだよな、キサカって……」

ぶつぶつ文句を言いながら、カガリはミリアリアの隣に座る。
静かに、ちょこんと小さくなって、隣を見ると……まあ、鬼のような形相で。


「そんなに信用無いのかしら……」


つぶやきは、ジェット機が離陸した直後に紡がれた。
ミリアリアから、とても……寂しそうに。

「何の信用だ?」
「色々考えたんだけど……あいつって、結構私に報告する癖あるのよね。どこに行く〜、何をする〜……でね、事後報告は珍しいの。そう考えたらさ、もし旅行に行くって言ったら、私が駄目って言うかもしれないから、黙って行ったのかな〜……って思っちゃって」

言ってミリアリアは、瞳を落とす。カガリは声をかけようとしたが、その前に、彼女が先に、顔を上げた。

「でもそうなると、あいつ、今日のことをしっかり覚えてた……うっかり忘れて旅行にくり出したんじゃない――ってことになるわよね?」
「……そういうことになる……な」

外を見ると、流れるような青い空。
彼女の心も、これくらい晴れわたってくれれば良いのに、と思う。
悩みなんて一つも無く……いや、無理な話か。
何せ彼女は、何も知らされていない。知らされてないから、現地に突撃しようとしているのだから。
……止められなかった以上、情報は与えておくべきかも知れない。

「あいつは……ディアッカは、心配かけたくなかったんだと……思う」
「カガリ?」

カガリは、たどたどしく言葉を紡ぎだす。そんな彼女を、ミリアリアは不思議そうに見上げた。
目が、泳いでいる。

「……どうせ、着けば嫌でも知ることになるから、先に言うけどさ……ディアッカ、遊びに行ったわけじゃないんだよ。その、アスランに……アスランとイザークに、無理矢理連れて行かれた……というか……」
「は?」
「ごめん! あいつが黙って行った以上、私が言うべきじゃないとは思うんだが――」

目の前で手を合わせ、突然告白を始めるカガリに、ミリアリアは目を丸くする。
何を行っているのだろう……と思うと同時に、何故カガリがそんなことを知っているのか――そっちの方に頭が行ってしまって。




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