「いやあああああああああああああっ!!」



悲鳴は、オーブのとある建物から放たれた。
ナチュラルとコーディネーターの共存する理想郷・オーブ。真昼間から響いた悲鳴は、聞いていた全ての者に恐怖を与える。

それだけの力があった。
それだけの威力があった。

白い紙を手に、床へと崩れ落ちる少女は……瞳から涙を零し、同時に、激しいまでの憎悪を瞳に宿していた。

「あいつ……あいつの仕業ね……」

ゆらりと少女は立ち上がり、全面の窓辺に立つ。
見下ろす先には、平和な平和なオーブの街並み。

「絶対、許さない……!!」

ぐしゃりと、紙が握りつぶされる。
それは、午後の昼下がりに起きた一幕だった。





小麦色のアイランド
旅立ちの鐘






人間とは、悩み多き生き物である。
ここにも一名、悩んでいる人間がいた。

「……もー……何なのよ、あいつ」
「……何なんだろうなー……」

時間は、太陽が姿を見せて数時間と経たない午前中、カガリの部屋でのことである。
悩んでいるというか、腹を立てているというか。どちらかと言えば、相談をしている人物よりも、相談事を受けている人物の方が、悩み多き姿を見せている。

カガリ・ユラ・アスハ。
彼女は目の前でひたすら呻くミリアリアを相手に、軽く目をそらしながら、かなり曖昧な言葉を選んでいた。
呻くミリアリアは、怒っている。
かなり、めちゃくちゃ、盛大に怒っている。
そして怒りの原因がディアッカとなると……下手に意見するより、聞き流した方が、断然良い結果に繋がることを、カガリは学習していた。

が。


「何なのよ、カガリ! その、気の無い返事は!!」


今回ばかりは、これまでの経験が通用しなかった。
どうやら、もう少し親身になって聞き流した方が良かったらしい。




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