貴方の責任 「……俺が作ったと思ってるのか? その爆弾」 「貴様が製造者じゃなかったとしても、止める手段は確保しているはずだ。目的達成の前に発動したら、大変だからな」 「――……」 イザークの正論に、アルゾートは何も言えなくなった。 まさに、イザークの言う通りだ。本人の性格もあるが、彼は爆弾の構造を完全に把握した状態で手にしている。 一発勝負なのだ。失敗するわけにはいかない。 だからこそ、ここに来た。 いや、もっと崇高な理由がある。 憎いコーディネーターを相討ち状態で討ち取る――それだけ強い意志を示せば、この島も、そう簡単にコーディネーターを受け入れるわけにはいかなくなるだろう……それが、アルゾート達が爆弾を設置したホテルに留まり、あまつさえ、設置された部屋に乗り込んだ最大の理由。 それに、この場に居れば、彼女達は部屋から出られない。万が一不発に終わった時でも、確実に対処できる――はずだったのに。 揺れる自分がいる。 本当にこれで良いのか? と疑問に思う自分がいる。 一度は気持ちの整理をつけ、自分の正しさを確認したのに。 いや、だが、 「……例え知っていても、貴様らには絶対言わない」 ここで自分を見失っては駄目だ。 自分は正しいことをしているのだから。 絶対、自分を曲げない――そう、意思を固めた時だった。 「もうやめてくれ、アルー……」 擦れた声が部屋に響く。 それはカガリの声だった。 涙を堪えながら、彼女は必死に訴える。 「父親や妹を犠牲にしてまで、手に入れなくちゃならないものって、なんだ?」 瞳一面にアルゾートを映し、カガリは続ける。 「失ってからじゃ、遅いんだぞ……」 それは、父を失ったカガリだから言える言葉。 しかしそれは、アルゾートも同じこと。 「分かってるさ」 彼も、同じ痛みを知っている。 「母さんが死んだ時、嫌ってほど思い知らされた」 「なら、もうやめろ。これ以上、悲しみを増やすな」 キッと強く彼を睨みつけ、カガリは叫ぶ。 「お前は一体、何を守りたいんだよ!」 魂の込められた訴えに、アルゾートは――何も言えなかった。 |