最後の爆弾






「なんでサイがここに……??」
「愚問ね」

素直に驚くキラを、シホはばっさり切り捨てた。

「隊長が突然姿を消して、てっきりディアッカに浚われたと思ったら、ディアッカだけじゃなく、アスラン・ザラまで消えていた。となると、キラ・ヤマトも関わってるんじゃないかって考えて、導師の家に行ってみれば、導師もラクス・クラインも居ない状態。そんな所に、都合よくキラ・ヤマトの友人が現れたら、首根っこひっ捕まえて、出かけ先に案内させるのが世の道理!!」
「そんな道理は無えっ!!」

畳み掛けるシホに圧倒されるキラに代わり、ディアッカが正しいツッコミを入れる。

「サイだって、知らなかったかもしれねーだろ!」
「本当に甘いわね、ディアッカ。居場所なら、留守番していたキラ・ヤマトのお母様から、さっさと聞き出してるわよ」
「なら一人で来いっ!」
「まあまあ、二人とも、落ち着いて……」

その時、話題の中心人物・サイが、自ら二人をなだめ様と試みた。
――人質同伴なので、大して動くことも出来ないが。

「俺は……まあ、驚かされっぱなしだったけど、迷惑ってわけでもないし……」
「甘い! 人が良すぎるぞ、サイ!」
「……あ、あの……」

ディアッカが叫んだ後、恐る恐る声を発したのは――キラ。

「……まさかとは思いますけど、母に……乱暴なこととか……」
「しないわよ。あなた、私を誰だと思ってるの?」



――シホ・ハーネンフースだから怖いんです――



イザーク以外の誰もが、心の中で呻いてしまった。

一方で、アルゾートとグラムハ、そしてカガリは目を丸くしていた。
サイと一緒にいる女性・ネサラの姿に。

「なんで、ネサラが……まさか、お前も……?」
「カガリ様……まさか、貴女まで来ていたとは……」

残念そうな声。
しかし、その瞳は苛烈を極めた。
憎悪の紛糾が、そこにはある。

「兄さん、爆弾の在処を言う必要は無いわ。私も、みんなも、死ぬ覚悟は出来てるんだから」
「……兄さん?」

ネサラの言葉に、ディアッカが眉をつり上げる。

「……こいつら、兄妹か?」
「ああ。二人とも、正真正銘私の子供だ」

冷や汗を流すグラムハの顔が、一層引きつった。
苦しさ、そして悔しさ。色々な感情が見て取れる。

「どうするの? 教えるの? 教えないの? あんたが教えないと、父親も妹も、この世から消えるかもしれないわよ? あんたを慕って集まった仲間も、みんな」
「…………」
「それで、何か変わるの?」

シホの言葉は、明らかにアルゾートを動揺させていた。

何が変わる、と訊かれて。
明確な答えを示せない自分がいる。

それほどまでに、不安定な行動なのだ。



「……悪しきコーディネーターを滅ぼすため、身を犠牲にして戦った勇士」



声は、サイの方から。
それは、サイが動きを封じる、ネサラが放った言葉だった。



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