力の誇示






どんっ!


轟音が鳴り響いた瞬間、彼女はホテルの裏庭に回りこんだ。

「なんですか?! 今の音――」
「その耳で、よく一時でも軍人やってられたわね!」

後ろから追いかけてくる少年に野次を飛ばしながら、一際激しい輝きを放つ空を見上げる少女。
その視線の先には、キラキラと光る幾つもの破片が、ゆっくり落下していく様が広がっている。

「あれは……」
「下がって。近付きすぎると、怪我するわよ?」

興味本位に近付こうとする少年を牽制し、少女はそびえ建つホテルを凝視する。


ホテル・レテトニア。
今ここで、一体何が起きているのか――考えている間に、事態はどんどん悪い方へと進んでいく。



ごうんっ!!



「?!」

音と、まるで地響きが起きたような感覚が二人を襲う。

「今のって――」
「――どーなってるのよ、このホテルはあああっ!!」

少女は、完全に理性を失っていた。
理性を失って――人垣に突っ込んでいく。

「あ、駄目ですよ! そっちは――」
「ちょっとあんたぁ!!」

少年の制止もきかず、人の群れに飛び込むと、少女はある人物の服を掴みあげた。
制服を纏った、たくさんの人間がごった返す中にいる、囚われの女性の胸倉を。

「君、いきなり――」
「外野は引っ込んでて!!」

実際、止めに入った男性は、制服軍団の中でも重役ポストで、外野でもなんでもないのだが――十代後半の少女の気迫に、男性は簡単に負けてしまった。
ホテルの周りは、今、警官隊でひしめいている。
中も。
ロビーでは、反政府組織[レテスの涙]と警官隊が激突中だ。


そこに――今の爆発音。


「言いなさい! あんた達、一体何企んでるの?!」
「別に? 何も企んじゃいないわよ」
「――んですってえええ?! 捕虜の分際で――」
「まて、落ち着け!」

噛み付く勢いの少女を前に、一度は気迫負けした警官も、さすがに黙っていることが出来ず、二人の間に割って入った。

「何よ、ここまで馬鹿にされて、黙ってろっての?!」
「しかし――……そう、下手な扱いも出来ないんだよ。特に、彼女は」

言って警官は、捕虜の女性を見る。
ふてくされた表情の捕虜を。

「……あんた、ネサラとか呼ばれてたわよね」
「それが?」
「では、捕虜・ネサラに尋問します。内部での騒動について、極力簡潔に、かつ要点をまとめ、説明しなさい」


少女の空気が変わる。
それまでの、ただ勢いに任せて突っ走る姿から。
威圧漂う[軍人]の姿に。


「さあ。知ってること、全て話してもらうわよ?」


[尋問]をすること事態、初めてとは思えない態度。
そこには、百戦錬磨の笑みがあった。




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