カガリをめぐってアスランとシンがチェス対決


「チェックメイト」
「〜〜もう一回!」
「一体何度目だ? シン」

呆れながら、アスランは盤上に転がるチェスの駒を片付けた。





赤の騎士VS運命の剣






「次は本気でやってやる!」
「その台詞は五回目だな」

チェスで戦うアスランとシンの勝敗は、今のところアスランの六戦全勝である。

「次は、本気の本気だ!」
「次も勝てば、俺は一週間連続で、カガリを独占できるって事だな?」
「させるかよ!」

にやっと笑うアスランと、額に血管を浮き出させるシン。二人の攻防戦は、朝から続いていた。
カガリ一日独占権――つまり、どれだけカガリに引っ付こうが、ベタベタしようが、やりたい放題――そんな権利を賭けての大勝負である。

勝負を言い出したのは、アスラン。
乗ったのは、シン。
巻き込まれてるのは――キラ。

「……二人とも、まだやるの……?」

チェス盤の横に着くキラの声に、やる気は無い。

「カガリを賭けての勝負だからな。売られれば買うさ」
「今度こそ、絶対勝ってやる!!」

キラは――簡単に言えば立会人だ。朝早く起こされ……かれこれ二時間ほど、この勝負に付き合わされている。
最初は何とも思ってなかったキラだったが、さすがにこれだけ長い時間拘束されてると……飽きてくるというもので。


<たいくつー……>


――と言うか、完全に飽きていた。


<頑張るなー、二人とも……本当にカガリを独占できるわけ無いのに……>


この勝負、もちろんカガリの知る所ではない。そしてここからが大事なのだが――カガリは、ベタベタされるのが嫌いだ。暑苦しいのは論外である。
キラには見えていた。この『独占権』とやらを行使して、足蹴にされるアスランの姿が。

二人が賭けているのは、どちらかと言うと、『カガリ独占権』より『カガリに言い寄ってるのを邪魔されない権』の方が正しいかもしれない。

と、その時、三人のいる部屋の扉が開いた。

「お、キラ発見――って、お前ら、こんな所で何やってるんだ?」

姿を見せたのは、この官邸を統べる主、二人の勝負の景品・カガリその人。

「チェスか。どっちが勝ってるんだ?」
「俺の六戦全勝」
「さっすがアスラン、強いな〜」

さりげなく戦績も伝え、アスランは少し、株を上げる。

「シン、負けっぱかよ。もうちょっと頑張れ!」
「次は勝ちますよ」

カガリに発破をかけられ、シンの瞳に、これまでに無い闘志が灯る。




*前次#
戻る0

EXTRA 全頁数
- 2 /15-