ミリィさんに恋するイザさん一丁


恋が写る日






「貴様、この頃よく来るな」

イザークは、不思議そうに声をかけた。
当たり前のようにやって来ている、ミリアリアに。

「そりゃ、広報から許可もらってるもの。気の澄むまで取材して行って良いって言われたら、気の済むまで取材したいじゃない?」

問いかけるように言い、ファインダーを覗く。そこには、困った顔のイザークが居て。

「ねえ、あなた隊長なんでしょ? もっと堂々としたら?」
「堂々としている!!」

ミリアリアは顔をしかめる。
彼女の目に映るのは、威圧漂う隊長――ではなく、挙動不審な、白い軍服の男……

「……どこが?」
「仕方ないだろう。こ、こういうのは、慣れてない……」
「こーゆーの?」
「〜〜しゅ、取材だ取材!!」
「まさか、緊張してるとか?」
「〜〜〜〜っ!!」

イザークは顔を真っ赤にして、声にならない奇声を上げた。
図星らしい。
なんとも間抜けなイザークの顔に、ミリアリアは堪えることが出来ず、吹き出してしまった。

「笑うなっ!!」
「だって、可愛い……」
「なんだとぉっ?!」

馬鹿にされてると思ったのだろう。イザークは声を荒げ――


カシャンッ。


同時に、彼女はシャッターを切った。

「貴様、いきなり何を――」
「大丈夫。取材用じゃないから。これはあくまで、個人のコレクション用」

それもまた、嫌な響きだ。

「貴様、ふざけるのもいい加減にしろ!」
「ふざけてなんか、ないわ」

カメラを下ろし、ミリアリアは言う。

「同じ事をしようとしても、同じものは出来ないの」
「いきなり何だ! 訳の分からないことを……」

すると彼女は、神妙な眼差しを作り、言葉を紡いだ。

「怒ってるイザークさんも、次に怒るときは、別の怒ったイザークさんになる。だから……その時その時の、二度と訪れない時を写真におさめたい。その一瞬しかない事実を伝えるために、私はカメラマンをやってるの」
「……俺は、貴様のポリシーを聞きたいと思ったわけではないんだが……」

なぜこんな、深い話に発展してしまってるのか……分からず、イザークはひたすら嘆く。
写真を撮られたことに対して、文句を言っただけなのに。
方やミリアリアは、再びシャッターを切りながら言う。

「つまり、色んなイザークさんの姿を撮っておきたいって事」
「答えになってないな」

言い、彼は大きなため息をついた。

「私としては、ちゃんと答えたつもりなんだけど……もしかして、写真嫌いとか?」
「嫌いだな」

あっさり認めるイザーク。

「写真は……正しい姿しか写さないだろう?」
「隠し事が出来ない?」
「ああ」

ゆっくりカメラを見る。
レンズを見る。
その先のミリアリアを。

少し困惑して。
少し……彼女と瞳を合わせて。


カシャン。


静かに流れる時の中、ミリアリアは、恋する一人の青年の姿を写した。





-end-


結びに一言
何となくイザミリ(爆)
ミリィさんに恋するイザさんを。

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