シンとステラ。ある街で偶然の再会 ガラスのココロ 『あ』 とある街中で、二人は再会した。 偶然――本当に偶然、道の真ん中で遭遇したシンとステラは、あまりの偶然っぷりに、声も出ない。 ただただ、お互いを見やるだけ。 数秒も経てば、お互い硬直も解かれ、特にシンはお喋りの一つもしたいと思っているのだが、何を話すか――どんな素敵話題を振ろうか考えるうちに、思考がまとまらなくなり、頭の中がおかしくなってきている。 ぐるぐる。 ぐるぐる。 なんだか……目が回りそうだ。 方やステラは、そんなシンを前に、首を傾げていた。 「シン? どうしたの??」 彼女には、なぜシンが頭をふらつかせているのか分からない。しかも考えすぎてるシンに、ステラの声は届いておらず…… 〈シン……いそがしいのかな〉 挙句ステラは、シンの態度を間違った方に捉え始めた。 〈シンと、すこしでいいから、あそびたいな……〉 そんな事を考えている時、前方から、大型トラックが姿を現した。 二人は歩道の真ん中にいたのだが……この時、いくつもの『小さな不運』が重なってしまった。 一つ。走ってきたのが大型トラックだったこと。 一つ。つい十数分前まで、雨が激しく降っていたこと。 一つ。車道に、大きな水溜りが出来上がっていたこと。 ばしゃんっ。 雨が降る。 泥の雨が、ステラ目掛けて。 その瞬間、シンはハッと我に返った。 「ステラ! 大丈夫か?!」 「……うん……」 避けることなく、ただじっと泥水を受けたため、ステラはずぶ濡れ状態だ。 「とにかく服……あ、その前に、身体拭かないと……」 慌てるシンを他所に、ステラは静かに、周りに視線を走らせた。 そして、一軒の建物を目に留める。 「……シン、あそこ……」 「??」 促され、目を向けた先にあったのは――とても豪華な銭湯だった。 「シン! これ!!」 一風呂浴びて、大浴場からロビーへと出てきたステラは、可愛らしい浴衣姿だった。 「すごく似合ってるよ、ステラ。でも、もうちょっと静かに……」 「どーして?」 「たくさん人が居るんだから、走ってぶつかったりしたら、ステラが怪我するかもしれないし、ぶつかった人が怪我するかもしれない。それに、店長さんにも迷惑かかるかもしれないから」 「わかった」 納得したのか、ステラは頷いた。 同じく大浴場に浸かってきたシンは私服なのに、ステラは未だ浴衣……そこには、店主の好意があった。 泥まみれで来店したステラに驚いた店主が、服を洗ってくれたのである。で、乾くまでステラは浴衣――というわけである。 「しっかり温まってきたか?」 「うん!」 元気に頷くステラを見て、シンも微笑ましく笑みを浮かべて…… 「……よかった、みずかぶって」 「え?」 ステラの突然の告白に、シンは目を丸くした。 水、かぶって?? ……わざとかぶった?? 驚くシンを横目に、ステラは申し訳無さそうに続けた。 「あのね、みずかぶったら、シンがいっしょにいてくれるとおもったの……」 しゅん、と背中を丸めて。 「シン、こまったかお、してたから……」 「そんなこと……! 困ってなんかないよ。折角ステラと会ったんだから、どこかで遊びたいなって……どこ行こうかなって考えてたんだ」 「ほんと?!」 瞬間、ステラの顔がぱあっと明るくなった。 困っていたわけではない。 邪険に扱おうとしていたわけでもない。 自分と遊びに行く場所を考えていた―― 「ほんとに、いっしょにいてくれるの?!」 「ああ。今日は一日中遊ぼっか」 「うん!」 そしてステラは、シンに飛びついた。 -end- 結びに一言 ほのぼの〜にシンステで。ほのぼのする二人が好きです(*^^*) |