シンの言葉は、カガリに深い衝撃を与えた


いつまでも






「俺、もうここには来ないから」
「は?」

シンの言葉に、カガリは顔をしかめた。
ばさばさと、手にする書類が落ちていく。

「あ、何やってんだよ!」
「それはお前だ!」

書類を拾うシンを見下ろしながら、カガリは叫んだ。
瞳に涙が溜まる。それだけ、ショックだったのだ。


ここに、もう来ない――と言われたことが。


「なんで、そんなこと……どれだけ私が、お前を――」
「え? あ、おい、ちょ……」
「分かってないだろ! 私がどれだけ、お前を必要としているかなんて! お前が居てくれないと、落ち着かないんだ! 寂しいんだ!! だから……だから、そんなこと言わないでくれ!」
「う、え……え?」

突然始まるカガリの告白劇に、シンの顔は、どんどん赤くなっていく。

「誰かに、もう来るなって言われたのか? なあ、キサカか?! それとも――」
「――たんまっ!!」

シンは叫び、カガリの両肩を掴んだ。
びっくりして、彼女は固まって――……

そして、言う。

「………………うそ」
「…………は?」

予期せぬ言葉すぎたのか、カガリがシンの「嘘」という単語に反応するまで、三秒ほど時間がかかった。

「だからさ……あんた、いっつも俺のこと、こう……変に年下に見るって言うか……よく邪険に扱ってくれるじゃん? 手伝おうとしたら、お前には無理だ――とか言ったりしてさ。だからちょっと、意地悪って言うか……」
「……いじ……って、おま――うわああっ!!」

衝撃的事実を突きつけられ、今度はカガリが叫んでしまった。
恥ずかしすぎて。

嘘に引っかかった自分。
言わなくて良い、自分の中に芽吹く思いを、赤裸々に語ってしまったことが。

「卑怯だぞ、シン!!」
「俺だって、まさかここまで引っかかってくれるなんて思わなかったし……あんた、素直すぎ」
「〜〜素直のどこが悪いっ!!」
「悪いなんて言ってねーじゃん! その――……そんなトコも、かなり好きだし」
「……お前って……時々、すごく大胆だよな」

普段なら、好きなんて言葉、絶対口にしないのに。

「……なあ、シン」
「なに?」
「お前……ずっと、居るんだよな?」

急に、カガリの顔は不安で埋め尽くされた。
今回は嘘だったが、もし……もし本当に、シンが自分から離れていくことがあったら……

その時自分は、一体どうなってしまうのか。


不安で不安で、どうしようもなくなる。


「私の傍に、居てくれるんだよな……?」
「居るよ」

シンはカガリの頬に手を伸ばすと、彼女の不安を吹き飛ばすよう、きっぱりと言い切った。


「離れろって言われても、ずっと傍に居てやるからな」


……いつまでも、いつまでも。
ずっと君の、傍に居るから……





-end-


結びに一言
シン、ちょっとカガリを苛めてみるの図(笑)

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