なぜ我が家のシホはいつでもテンションMAXなのか


ジュール隊長とハーネンフースさん






その時イザークは、ブリッジに向かっていた。
途中、同じくブリッジに向かうシホと遭遇し、二人は並んで通路を歩きながら――ふと、イザークは切り出す。

「ところでシホ。お前、そのディアッカへの衝突ぐせ、どうにかならないのか?」
「私に言われても困りますっ。突っかかっきてるの、向こうなんですから」

乙女モード全開で、シホはイザークに言葉を返した。刺の全く無いほほ笑みに、イザークは少々たじろいでしまう。

ちなみに衝突ぐせとは、シホがディアッカを前にした時に、九割の確率で発動する戦闘モードを差している。

「私はただ、軽くあしらってるだけです」
「軽く、か……あれは、軽くあしらっているレベルなのか……」

イザークの背筋に、寒いものが走る。
顔を合わせれば、口喧嘩は当たり前。エスカレートすれば、周りの人間を凍り付かせる様な冷気を充満させるし、飛び蹴なんて可愛いもの。笑顔で三角定規を投げ飛ばしたり、コンソールを拳で破壊したり、恋人のメールをまとめて処分したり……あれは彼女の中では、軽くあしらている部類に入ってしまうのか。

なら、本気であしらったら、一体どうなるのだろう。

……考えただけで、身震いが起こる。
そんな悪寒と戦うイザークに、シホは目を輝かせた。

「もしかして隊長……私の心配して下さってるんですか?!」
「いや、お前の心配というか――」
「――まさか、ディアッカの心配なんて言いだしませんよね?」
「……隊の心配だ、隊の」

鬼の形相になるシホに、イザークはすかさずフォローを入れた。
彼とて分かっている。怒り狂ったシホの姿の恐ろしさは……視界の端で、よく見かけているのだから。



「ディアッカにも聞いたが、貴様が絡んでくるから仕方なく――」
「ひどぉいっ! 隊長ってば、ディアッカの肩を持つんですね?! こんな可愛い部下よりも、あんなバカでゴツくてむさ苦しい男を取るんですね?!」
「いや、そういう訳じゃなくて……」
「あの男がガン飛ばさなきゃ、私だっておとなしくしてます!」
「……そうか……」

疲れ、イザークは頭を抱えた。
なんだか、もうこの話題と関わりたくない。

「どうしました?」
「いや、ディアッカも厄介なのに目をつけられたな、と思ってな」

こんなことを言えばシホが反論するのは目に見えているが、それでも言わずにはいられなかった。


――シホに絡まれて困ってる――


彼はディアッカの相談を受け、わざわざこんな話を切り出したのだ。


するだけ無駄と分かっていながら。


呻かれたシホは――もちろん、ムッとした顔になっていて。

「心外です、隊長。私、ディアッカに目なんか付けてませんって」

シホは叫んだ。


「私が目を付けているのは、隊長です!!」
「……何?」


とっさに顔をしかめるイザークに、彼女は笑顔を振りまいた。

「あんな男なんか、論外です! 私の目当ては隊長なんですから!!」


まくしたてるシホ。
眩暈を覚えるイザーク。
そして彼女は、止めを刺した。


「だから隊長、覚悟していて下さいね」


言うだけ言ったシホは、上機嫌で廊下を駆けていく。
一人取り残されたイザークは、不安げに呟いた。


「……今度は俺が、絡まれてるのか……??」


シホの言葉の意味を、全く理解できないイザークだった。




-end-


結びに一言
タイトル、異常に気にいってます(爆)
シホの気持ちにまっっったく気付かない鈍感イザさんに拍手。

*前次#
戻る0