アウルとルナは別々の学校に通ってる設定です


恋人未満






「完成っ」

ぱんっ、と手を叩き、ルナマリアはご満悦気味に声を上げた。
目の前には二つの弁当箱がある。両方ともルナマリアが作ったものだ。
朝四時から起きて仕上げた気合の一作。

「あいつ、どんな反応するかな〜」

頭に思い描いたのは、バスケの練習に勤しむアウルの姿だ。
O.M.N.I学園に通うアウルは、晴れて今日行なわれるバスケの試合に、選手としてエントリーされた。その応援に行くのに、ルナマリアは二人分のお弁当を作ったのである。
通う学校は違うし、順当に進めば、アウルはルナマリアの通うZ.A.F.T学園と当たることになるのだが――



「あーあ。誰か弁当でも作ってきてくれねーかなー」



昨日からアウルの両親は夫婦水入らずで旅行に行っていると言う。なら仕方ない、とルナマリアがアウルの弁当も持っていく手筈になったのだ。
彼は驚いていたが、「じゃ、よろしく」となんとも軽い感じで言ってのけたのだから、ルナマリアにも「凄い弁当作って驚かせる」なんて闘志が沸いてしまい、結果として四時起床で作る羽目になって。
何と作り終え、弁当を包む頃には七時を回っていた。
そこでようやく、メイリンがリビングに姿を現した。

「おはよー……」
「おはよ、メイリン。随分ゆっくりね」
「お姉ちゃんが早いんだよ……」

眠い目をこすりながらやって来たメイリンもまた、バスケの試合を応援しに行く人間である。
試合は九時から始まるのに、この時間に起きて大丈夫なのかとルナマリアは思った。
ただでさえ、いつも出支度に時間がかかるメイリンが。

「……お弁当……?」

とろんとしたメイリンの目が、用意された弁当を発見する。
彼女はワンテンポ置いて、ルナマリアに質問を飛ばした。

「……朝ご飯は?」
「ぅあッ!!」

朝ご飯。
その単語を耳にした瞬間、ルナマリアの背後に稲妻が降り注いだ。
忘れていた。お弁当作りに夢中になって、朝ご飯のことをすっかり忘れていた。
朝、何を食べよう――料理のレパートリーがあまりなく、すでに弁当だけで「やり切った感」のあるルナマリアは、ただおろおろするだけで……
そんな姉を前に、はあ、とため息をつき、妹は提案する。

「とりあえず、お姉ちゃんはコーヒー係ね」

結局その日の朝ご飯は、ベーコンエッグとトーストで落ち着いた。




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