ファントムペインは兄弟設定でお願いします


「ルナの鈍感!!」
「アウルの薄情者!!」
『ふんっ!!』

同時に叫んだ二人は、同時に勢いよく顔を背けた。





例えるなら独占欲






事の起こりは三十分前までさかのぼる。

「よっ、ルナ」
「アウル、どうしたの?」
「これこれ。観たいって言ってただろ?」

突然ホーク家の門を叩いたアウルの手には、一本のビデオテープが握られていた。
手にとって、タイトルを確認して……途端、ルナマリアの顔は綻んでいく。

「ありがとう! レンタルしようか迷ってたんだー」
「いや、俺も持ってたしさ」

満面の笑みで「ありがとう」と言われ、つられたのか、アウルの顔にも笑みが広がり……ふと、アウルは話題を変えた。

「ところで……買い物?」
「うん。お昼ごはんの食料調達。オムライス作ろうと思ったら、卵切れちゃっててさ。メイリンが作る担当で、私が買い物担当」

アウルを出迎えたルナマリアは、ジャケットを羽織り鞄をかけ、靴すらも履いた状態だった。まさに、出かける直前。

「俺も一緒に行って良い?」
「良いけど……まさか、お昼家で食べたいとかいう口?」
「おっそろしいことに、ステラが昼飯作り頑張ってんだよ。俺、まだ死にたくないから」

きっぱり言い切るアウルの額には、軽い青筋が立っていて。
……本気で怯えているのが分かる。
確かに一度、ルナマリアもステラの作ったご飯を一口だけ食べさせてもらったことがあるが、あれはまさに「罰ゲーム」の次元と言えよう。

「……でも、あんた逃げてきて平気なの?」
「大丈夫。スティングがきっと完食する」
「……ご愁傷様」

それは、スティングに向けての言葉だ。ステラを溺愛する長男・スティングは、どんなにまずい料理を食べても「美味しい」と言い切り、全身を青くしながらも全て食べ――そして病院送りにされたことは、ルナマリアの記憶にもすこぶる新しいものだ。

「てなわけだからさ、メイリン! 俺の分もよろしく〜」
「ちょっと! 何勝手に――」
「良いじゃない、お姉ちゃん」

アウルの言葉に、リビングからエプロン姿のメイリンが顔を出す。

「二人分も三人分も同じだって。その代わり、早く帰ってきてよ?」
「ほら、メイリンもああ言ってることだし、さっさと買って帰ってこようぜ」
「ああ、もう、引っ張らないでよ!」

こうして、二人は卵を求め、買い物に出たのだった。




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