最後の一文字は「ホ」??


「なぁ、ルナ。言葉当てゲームしねえ?」
「こと……なぁに? それ」

あまり聞き慣れない名称に、ルナマリアは首を傾げた。
するとアウルは、にへっと笑って、

「んとねー、背中に字を書いて、それを当てるゲーム」
「……アウルって、時々地味な遊びやりたがるわよね」
「なに〜? これは、長いなが〜い歴史のある、由緒正しいゲームなんだぞ〜?」

目を細めるルナマリアに、アウルは猛反論する。

「良〜い〜じゃ〜ん。地味だけど、結構楽しいんだぜ〜?」
「そんな拗ねなくても……やらないなんて言ってないじゃない」
「そ〜こなくっちゃ!」

了承した途端、身体全体を使う勢いで喜び始めるアウル。そんな姿を横目に、ルナマリアは悟った。


〈何か企んでるな、絶対……〉


もちろん、ルナマリアの読みは当たることになる。





コトノハを紡いで






「んじゃ、俺からね〜」
「はいはい」

アウルに背を向け、ルナマリアは腰を下ろした。
一体何を書かれるのか……少しドキドキして、思わず胸を押さえてしまう。

「第一も〜ん、これな〜んだ」
「わっ、アウル! くすぐったい!!」
「ほ〜らほ〜ら、早く答えないと、時間切れになっちゃうぞ〜?」
「そんなこと言われても……あはっ、やだっ、アウル、お願いだから、もっと、ふつーに書いてっ……」
「普通に書いてるじゃん」
「書いてなっ、あははっ」

アウルの指は、動けば動くほどくすぐったくて……ルナマリアは、笑いが止まらなくなってしまう。

「ほらほら。あと、ごー、よーん、さーん……」
「はは……待って待って……えーっと……あ、分かった! リンゴだ、リンゴ!!」
「正解〜。じゃ、次はルナの番ね」


今度はアウルが、ルナマリアに背を向けた。
彼女もまた、意気込み、アウルの背中に指を置いて。


少し思案。


「……ルナ、まだ?」
「ちょっと待ってよ……何も考えてなかったから……」

元はと言えば、アウルが持ち出した遊びである。いざ書こうとしても、良い言葉が浮かばず……
結局彼女は、アウルが『リンゴ』と書いたので、果物シリーズで攻めることにした。

「ああ、みかんね」
「えええっ? アウル、くすぐったくないの?!」

さっき笑わされた仕返しとばかりに、くすぐる様になぞったにも関わらず、アウルは平然としている。
というか――

「むしろ気持ち良い感じ?」
「な――……つ、次! 次はアウルの番っ!!」

話題を変えるよう、ルナマリアは座り込んだ。

「今度は難問だぞ〜?」

ペロリと舌を出し、アウルは背中に指を置いた。
ゆっくり動かす彼の指は……先程とは違い、くすぐったさを全く生み出さない。


〈やっぱりさっきの、わざとね〜〉


彼への苛立ちは――程なく、驚きに変わった。
背中に書かれた文字に、息を呑む。

「え? え……アウル? それ、は……」
「どーだ。ルナには難問だろ」
「ずるいよ、それ……あ! もしかして、最初からこれが狙い――」
「――かどうかは置いといて。どお? 言っちゃう??」

両肩を力強く掴み、耳元でアウルは囁いた。
方やルナマリアは……おどおどと、口を開く。

「……言えなかったら?」
「ルナの負けで罰ゲーム」

声は、とても楽しそうだ。
アウル発案の罰ゲーム……考えただけで寒気がする。これは下手な意地など張らず、絶対に言ってしまった方が良い。


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