アウルからルナへの質問 鏡の中の真実 いつもと変わらない、何気ない日常。 アウルはソファーに座ってテレビを見て。 その隣に座るルナマリアは、眉間にしわを寄せて考え込んで。 いつもの日常。 だが、今日のアウルは、むっつり顔のルナマリアを「日常茶飯事」として処理できなかった。 つい聞いてしまう。 「ルナって、いっつも何か考え込んでる」 不機嫌そうに。 するとルナマリアもまた、不機嫌そうに言葉を返した。 「だって、問題山積みだもん。ボーっとなんかしてられないよ」 「山積みって……例えば?」 「ナチュラルとコーディネーターの問題とか」 「うわ、ルナってばスケールでかっ!」 ルナマリアの言葉に、アウルは過剰反応を示した。 大袈裟すぎる驚き方に、ルナマリアの機嫌は悪くなる。 「何よ、仕方ないじゃない。頭の痛い問題なんだから……」 「そーだけどさー、もっとあるじゃん。色々って」 言ってアウルは、ルナマリアに抱きついた。ソファーとルナマリアの間に身体を割り込ませ、無理矢理恋人座りを決め込み始める。 一瞬文句を言おうとも考えたが、邪険に振り解こうにもアウルがあきらめないのは目に見えているので、あえて抱きつかれたまま、彼女は口を尖らせた。 「そーゆーアウルは、悩み事なんて無いくせに」 「何その言い方。俺にだって、悩みくらいあるっつーの!」 「言ってみなさいよ」 挑発する態度のルナマリアに、アウルはきっぱり言い放つ。 「ルナの顔が見えない」 「なら、後に座らないでよ……」 「やだ。俺、この頭の感触が好きなの」 「あのね……」 アウルの主張に、言葉を失うルナマリア。 方やアウルは、彼女の頭に鼻を埋めながら、もう一つ呟きをもらした。 「それにルナ、俺と居ても、いっつも冷静だし」 「冷静って……」 ――アンタの突拍子も無い言動に、上手くついて行けないだけよ―― とっさに浮かんだ答えは、胸の内にしまっておく。 すると、彼は続けた。 「……俺ばっか、ドキドキしてるじゃん」 肩を掴む手に力を込め、アウルは言う。 「後から抱きしめるだけで、こっちは心臓バクバクもんなのに……ルナは全然、ふつーじゃん」 いつも飄々として。 いつもこっちのペースかき乱して。 普通なのはそっちじゃない――と言いたかったけど。 密着しているからこそ分かることがあった。 アウルが――アウルが、微かに震えている―― 冴えているようで、少し鈍感。一体彼女のどこを見て、普通だと言っているのか。 「……アウル。右、見てみて」 「右?」 向けば、あるのは大きな鏡。 ルナマリアを抱きしめる、自分の姿。 抱きしめられる少女の顔は、ふてくされた様に赤くて…… 「これ、普通?」 「……じゃねーな」 鏡の中にある現実の姿に、アウルは一層強く、ルナマリアを抱きすくめた。 -end- 結びに一言 鏡の前で、本心が暴かれる……てか、暴いてもらってる(笑) |