Clap
くらっぷ


今日もこの道を通って帰る。

住宅の塀に囲まれた、ごく普通の道だ。

そして、必ずとある家の塀を見てしまう。

そこの家の塀には、三毛猫が気持ち良さそうに、日なたぼっこをしているからだ。

それも、つい最近になって、毎日のことだ。

あまりにその三毛猫が気持ち良さそうにしているものだから、何だか見ているこっちまで気持ち良くなる気がする。

私も時間も気にせず、何も考えずにあんな風に眠ってしまいたい。

そう考えてしまうのは、毎日に疲れているのだろうか。

逃避、なのかもしれない。

それでも、そんな叶わないかもしれない事を考えながらも、毎日その三毛猫を見て、心が和らいでいる私がいる。


そして、また別の日。

今日もその三毛猫は、日なたぼっこをしていた。

少し足を止めて、私はその三毛猫を観察する。

あっ!欠伸した!

そんな些細な行動も、不思議と心が和んでいる。

その日は、三毛猫をもう暫く観察してから家に帰った。


毎日が忙しく過ぎていく。

時間に追われる日々で、私は三毛猫の観察をする余裕すらなくなった。

気付けば三毛猫を見なくなってから、一月が過ぎようとしていた。

久し振りに見てみよう。

そう思って、いつもの塀まで足早に向かう。

だけど、そこにはあの三毛猫はいなかった。

今日は曇っているし、どこかに行っているのだろうか。

次の日は雨だったので、その塀を気にせず帰ったが、それから毎日塀を見ても、三毛猫は日なたぼっこをしていなかった。

私は凄く不安な気持ちになるも、野良猫ならば、また別の場所に行ってしまったのかもしれない。

そう自分に言い聞かせて、忙しない毎日に戻ることにした。


それから、どれくらい経っただろう。

代わり映えのしない、いつもの帰路で、何気なくあの塀を見たときだ。

あっ!

あの三毛猫が、戻っていた。

それも一匹ではない。

小さな子猫が四匹も、あの三毛猫の周りで戯れ合っていた。

ここずっと見なかったのは、出産していたからなのかな。

母親となった三毛猫は、周りで子猫が戯れ合っていても、我関せずといった感じで、前と変わらずに日なたぼっこをしている。

そんな猫達の姿に、私の心も体も自然と緩んでいた。


「帰路の三毛猫」








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