それから私が体験した、血と死体と修行の経験の数々はここでは省略させて頂こう。精神的にも道徳的にも良くない内容ばかりだったって言うか私が喋りたくない。
……まぁ、敢えて言うなら裏切りあり別れありのハートフルボッコストーリーと言った所かな。第三次忍者大戦は本当にろくなもんじゃなかった。あれから八年がたったのは良いけれど、まだ自分がこうして生き残っているのが信じられないぐらいだ。ついぞ六年前は九尾も里に現れて、私んちと両親親戚その他もろもろをぶっ殺してったから何だかんだで天涯孤独になっちゃったし、割り当てられる任務はみんなきついのばっかだし、最近全く良いことがない。あ、でも上忍になったから給料は良くなったかな。キツイ仕事の代償だけどね。

「あーあ……」

妙にネガティブになった思考回路を持て余しながら、今日の晩御飯の材料と少々のお菓子が入ったビニール袋を左手にさげて、日が沈んでうす暗くなってきた道をてくてく歩く。少し前の電信柱の上についてた街灯がぱちちと音を立てて路上を明るく照らし出したのを見て、まだ少しはやいんじゃねぇかと心の中で呟いてさっそく光に釣られてやってきた馬鹿な虫を右手で叩き落とす。

「……」

それから電柱の先のT字路を左に曲がって、小さな公園の前を通り過ぎる。横目でちらりと見た公園の中は全く人気がなくて、最近の子供は皆いい子ちゃんなんだなぁと考えながら、私達の世代は公園なんかで友達とのほほん遊ぶ時間なんてなかったなぁと思い出して虚しい気分になった。

「……ブランコ、漕いでいこっかな」

どうせ帰っても一人で飯食うだけだし、童心に還ったつもりでちょっとここで遊んでいこう。どれだけうえに上がれるか試してみたいってのもある。
がさがさ左手で自己主張するビニール袋を入口のベンチに置いて、公園の端っこに設置してあるブランコの方へと向かう。

少しだけ吹いている風のせいで、不気味にぎぃぎぃ揺れているそれの鎖に手を伸ばそうとしたその時。どこからか小さな子供の泣き声が聞こえてきた。



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