04


涙には精神浄化作用があるって昔どこかで聞いたことがある。だから散々泣いて、幾らか気分もすっきりした。

「泣いてても、しょうがないもんね……」

目を擦り、ぐすぐす鼻を鳴らしながらも湿ったままの服を着直していざこの部屋を探索せんと立ち上がる。恐る恐るながらもう一度水の中に足を沈めたその時、私の後ろからかしゃりと何かが何かにぶつかったような金属音が聞こえた。

「え……」

怖っ。
今まで何もなかったはずなのにとゆっくり後ろを振り返ると、私が座っていた所の反対側に僅かに見える何か金属っぽい物体。警戒しながらも足を戻して、一体なんだと木の後ろを覗き込めばそこにあったのは一振りの剣と大きな盾だった。

「……なにこれ」

どこかで見たことがある形状の、柄から刀身まで漆黒に塗りつぶされているロングソードと、同じような意匠の盾。所々に深紅で描かれている模様がまるで血管のようで実に禍々しい。まるでどっかのRPGに出てくる、呪われた装備みたいだ。

「…………」

気味が悪いなと思いつつ、とりあえず枯れ木に立て掛けてあるその二つの装備を手に取ってみる。
そのとたんに耳に届いた不思議な音。網膜を貫く閃光。反射的に瞼を閉じ、次に目をあけた時。私は一寸先も見えないぐらいの真っ暗闇の中にいたのだった。


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