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それからもこれ食えやれ飲めでなんかいろんな物を貰った。久しぶりに声だしたからがさがさだったけど、それでもありがとうと言えば照れたようにわらってくれて。ひさしぶりにお腹いっぱい嬉しくてぽかぽかした気分で納屋に帰ったら通りかかった父親に腹パン喰らって中身吐き戻しそうになった。でも吐いたらバレるから必死に耐える。


「なに笑ってる」
「…………すみません」


あっちにいけと言われてよろよろとその場から離れる。じんじん痛む腹を抱えて、納屋の中で蹲る。胃がきりきりと痛んでいた。きっと今の俺は顔面蒼白、紙みたいな顔色してる。あー、大人より子供のほうが優しいわ。俺ってば昔は子供って残酷ねとか思ってたけどそうでもないのね。


「…………」


明日も会えるかなと思った。明日会えたら、もうちょっと、会話がしたい。名前教えて欲しい。名前呼んで欲しい。今の俺の名前、才蔵っていうの。ここ数年だれにも呼ばれてないけどね。



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