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それで、終わったはずだった。確かに俺と言う存在は終わりを告げた。だが気づけば俺は知らない女の腕に抱かれ、おぎゃあと泣き声をあげていた。


「忌み子だねぇ……」
「んだ、髪の色がおかしかよ」
「しめるか?」
「……こんなんでもおらの子だぁ、かんべんしてくれや」
「おらはいいが……兵吾がだまっちょらんぞ」
「どうにかなるべ」


ひそひそとそんなことを話す女の人達を気にせず、俺は泣き続けた。いや、泣き止もうとしても駄目だったんだ。ほぎゃあほぎゃあと泣きわめく俺の背中を女が優しく叩く。


「よう泣く子じゃの」
「んだな、元気な証拠だで」


ぐいと顔を近づけられて才蔵、と名前を呼ばれ抱きしめられる。少し苦しくてあう、と声を上げもがいたその手は、小さくてふにふに頼りなかった。



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