15分らいてぃんぐ、自分の限界が知れる。







いろんなものが焼け焦げた真っ黒な大地に一つころがる赤をみて、自分はどんな言葉を震える唇から吐いたのだったか。そんなことは忘れてしまった。ただ、ざぁと血の走る音が耳元できこえて、心の臓がばくばくと動きを速めていたことは覚えている。それに、心の臓を鉛の弾に貫かれた自分の主は、やけに安らかな顔をしていたのだということも。

「・・・・・・・・旦那」

帰らなきゃ、城に。大将の所に。
ぐらぐらと背中で揺れる頭が怖かった。血の匂いは気にしていない。戦場じゃそんなもの、鼻が麻痺してなんとも思わなくなる。自分の装束も返り血を浴びてびしょびしょに濡れまくって、ずしりと重くなっているのだから。だから背中をぐっしょりと濡らし、香るそれは全く気にならなかった。ただ、その体がやけに冷たくて、異常なほどに重いことだけがどうしても。

「あ・・・・・」

主を背中に背負って、よろめきながら地を踏む自分の目に、燃えるような空が映る。だらりと力なくたれさがった手が、胸の前でゆらゆらとゆれる。それを見て、抜けるような溜息がでた。脳裏に溢れ出る既視感、それに付随した記憶に足が震える。

「べんまるさま、」

背中の主が、重い。昔はこんなに重くなかったのに。彼の人はもっと軽かった。もっと軽くて、やわらかくって、そしてあったかかった。こんな、自分の暗器みたいな、そんな無機質な冷たさじゃなかった。

「ゆきむら、さま」

ほんと冗談きついぜ、と歪む声で話しかけても、背中の主はそれに決して答えない。もう二度と自分の軽口に答えることはない。一歩一歩と足を踏み出すたびに揺れと自重で首のあたりにごりごりと冷たい額が押しつけられて、それが生前の彼の甘え方と同じ様でなんだか無性に泣きたくなった。




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