おれしょ改訂版 | ナノ

 12

脱衣所に備え付けのドライヤーで髪の毛を素早く乾かし、ジャージに着替えて居間へ戻る。彼らはまだぐっすり寝ていた。ぺたぺた足音を立てながら台所に行って、冷蔵庫を開ける。牛乳をコップに一杯ついで一気飲みして、溜息とともに肩の力を抜いた。

「はー………」

流し台にかたりとコップを置く。水を注いで中の牛乳を洗い流しながら勉強しなきゃなーと考えるとどうも気が滅入った。やんなきゃいけないんだけどさ、なんて言うかやる気ないって言うか。違う部屋にいってやろうかなー、ここには暖房だけ付けていってさ。

「そうしよ……」

のろのろ幸村さんが突っ伏して寝てるテーブルの所に行って、そこに置いてあった勉強道具を小脇に抱える。その時幸村さんのむき出しの肩が僅かに震えたからもしかして寒いのかなと思って二階に毛布を取りに行くことにした。ぎっぎっと階段が嫌な音を立てるのを聞きながら二階へ登っていく。この家は随分古いらしいから、階段がちょっと危ないってあとで親に報告しておいた方がいいかもしれない。

「よいしょ」

適当な毛布を二枚もって下に降りていく。そっと居間の扉を開けて、ゆっくり毛布をかけても彼らは全く目を覚まさなかった。かなり疲れてるんだろう、俺の疲れなんて彼らに比べたらちっぽけなもんに違いない。

「………」

暖房をつけてから時計を見て、3時間も放置すればいいかと決めてから冷蔵庫から飲み物と食料を持って二階の部屋に戻る。スマホの電源をつけて友人に「戦国武将が我が家にやってきた」とメールを送ろうか送るまいかまよったが、どうせ信じてもらえないだろうと思ってやめた。どっからどう考えたって戯言としかおもえないだろうから。



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