「ここは……?」
「あらこんにちわー、お帰りはあちらの押し入れでーす」
「君は?」
「スルーですか。私は朱里と申します」
「僕はナチュラル・ハルモニア・グロピウス。気軽にNと呼んでくれ」
「凄い名前ですね。どこらへんにN要素が?」
「ナチュラル」
「成る程……そういえばNさんは、この生き物知ってますか?」
「ぴ?」
「……チルット?」
「チルットって言うんですか、この子迷い込んで来たんですけど中々帰ってくれなくて」
「そう……チルット、僕と帰らない?」
「ぎゅー……」
「ちょっとすずめさん。駄々捏ねないでください、この機会に帰らないといつ貴方と同じ世界から来た人に会えるかわからないんですよ」
「びぃー……」
「そんな、すずめさんったらなんてかわいいの!大丈夫ですよ、私はすずめさんのこと忘れたりしませんから」
「……君、ポケモンと喋れるの?」
「フィーリングですけど、言いたいことはわかりますよ。愛の力です!」
「ぴゃう!」
「……やはり、僕みたいに力が無くても、絆があれば通じ合えるものだね。僕はそう言った人々の事を考えてなかったんだ」
「…………動物愛護的な話ですか?」
「ぴ?」
「…………うん」
「あー。そういうのは、中々複雑ですよね。動物を苛める人がいるからペットを飼うのを禁止すると、大切に大事に可愛がってきた人の家族を引き離してしまうことになるし、かと言ってOKにすると苛める人が出てくるし……上手く言えないですけども」
「うん、僕は一部分しか見てきていなかったのさ」
「でも、しょうがないですよ。愛護関連はそういう話題なんです」
「……そんなものかな?」
「私はそうおもいます」
「そっか……ありがとう、僕はもう帰るよ」
「すずめさんを忘れずにお願いします」
「ぴぃ……」
「でも、そのチルット…すずめさんは君と離れたくないみたいだけど」
「ぎゅう!」
「いいえ、誰かにすずめさんを見られたら、お偉い人の所に連れて行かれてしまいます。すずめさんはこの世界では不思議な生き物なんです」
「せかい……?」
「貴方達が生きているところと私が生きているところは全然分布や技術が違うんです」
「……たとえば?」
「そうですね。たとえば、Nさんが腰につけている紅白の球体。それはこちらでは存在しない物です」
「これはモンスターボールと言うんだ。しょうがないから使っているけど、トモダチを閉じ込める箱なんだよ」
「ほう……友達とは?」
「すずめさんみたいな生き物の事さ。僕のトモダチなんだ」
「ふむ……すずめさんのような質量の物体がそのちっぽけなボールの中に入る……かんっぺきにオーバーテクノロジーです。こちらにはそんな技術はありません」
「なるほどね……じゃあ僕らは早く帰った方がいい。そういうことかい?」
「はい。さ、すずめさん。Nさんと一緒に行って下さい」
「……ぎゅ」
「いい子ですね。大丈夫、望めばまた会えますよ」
「ぴぃ!」
「それじゃあ……サヨナラ」
「あ、Nさん。帰り道は玄関じゃなくて押し入れのなかですから。私の話聞いてませんでしたね」
「…………しまらないね」
「…………びぃ」