「つーかそろそろ飯の時間なんで背後からどいてください」
「・・・・・・変なことしたらぶっ殺すからな」
「なんだそれ、一応聞いときますけど変な事ってなんですか?」
「俺様の背後を取ろうとしたり、毒をまこうとしたり攻撃しかけてきたりすること」
「ゴルゴかよ!随分デンジャラスな生活を送ってるんですね貴方」
「南蛮語はなすのやめてくんない。どこぞの尺取虫思い出しちゃうから」
「最近の尺取虫は南蛮語を話すんですか?」
「うん。うざったいの」
「へぇーすごいですね。こっちの尺取虫はただのそのそ動いてるだけですよ」
「まぁそうだろうねぇ」
「どんな世界なんだろう、気になる。あ、ご飯ご飯」
「世界…?うわすげえ腹の音。あんた本当に女?」
「しっつれいですねお兄さんは・・・人間が空腹に勝てるわけないでしょ。女だからって腹を鳴らさないとお思いですか?アイドルだってうんこはするんですよ」
「正論なんだけどなんか・・・俺様が知ってる女の子じゃないねあんた」
「家の中なんで、素です」
「俺様がいるのに?」
「いやだってあなたこの世界の人間じゃないですし、お帰りいただく方に気を使う必要はないでしょ」
「さっきから気になってたんだけど世界ってなに?」
「あ、把握してない感じですか。ここは貴方が住んでるところと文化とか全然ちがうんですよ」
「まぁ・・・へんなものが溢れてるなとは思ったし違うってのはわかるよ」
「はい、んで、あそこの押し入れから帰れるんです。証人もいますよ」
「へー、なんて名前の人?」
「えーと、前田慶治って人です」
「風来坊?」
「いやそういうのはよく知らないですけど、ちっちゃいお猿さんと一緒に鍋くって帰ってったと思ったら四日後にまたきた人間です。お兄さんと同じ世界の人でしたか、迷惑なんで来ないでって言っといて下さい」
「あー、うん。あいつには俺様も苦労してるんだよね、門こわすしただ飯食ってくし」
「私も初めて来られた時に椅子を壊されました。その分の金子ぶんどりましたけど」
「強いねあんた、初対面の人間から金取るとか初めて聞いた」
「だって私の椅子……お気にだったんです」
「ふーん。で、何作ってんの?」
「あ、卵入りしゃけ雑炊です。お兄さんも食べます?」
「鮭、卵、姫飯、真っ白な塩。あんた相当な金持ち?」
「前田さんと同じ事言うんですね。ここは違う世界なんだってこと、忘れないでくださいね。物価が違います」
「…………そっか」
「で、食べます?」
「うん、あんたが毒味してからちょっと頂く」
「毒味!?どんだけ信用ないんですか私!」
「いや信用とかそういうんじゃなくて、俺様のこれは職業病なの。悪いね」
「そうですか。ならしかたないですね。はいどうぞ、毒は入ってないです」
「…………ありがと。あ、これ美味しい。卵と鮭と塩だけの味じゃないね」
「お兄さん味覚いいですね。鰹節は偉大なんですよ」
「かつおぶし?」
「知りませんか?さっきいれてた木の削りカスみたいなやつです。持っていきますか?」
「それより塩が欲しいな」
「私の首に押し付けてた刃物くれたらいいですよ。すきなだけあげます」
「金子じゃなくていいの?」
「いえ、殺されかけた記念に」
「皮肉?」
「いいえ?記念ですって」
「…………まぁいいよ、塩にくらべりゃ安いもんだし」
「やったー!ありがとうございます!塩繋がりで砂糖もいりませんか?」
「砂糖!?」
「貴重なんですね、沢山持ってってくださいな。お土産として」
「うわー、これ一財産だよ。俺様の全財産の何倍あるか」
「私がお兄さんの世界に行ったら即金持ちですね」
「すぐに暗殺されそうだけどね。じゃあ俺様帰るわ。風来坊が帰れたってことは俺様もいけるはずだし」
「さよならー、前田さんにもう来んなってよろしくいっておいて下さいねー」
「……覚えてたらね。じゃあね」
「はーい。お兄さんももう来ないでくださいねー」
「最後に言うことがそれ!?」
「ええ、普通に迷惑ですから」
「……そだね」