2016/10/20 14:25

知らない天井だ、スバルが目を覚ましてまず思ったのはそんな感想だった。

「……見知らぬ天井だ」
「起きたのかい、スバル」
「うおっ、ラインハルト」 

ペンキを塗りたくったかのように白い天井を見てぼんやりしていると、友人の声とともにひょい、と視界に奇跡の顔面が現れた。寝起きにその輝く奇跡の面はきつい。思わず眩しさに目を背けて、そして目に入ってきた視界に首を傾げる。百歩譲ってラインハルトがいるのはいい、ロズワール邸に何か用事があったのかもしれない。しかしスバルが目覚めた場所が自分の部屋ではないというのはどうもおかしい話だ。

「なぁラインハルト、ここ、どこだ…?」
「期待に答えられなくてすまない。僕にもわからないんだ」

天井と同じようにペンキを塗りたくったような真っ白い空間に、ひとつだけ浮いているような茶色いドア(ラインハルトによると彼の力でも開かない)。それからスバルが寝ているベッド、友人のラインハルト。それだけがこの謎の部屋にあるものだった。

「脱出ゲームにしたってこんなひでえ作りは見たことねぇな」
「脱出げえむ?」
「俺の故郷にあった遊びの話だよ。部屋ん中にあるものだけを使って、閉じ込められた場所の中から脱出するんだ」
「なるほど。なかなか興味深い遊びだね」

ふむふむ、とスバルの説明に納得したように頷いて、ラインハルトは騎士服の内側をごそごそと漁った。取り出されたのはノートの切れ端のような小さな紙だ。

「僕が目覚めた時に、それが床に落ちてたんだ」
「………「セックスしないと出られない部屋」…はぁ?」
「スバルの言っていた遊びに例えると、僕らは性行為をしなければここから出られないね」
「いやちょっとホントまじかよ……」

ラインハルトが嘘を言っているんじゃないかと、ベッドの上から立ち上がってドアノブを回してみようとしたが、回すことすらできない。というかなんか次元が違う感じがする。これはラインハルトも手出しできないわ、と納得してスバルは起きた場所に戻った。キングサイズのベッドの寝心地は悪くないのが唯一の心の救いだ。

「……どうする?スバル」
「………どうもこうも、ガチで出られねぇならするしかない、けど・・・とりあえずそれは最終手段にしたい」
「うん、わかったよ」
「まずはベッドの解体から始めるぞ」出来れば友人とのセックスは避けたい。ラインハルトはあまり気にしなさそうだがスバルは気にする。だって童貞だもの。別にスバルが受けると決まったわけではないが、童貞のまま処女は無くしたくなかった。




「なんか、用意周到なのがむかつく」

ベッドを完全に解体したあとにスバル達が見つけたのは透明の液体が入った2つの小さな小瓶だった。一つにはローション、もう一つには媚薬とイ文字で書いてある。スバルへの謎の配慮だろうが、この場所ではとても不必要な気遣いだ。

「薬は、やめたほうがいいね。何が入っているかわからない」
「そうだな……」
「脱出げえむに例えたら、これを使わなくちゃ出れないんだろう?」
「せやな……」

バラバラになったベッドは小瓶を見つけたら何故か勝手に元に戻った。謎すぎる仕様が完全に「お前らがセックスしないと出れませんからね」と言っているのがわかる。冷や汗を垂らしながら友人の表情を伺うと、興味深げにローションの瓶をしげしげと見つめていたラインハルトはスバルの視線に気づいてにっこり笑った。
ああ、その笑顔が今は恐ろしい。

「ら、ラインハルトさんはやる気なんですか?」
「ここから脱出できるならば、構わないよ」
「左様で。……まぁ、そうだな。俺も早く戻らねぇとエミリアたんもベア子もレムも心配するだろうし」

男は度胸だ。やればできる。そうと決まったら役割分担、と話を持ちかけようとしたスバルに向かってラインハルトが手を上げた。

「はい、ラインハルトくん。どうぞ」
「えっと、僕が下でいいからね」
「え?なぜ」
「これはあまり言いふらさないで欲しいことなんだけど……」

恥じるように頬を染めたラインハルトにスバルはごくりと息を呑んだ。一体どんな爆弾発言カミングアウトがくるのか。全く想像がつかない。唯一想像出来る理由と言えば、実は男色でしかもネコ。

「僕、不能なんだ」
「……お、おう。そのなんだ、そのうちいいことあるよ」
「ありがとう、スバル」

思わず同情した。予想外に男としての理由が重かった。微笑んで気遣いの礼を言う友人の顔がどうにも直視できなかった。




しかし二人は男と男、さぁいざセックスしましょう、というわけには行かない。下準備として慣らさなくてはいけないわけだ。

「……痛くない?」
「うん、大丈夫だよスバル」

スバルの中指がぬくぬくと温かい肉に包まれている。現在は二人共裸になって、スバルがラインハルトの中にローションをたっぷりと塗りこんでいる最中だ。ラインハルトの肉体に傷がついても即微精霊たちが直してくれることは確かなのだが、専門の道具もあることだし少しでも傷をつける理由もない。

ラインハルトの表情を伺いながらじわじわ中を探っていく。時折きゅう、としまってスバルの指を締め付けるのがなんとも言えない気分になる。できるなら気持よくしたいのが男心というものだ。昔間違って腐ったエロ漫画を読んでしまった時になんとなく頭の中に入っていたままだった知識を童貞なりに制動員させて、ラインハルトの「イイ所」を探す。

「あ、…」
「………ここ?」
「ん、スバル。ちょっとまって、」

丁度腹の上、といえばいいのだろうか。そこを押した時にラインハルトが声を漏らした。ここか、と思って再度押すと綺麗な顔がぶわ、と赤くなった。鼻にかかった小さな喘ぎ声が不覚にも可愛い。

「は、んん」
「……指、増やしてもいい?」
「ぅ、うん、いいよ……」

少し息が荒くなってきた。そんなラインハルトを見るのは初めてだ。人差し指にローションをたっぷりとつけて、中に押し進めていく。表情を見る限りどうやら痛みはないようで、しかし異物感が強くなったらしいラインハルトが落ちつかなげに体を揺らした。

「……その、さっきのところは、あんまり押さないでくれないかな」
「え、痛かった?」
「ううん、痛くはないよ。でもなんか、変な感じだから」
「変な感じ」

と言われても……とスバルは視線を下に落とした。先ほどからラインハルトのラインハルトがラインハルトし始めている。不能と言っていたのは何だったんだろうか、と思いながら立ち上がり始めた性器に触れると目の前の身体がびくりと跳ねた。

「え、スバル…?」
「お前さ、いつから不能なの?」
「いつから?うーん、僕は人に比べてそういう欲求が少ないみたいで……昔から、かな」
「ああ、だからか…多分その変な感じって気持ちいいんだと思うんだけど」

どうかな?と言いながら完全体ではなくともかなりでかいそれをローションをつけて上下に擦ってみる。みるみるうちに育ち始めたそれをみて不能だこいつと言う奴はいないと思う。

「たってる……けど」
「はう、…」
「いや、はうってお前、はうってお前ね」

女の子か、と突っ込みながら取りあえず愛撫を続行する。鈴口からたら、と透明な液が流れ始めたということはスバルの手でもそこそこ気持ちいいということだ。ちら、と表情を伺うとびっくりしたように自分の性器を見つめていて、本当に今まではガチで不能だったんだな、と察する。

「あ、っあ、まって、スバル、スバルまって……」
「ここまで来て待ってどうするんだよ」
「あっ、あ、もう、は、ぁっ、」

びくびくと芸術のような肢体が跳ねる。中に入れたままの指にきゅうきゅう吸い付いてくる感触がやばい。普通にエロい。友人の痴態に持ち上がり始めた自分の性器を自覚しつつ、カリ首部分の裏側をいじめてやると甘い悲鳴が上がった。

「ここ好き?」
「や、わからな・・・」
「ここは?」
「っ、スバル、」

調子に乗って攻めているとがしっと手首をつかまれた。頬を紅潮させて息を荒げながらもこちらをしっかりと見つめてくる剣聖様の目はあんまり笑っていなかった。

「もう少し、お手柔らかに」
「あ、はい。すいません」

普通に怒られた。




「……それじゃ、いれますけど、……平気か?」
「ん、…いつでもいいよ、スバル」

なんだかんだで指は三本入った。三本入ればスバルのちんこもまぁ入るだろう、という話になったのでそれ以上は拡張せずにいざ本番である。正常位の姿勢になって、完全にとはいかないが勃起した性器を秘所にくっつけると、そこがすこし動いて誘うように先端を食まれたのに何とも言えない気持ちになる。

「……痛かったら言えよ。我慢すんなよ、ほんと我慢だけはしないでくれ」
「そんなに信用が無いかな?」
「なーんかなぁなぁで済ませられる気がすんだよな」

痛いの、我慢するタイプだろ、と指摘すると困ったような表情をされた。それが図星だからなのか、それとも言いがかりをつけられているからなのかはスバルにはわからない。しかし、微精霊がすぐに怪我を治してしまうとはいえ今回はおそらく、体を割り開かれる痛みがずっと続く。本来なら出口なそこを入り口として使用するのだ。想像だに恐ろしい。

「・・・遠慮なく言えよ。そしたらもーちょっとこう、慣らして再チャレンジだ」

そう告げて、ゆっくりと腰を進めていく。丁寧に慣らした御蔭か、潤滑油として非常に優秀な謎産ロ―ションの力も借りて、亀頭がぐぷと音を立ててどうにか飲み込まれた。うわっきつい、すげーきついけどまだ快感は拾えるぐらいの気持ちよさだった。でも、とラインハルトの表情を伺う。萎えてしまった性器もそうだが、辛いのだろう。微かに眉をひそめて荒い息をする姿を見ると申し訳ない気持ちになる。どこからどこまでがセックスとしてカウントされるのかはわからないが、全て挿入してゲームクリアならばスバルだってそうしたい。ここから射精に持ち込むのは・・・スバルは簡単だがラインハルトはつらいだろう。

「止めるか?」
「ううん・・・いい。すすめて、スバル」

目が会うと柔らかく微笑まれた。そういうのなら、とじりじり中に性器を埋めていく。ふ、だのん、だのたまにラインハルトが声を漏らすが、慣らしていた時の甘い響きはない。抱えている足が冷たいのが悲しい。さっきはもっと、熱かったのに。

「・・・・・っあー、ぜんぶ入ったー・・・っ」

スバルの下生えがラインハルトの肌に触れてじゃり、と微かな音を出した。もう二人とも汗だくだ。スバルは食いちぎられそうなほどぎゅうぎゅうこっちを絞めつけている穴のきつさに、ラインハルトはおそらく痛みからの冷や汗に。は、は、と二人分の荒い息だけが部屋の中に響く。どうにかこうにか先に呼吸を整えて、スバルは汗にまみれて額に張り付いたラインハルトの前髪を脇によけてやった。血の気の引いた頬が、それでもスバルの手に嬉しそうに笑みの形を作る。

「スバル、うごいて、いいから」
「いや、ダメでしょお前そんなことは俺が許しませんぜってーまだ動かないからな」
「でも・・・つらそうだ」
「そんな気遣いいらないから!そんなこと言ったらラインハルトのほうがつらいだろ。俺はまだ動きません。……せめて、お前の顔色がもうちょっとましになったら、そしたら動くよ」

痛みが紛れれば、そう思いながら頬に触れる。冷たい。スバルの手のひらは熱いのに、ラインハルトはどこもかしこも冷えきっている。少しでもこの熱が移れば、そうすれば少しはマシになると思うのに。

僅かに体をかがめて、首筋に頭をつける。どくどくと心臓の音が聞こえる。すこし早くなっている鼓動の音。ふぅ、とラインハルトが小さく息をついて、スバルの頭に頬を寄せた。すり、とより寄せられたその感触に目をつむる。そのまま二人で、ちょっとだけ無言のままそうしていた。





なにもしなければラインハルトはつらいままだ。初体験が痛みに塗りつぶされることほど嫌なものはないとスバルは思う。最悪ラインハルトのインポがますます悪くなってスバルはルグニカ政府に殺されるんじゃないだろうか。すでに傷ものにしている時点でそんな予感はしたが、今はそれは放っておいて、萎えたままの性器にそっと触れる。実践こそないがAVではなんどか見たことある。もちろんそれは女性に対しての扱い方の知識だ。しかし人間なのだから、そう違いはないだろう。

「・・・・ふ、」

ゆっくりと萎えたままのそこを擦りながら首筋に唇を落とす。太い血管が通っている部分に軽く歯を立てるとラインハルトの体がびくりと震えた。きつくなった締め付けに眉を寄せながらも、跡はつけないように、それでいてラインハルトの性感を煽るように。自分がされたら気持ちが良いだろうことを、映像のなかで女性が喘いでいたことを、一つ一つ実践していく。

「・・・あ、スバル。まっ・・・」
「先に言っとくけど、またないしやめないからな」
「なんで、あっ、は、ああっ・・・!」

かぷ、と形の良い耳たぶにかみつくとそれだけで甘い声が上がった。ここが弱いんだな、とすぐさま舌で舐め上げる。耳の穴の中にそのまま舌を突っ込んで、ぐちゅぐちゅ音を立てるとそこから逃げるようにびくびく体が跳ねて、肌と肌が一層密着する。そのおかげで組み敷いた体にだんだんと熱が灯りつつあるのが分かってきた。幸いなことにラインハルトの性器も芯を取り戻し始めている。しかし、意趣返しのように腸内がきゅう、とうねったのに思わず持っていかれそうになったのはちょっといただけない。

「・・・っはー、あっぶねぇ・・・」

中で出すところだった、と思わず愛撫の手を止めて息をつく。ラインハルトの熱が戻り始めてからというもの、なんだか柔軟に動くようになってきてもはやきつい、ではなく気持ちいい、のほうが強くなってきていてまずい。思わず身じろぎをするとぐちゃ、と結合部から粘性の水音が聞こえた。その音に呼応するようにラインハルトの腸内がうごめいて、スバルの性器を誘うように締め上げる。

「う、ちょ、それやばいって」
「・・・・すばる」
「ん?」
「もう、平気だから。いいよ、動いて」

掠れた声でそう耳元でささやかれて、嘘を言ってやしないか、本当にそうか、と顔色を窺う。目と目がばちりとあって、そこに情欲しか残っていないことに気づいて思わず生唾を飲んだ。誘うようにラインハルトが足を動かして、スバルの腰に回す。ぐい、と押されてスバルがすこし前のめりになったせいで、更に深くなった結合に出た声に苦痛の色はもうない。

「・・・・わかった、じゃあ、動くから」
「うん、・・・」

欲に濡れた瞳でとろりと微笑まれる。男がしていい表情じゃねぇな、と思いながらまずはゆっくりと引き抜く。たったそれだけであ、あ、あ、と身をよじってラインハルトが喘いだ。何をどう間違ったのか引き抜かれるのが本当に気持ちいいらしく、その目元にはかすかに生理的な涙がにじんでいる。

「うっわ完勃ちじゃん・・・」

亀頭のところで抜くのを止めて、また押し入れる。入れるときにできるだけ腹の上の部分を擦るようにしたのもよかったのか、自分の腹に着くぐらい勃起しているということは、少なくともスバルの気遣いは無駄にはなっていないということだろう。だんだんと熟れて抵抗がなくなり始めた抜き差しに、ぬくぬくとスバルの性器を包む場所のあまりの気持ちよさにスバルの息も上がっていく。

「ぁ、うっ、やべ、・・・もう、出そう」
「あ、僕の中に・・・出して、いい、から」
「それは、この部屋の事情に関する、お前の、勘なのか?ちがうとしたら、お前ほんっとそれやめろっ、てっ・・!」

スバルに関してならなんでも許容しようとする姿勢に文句を言う。一体どんな男が男の精液を腹の中で受け止めたがるというのだ。この部屋の事情がラインハルトにそういわせたのかもしれないが、とりあえずセックス自体はしているし中に出す意味も理由もない。掻き出すのが大変そうだし外で出します、とどうせこれを見てるんだろう誰かとラインハルトにそう宣言して、自分にラストスパートをかけながらもラインハルトの性器を擦る。スバルの宣言になぜか少し残念そうな顔をしたラインハルトの表情が快楽と困惑に歪んだ。

「や、・・・!嫌だっスバル、なんか変、変な感じ、が、」
「いや、もう、いいんだよそれはっ、お前イキそうになってんの!これはちんこが精子出す前触れなの!変なんじゃなくて気持ちいいのっ!」
「ァ、ちが、う、なかが、変で・・・おかしく、なる、スバルっ、」

突かれている中がおかしい、とラインハルトが首を振った。しかしそんなことを言われても困る。スバルはそろそろ限界だしラインハルトの性器だってもう半分ぐらい達しているようなものだ。だらだらとこぼれる半透明の先走りを使っていつも自分がしているように上下に手を動かす。

「あ、あっ・・・」
「うぁ、ぐっ・・・」

小さく悲鳴を上げて一足先に達したラインハルトの腸内にぎゅう、とひと際強く締め付けられて、慌てて中から性器を抜き取る。腰の後ろに回された足が一瞬だけ逃がすまいとしてか力を入れたのを感じたが、すぐにその抵抗もなくなって、ぎりぎりでラインハルトの腹に精液をぶちまけた。悪いとは思ったがシーツに向けて出す余裕もなかった。なんせ立ちあがっている向きが上向きなわけなので。

「・・・・・あー、かけて悪い」
「いや、気にしなくていいよ」
「そうかよ・・・ああやばい、疲れた。セックスって疲れる。運動だなこりゃ」
「僕は悪くないなと思ったよ。なんならもう一回してもいいぐらいには」
「え?まじ?てかちょっとまって下手なこというな俺がしかるべき筋に殺されるから」

疲れた、とラインハルトに向かって倒れこむ。腹の間でぐちゃ、と音を立てた精液が不愉快だったがもうなんかどうでもよくなってきた。体全体で受け止めてくれたラインハルトがお疲れさま、とでも言うかのようにスバルの髪を撫でる。まだ余裕があるんだなとおもってその体力の差にちょっぴり悲しくなった。色々と気をつかったということもあるだろうが、スバルは一度の射精でもうへとへとだというのに。

「・・・・・ドア、開いた?」
「開いたみたいだね。都合良く部屋の中に二人で入れるくらいのバスタブも現れたよ。ちょうどいい温度に温められたお湯も入っている」
「もうこの部屋作ったやつ殺そうぜラインハルト。どんな強敵でもお前と俺ならできるよ」
「スバルがそう望むのなら」
「いや、冗談です・・・まあいいや、風呂入って帰ろう」

よっこいしょと上半身を起こして、二人である程度体の汚れをシーツでぬぐい取る。床に置いたままの媚薬と書かれた瓶を蹴り転がしてバスタブに向かうスバルの後ろを歩くラインハルトの足取りに乱れはない。すごい。剣聖様すごい。恐らくスバルがラインハルトの立場だったらベッドから立ちあがることすらできなかった。そして御姫様だっことかされて恥の上乗りをしていただろうことは、想像に難くなかった。





「っあ――――、気持ちい・・・」
「いいお湯だね」
「そうだなぁ・・・極楽だぜ」

体のべたつきもなくなって、心地よい温度に体を温められて、思わずスバルの口から幸せな声が出た。向かい合わせに入ってもそうきつく感じないほどにはこのバスタブは広かった。場所が場所だけに少々周りの景色に違和感はあるが、それを抜きにしても気持ちがいい。

「てか、思ったんだけどお前そこまで不能でもないんじゃ?」
「うーん、でも、普段はあんなにならないよ」
「股間に響くような肉体を持った美女に誘惑されても?」
「そんなことをされたことはないけど・・・・恐らく、そうだね」
「まじかよ」

その割にはしっかり反応していたように思う。後ろの反応で立ちあがっていたわけでもなく、スバルがそこに指を入れる前からラインハルトの性器は芯自体は微かに持っていたのだ。そこまで考えて、それ以上いけない、という声が脳内で響いた気がしたのでスバルは考えるのを辞めた。

「多分スバルだからだよ」
「それ言っちゃう!?俺さっき一生懸命考えないようにしてたんですけど!?」
「そう言われても、考えられる理由はそれぐらいだから」
「アッまぁそうですね」
「僕はスバルのことすきだよ」
「あんがと・・・・」

柔らかく微笑みながら言われて、スバルはぶくぶくと空気の泡を吐きながら逃げるように湯の中に顔の半分を沈めた。あまりにもまっすぐに好き、と言われてきっと今の自分の顔は熟れたリンガよりも紅くなっている。ちら、と上目で目の前に座るラインハルトの顔を見るとこちらをみてなんだか幸せそうな顔をしていたのでスバルは今度こそすべての顔を湯船に沈めた。