2015/08/14
みぃ、にゃお、みゃお、と足元で何匹もの猫が鳴いている。

【なんだ?こいつら】
「わ、わかんない。気づいたらこうなってて」

久しぶりに、と城下町へ寄って程よく熟れたリンゴを買おうとしていた時だった。足に柔らかいものが触れて、店の売り子があら、と下を見て微笑んだ。品物を受け取りながら下を見ると、一匹の猫がそこにいた。なめらかな毛並みをした三毛猫が鍵尻尾を揺らして、リンクの顔を見てみゃお、と甘えるように鳴いた。

「知り合いの猫ちゃんですか?」
「いや、はじめて見る猫・・・かな」

ルピーを渡して、お釣りを貰っている間にも猫はずっとリンクのブーツに体をすりつけていた。にぃ、にぃ、と可愛らしく鳴くのにその体を抱き上げて見れば、するりと腕を抜けて下に降りてしまう。そしてまた足にすり寄って、にゃおと鳴く。

「・・・どこかに連れて行きたいの?」

何度かそれをくり返せば、言葉が通じなくとも言いたい事はわかる。道端にしゃがみ込んで喉を掻いてやりながらそう尋ねて見ると、三毛猫はごろごろと喉を鳴らしながらにゃうと返事をした。なるほど、と一つ頷いて立ちあがる。それと同時にぴん、と上がった鍵尻尾に笑みをこぼしながら、一歩適当に歩を進めてみる。どうやら方向は合っていたらしく、先導するように猫が前を歩きだした。

そして何気なくそれについていった結果、冒頭へつながることとなった。いつの間にか一匹、二匹と増えて行った猫で、リンクの足元は満員だ。小さな子猫から大きな体でドスが聞いた声を出すドラ猫まで、まるでハイリア城下に住んでいる全ての猫が集まってきたんじゃないかと思うぐらいだ。

【オマエなんかしたんじゃないか?】
「いや、ここに来て俺がした事って言ったらリンゴを買ったぐらいだけど」
【じゃあそれだろ、それが原因だろ】

する、とリンクの影からミドナが現れる。まだ日が出ているからだろう、真っ黒な輪郭のなかに一つだけ浮かんだ、赤、黄色、緑、様々な色を閉じ込めたような大きな目が足元の猫達を見下ろして、すぅと細まった。

【こいつらの言う事なんて、オオカミになれば一発じゃんかよ。ほら、変化するぞ】
「いやいやいやミドナ、ここ、城下町。しかも昼間、人もいるんだよ。ほら、注目されてるんだから」
【むぅ】

不機嫌そうに歪んだ瞳を必死に宥めて、どうにか獣化を取りやめる。にゃあ、みぃ、みゃお、と足元で猫が集まって鳴くのに、道行く人は面白そうにリンクのことを見る。母親に手をひかれた幼い子供が、ねこのおにいさんだ、とリンクを指差して楽しそうに笑った。