7 「いい加減もうさ、」 *土方公開ソロプレイ。 坂田の酸素マスクが外れた。 食事も少しずつできるようになって、顔色が戻ってきた。 新八と神楽も喜んだ。グラサンのオッサンも泣いてた。婆さんと猫耳、それから妙に杓子定規な若い女もやってきて、コントみたいな会話をして看護師につまみ出された。 新八の姉貴も差し入れを持って駆けつけた。もっとも坂田が『絶対に食うな』と睨むので、気持ちだけ頂戴したが。どっちかっていうと、姉貴に睨み殺されるかと思った。 ホストも来たしオカマも来たし、チンピラまで来たのには俺も向こうもびっくりしたが目を瞑ってやった。手紙も来た。星海坊主が直筆で送ってきたので、また驚いた。 それでも、坂田は他でもない俺を手招きするのだ。 「お待たせ。やっとキスできる」 ベッドに寄りかかって窶れた顔してるくせに、目が輝いている。 恥ずかしくて、でも目が離せなくて、じっと魅入ってたら笑われた。 「それとも、耳がいい?」 「……え?」 「あれ、違った? やっぱ夢かな」 オメーと最後のセックスしたんだよ、と、まだ息切れがするらしく短い言葉で、坂田は呟いた。 「俺も……見た。見てる前で、自分でしろって、」 「乳首クリップで摘んでよ」 「気持ちよかった……」 「ヘンターイ」 同じ夢を、同時に見るってどういうことだ。 さあ、と坂田は首を傾けた。 それよりさぁ、と。 「見せろよ」 「!」 「早く」 「……いま?」 「そ。隊服だし、青姦っぽいし」 うずうずと、腰がむずかる。 隊服でシたことはなかった。 愛されているとは思いもしなかったから、せめて坂田といるときは、真選組の看板を降ろして、俺を見て欲しいと思って。もちろん、坂田に告げることはなく。 「脱げよ。下だけ」 「……や、」 「脱げ」 どうして逆らえないんだろう。 興奮して、ベルトを緩める手が震える。 椅子に座ったまま、腰だけ晒そうとしたら鋭く咎められた。 「脚から抜け」 「だれか、来たら」 「見てもらえよ」 ニヤリ、と唇の端が上がる。 本気だ、こいつ。 せめて足元にたぐませておきたいと言ったのに返事もしない。仕方なく、脚から抜き去った。 途方もなくいやらしいことをしている気がする。だって、 「もう勃ってる。見ろ」 見なくたってわかってた。腰が熱くて、重い。 「脚拡げて。片脚上げろ……そうだな、ベッドに置いていいぜ」 「嫌だ……!」 「へえ。ナースコール押そっかな」 「! テメー、」 「あっれー? 口も悪くなった?」 「……ッ、」 「ほら。早く」 結局脚を大きく開かされ(って、坂田は何にもしてないんだが)、恥ずかしい部分を全部晒した頃には俺の躯は出来上がっていて、触らせてくれとねだる始末だ。 「ダメだ」 「あっ……、なんでっ」 「点検」 え、と聞き返す暇もなく、尻の穴拡げて見せろ、と鋭く命じられた。 尻を割って、よく見えるように腰を上げて、さかたの目の前ににじり寄って、 「ね、まだ……?」 「よし。浮気検査終わり」 「うわ、き?」 「キレイな穴だ。虐められてない」 「……あ、」 死ぬと思ってたから、好きな奴作って幸せになれと言ったのか。 行きずりはどうかと思うよ、なんて釘まで刺して。 「も、しない……」 「ん?」 「さかた、しか……イヤっ、」 「……おまえ、」 信じてもらえなくても、ときどき抱いてくれたらそれでいい。それでも、もう他の男に触らせないから。 「いい加減もうさ、」 坂田の口調があまりに真剣で、俺の背筋は一気に冷えた。 けれど、次の言葉は予想外で。 「さかたっての……やめねえ?」 え、 「そんな、ノリノリのカッコでさ、」 どういうことだ……? 「他人行儀に『坂田』って言われんのもさ、」 なに、を 「悪くねえ。でも、そろそろ変えね?」 長くしゃべったせいか、坂田の息が弾んでいる。 大丈夫か、続きは明日に、と言い掛けたとき、手を取られた。 そのまま坂田の頬に押しつけられて、 「……な、十四郎」 小刻みに震える指先が、この男の臆病さと、これを言うのにどれだけ悩んだかを伝えてきた。 「ぎんとき、」 いつだって、そう呼びたかった。 子どもたちが、大家一家が、町の住人が、近藤さんさえその名を呼ぶのに。 俺だけはいけない気がして、 「……銀時」 銀時は嬉しそうに顔を崩した。 それから公開自慰がまた始まって、自分で後ろを弄ぶところまで教え込まれ、許可が出るまでイかせてもらえず、最後は泣きながら銀時、銀時と連呼して俺は果てたのだった。 外まで聞こえたんじゃないかと冷や冷やしたけど。 章一覧へ TOPへ |