10 寄り道する


「お前ら剣道経験者だったのか。言えばいいのに!」
「ははは……今さらっつーか、恥ずかしいっつーか」
「喧嘩売ってんのか!? 負負負……ッ」
「あああ! 負けてないって土方は! 試合だったら逆胴ナシだし! アレ癖なんだよ直んなくてさぁ! ごめんな……」
「そっ、そうだな! 次は止めるからッ」
「えっ、またやってくれんの!?」
「! き、気が向いたらな……」
「そっか……」
「それに俺! もももう引退だし!」
「だよなぁ」
「おー……」
「長いの?」
「えっ!?」
「剣道、長くやってんの?」
「あ、え、小学校から、かな」
「へえー! 俺も小学校んときやってたんだぜ」
「そ、そうか」
「中学の途中で辞めちまったけどな。ははっ」
「……」
「続けてりゃよかったかなぁ。へへ」
「……なんで、辞めたんだ?」
「えー特に理由なんかねえよ。道場行くより遊びたかったし、あちーし痛てえし汗臭せえし、なんとなく足が遠のいたっつーか」
「勿体ねえ」
「そうだなァ。今思えば勿体なかったかもな。ここの部活やりゃよかったかなあ」
「上手いのに、」
「はあ!? それはねーよ今日はたまたま! 張り切っちゃっただけ! それに部活入ったってサボるぜ、俺」
「お前がいたら、俺が副将なんぞ出来なかったかもしれねえ」
「えええ!? なに言ってんの!? だったらやっぱ入んなくてよかったわ! つうか俺がいてもお前が副将だと思うよ!?」
「……」
「えっ、あ、ちげーぞ? 土方が可哀想とか譲るとか、そんなんじゃねーぞ!?」
「……」
「いやいやいやいや! ホントだから! 本心だからコレ!」


「坂田は……なんでもできるな」
「えっ!? 俺ェェェ!? どこ見てそんなこと言ってくれてんの、いや嬉しいけれども! すっげー嬉しくてテーブル乗ってタップ踏みたいくらいだけども!!」
「英語も……できるし、」
「ななな、なに言ってんの!? ちょっと齧ったくらいだよ俺なんか!?」
「うぅ……」
「あわわわわ、ひ、土方だって数学とか凄えじゃん! 物理も! こないだ実は満点だったんだろ!?」
「……名前書き忘れた」
「ええええ!? それは……さっ、災難、だったな……? いやいや! 名前はちゃんと書こう! それこそ勿体ねえ!」
「……」
「あ、ご、ごめんな言い過ぎ……」
「別に。ホントのことだし」
「……」


「あの、さ。アドレスのこと。ごめんな」
「……あれは総悟が悪い」
「まあ、沖田くんはアレだよね、でも俺も勘違いしてたし」
「……」
「あのっ! あれから変わりねえ? 頭痛くなったり、しねえ?」
「しない」
「そっか。よかった……アレ、高杉が騒いでごめんな」
「お前が騒いだわけじゃないだろ」
「ま、まあな(俺も少し騒いだけど)……けど、なんかごめんな」
「頭大丈夫だから」
「おう、よかったよ」
「残念なことになってねえから」
「え? わかってるよ、そうじゃなくて、」
「……総悟の言うとおりだ」
「? なにが」
「アタマダイジョーブって、『オマエ馬鹿?』って意味だろーが」
「ええ? えええ? あああああ!」
「気づいてなかったのか?」
「ごめんんんん! 全然わかんなかったァァァ! そういう意味じゃなくて! 悪くない?って、あれ? ちがーうこれもそうじゃなくてだな!! 具合な! 体調のこと! あああああ!」
「うるせーな静かにしろ」
「……ぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、その、」
「しかも総悟とメール交換しやがって」
「あれは違うだろ! お前らどんだけ憎み合ってんの!? なんで沖田のアドにお前の名前入ってんの!? お前のだってなんでokitaなの!?」
「まあ……なんとなく」
「仲いいもんな、オメーら」
「! 仲良くねえぞッ、あいつ俺のことマジで潰しに来るから!」
「でもマジで潰されたことねーだろ」
「そりゃあ……幼馴染みだし」
「ふーん。やっぱ俺、剣道部入んなくてよかった」
「!?」
「近藤とか、あの地味な奴とかも仲いいんだろ。俺、居場所なかったかも」
「……高杉とかと入ってくりゃいいだろ」
「はアァァ!? ナイナイナイ! あり得ん、ないわ! あいつガキの頃から厨二病なんだよ、幼稚園から厨二病なんだって!」
「……つき合い長いんだな」
「そらそうだけど! 無駄に長く一緒にいたっつか、まあ遊んでて楽ではあるけども」
「……」
「あああ、悪い奴じゃねーんだよ? ただなんか、馬鹿っつーかズレてるっつか、ヅラとか辰馬も注意しねえからあんなんなっちゃってさあ! ヅラと辰馬もあれはあれでオカシイんだけども!」
「……」
「や、友達としてはいいよ!? 共通の話題とかわかってるし! お互いのヘンなとこも隠しようがないし! いい奴らだけども」
「近藤さんや総悟だって! いい奴だぞ! あと山崎も」
「なんで付け足した!?」
「近藤さんと総悟はガキの頃からのつき合いだし! 親ごと知り合いだし! 山崎はいつから紛れ込んでたか忘れたけど」
「えっ、紛れ込んでたの!?」
「総悟はあんなんだけど根っこは悪くない(はず)だし! 近藤さんは一途だ(けどやりすぎてストーカーっぽい)し!」
「( )は聞かなかったことにすればいいのか?」
「聞かなかったことにしろ! とにかく信頼してる!」
「……そっか」
「そうだ!」
「……」
「……」


「そ、そろそろ帰らねえと」
「あっ悪い、部活の後だもんな! 引き止めちゃって」
「いや、俺が好きで残ってただけだ。気にすんな」
「す、好きで、残ってくれたの……?」
「? 別にテメーが強制したわけじゃねえだろ」
「でも誘ったの俺だし!」
「や、俺も誘おうと思ってたし。そんなに気にすることは……」
「俺も好き!」
「ええ!? な、なにが? ちょ、どうしたァァァ!?」



ぎゅむ、



「俺も好き。土方くんが好き」
「え、ええええ!? 俺は好きとは、」
「友達と違う好き。ヘンなとこは隠したいし友達とおんなじ扱いされたら腹立っちゃう好き。高杉が先に見学行ったのも許せねえくらい」
「ささささ、さかたおちつけ」
「土方もだったんだ! よかった……ずっと言えなくて」
「いやまだ俺言ってねえし、」
「? 好きで居てくれたんだろ?」



「坂田。お前なんでもかんでも得意ってわけじゃねえんだな……安心した」
「え!?」
「勝手に( )内読むな! 俺はお前が好きって、まだ言ってねえぞ」
「え……」
「国語! 勉強しろ!」
「……えっ」

(勝手に好きだなんて決めつけやがって! ……これから言おうと思ってたのに)

「聞こえた!」
「聞くなッ!」




めでたしめでたし……?



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