妬いてくれ ※鴨さんごめんよ鴨さん。土方錯乱、近土ではない。断じてない 2016.02.14 一部改訂 「最終兵器を投入しろ。万斉、抜かるな」 「……とっくに抜かってるでござるよ晋助が」 という会話が、高杉の本宅であったかどうか、俺は知りようがない。相変わらず本妻の河上には目の敵にされ、ラブドールの振りをすれば金的狙ってくるし他人の振りすればわざと歩道橋から叩き落とされそうになるし、だったら俺に近づかなきゃいいと思うのに、やっぱり俺も気になるから半殺しの目に遭うの覚悟でチラ見に行く。ほんとにあの高杉がネコしてるのかは確かめてない。トラなんじゃないかと思ってる。うん。それなら話はわかる。 銀時さんを銀八と呼べないのは変わらない。伊東はなかなか本気出さない。明日から本気出す、といつも言うが、あいつ実はネコ気質なんじゃねえの。3Pしたとき高杉に乳首弄られて、すっげ嬉しそうだった。チンコもいつもの二割増しで、俺のケツの中も少しキモチヨかった。でも、伊東は実は俺が思ってるよりもうちょっといい奴なのかもしれないと思って、俺も伊東とするときは今までの二割増しでヨガってやろうと決心した。高杉のほうがイイけど。3Pのときはなかなか隠し難いから困る。伊東は『ぎんぱち』呼びを許さないから、かもさーんて呼んでみたらやっぱり高杉が半笑いで、こないだは噴き出すの誤魔化すために俺の中に生出ししやがった。許せねえ。銀時さんだって生でしねえのに。 でも、やっぱり銀時さんの話をする相手は高杉しかいない。 晴れて同棲させてやったんだから、もういいだろうと言われたときには驚きすぎて高杉の膝から落っこちた。ちなみに俺はいつも、高杉と向き合って膝に座り、頭を撫でて貰いながら銀時さんの話をするんだ。顔を見なければ、ほんの少ししあわせ。そのために高杉の肩に顔を埋める。銀時さん以外の匂いだけどなんてことない。銀時さんのことを、高杉の膝の上でなら思い出せる。 高杉がそれを銀時さんに言ってやれと勧めるから、急いで帰って銀時さんにそう言ったのに、銀時さんは『そうなんだ、良かったな』と優しく笑ってくれたけど、やっぱりヤキモチなんか妬いてくれなかった。 もう四十になるのに、俺はまだ子供だ。銀時さんにとってはいつまでも、我儘な子供なんだ。宥めすかすために抱いてくれて、お尻の穴におちんぽも挿れてくれるけど俺は子供で、銀時さんのパートナーにはなれない。河上と高杉のようなパートナーには、銀時さんと俺はなれないんだ。俺が子供だから。 銀時さんのセックスは穏やかになった。もう打っ叩いたり痛めつけたりしないで、ゆっくり、それこそ時間があればその間全て掛けてゆっくり、ただ抱きしめるだけでもイッてしまいそうに俺を蕩かしてゆっくり抱く。俺は死ぬほどの快感に怖くなって、ぎんときさん、ぎんときさん、ッて何度も呼んで、間違えないように、また嫌われないように、しっかりしなきゃってずっと思い続ける。そうでもしないと本心がほろほろと溢れそうで怖い。高杉のところになんかやらないで、このままずっと一緒にいて、伊東は短小でも最近頑張ってるから悪いと思うけど、やっぱり銀時さんじゃなきゃ俺はダメだって叫んでしまいそうだ。 高杉に結果を報告して、また膝の上で少し泣いて、純米酒じゃなきゃ嫌だ今日はやっぱり芋焼酎が飲みたい、マヨネーズが足りないフルーツが食べたいとねだった。 「土方。もう、諦めろ。それが一番いい」 「やだ」 「さすがの銀八もこれァ、手に負えねえだろうぜ。温厚な俺でもそろそろキレそうだ」 「やだ。もっと甘やかせ」 「酔っ払い。ま、テメェにゃちょうどいい」 「うん。マヨネーズ食べたい。あーん」 「するか。阿呆」 「スルメとマヨネーズってめっちゃ合うよな。ていうかあれこそマヨボトルとセットで売り出すべきだ」 「お前のプロデュース力は高く評価するが食品業界にゃ絶対手ェ出さねェでくれ。頼む」 「やだ。ボトルの首に引っ掛けて売り出す」 「やめろ。スルメに謝れ」 「首といえば俺のおちんぽのカリ首がさぁ」 「土方。少し黙れ。飲み過ぎだ」 「こないだ高杉だって見ただろ。俺のおちんぽ、まだ現役だよな? な?」 「そうだな、良かったな、もういい加減にしろよ」 「やだ」 高杉は意地悪く俺を膝から払いのけた。 「仕事が残ってる」 「俺がここで片付けてやる」 「そうしようと思ってたが、こんなに酔っちゃァ無理だろう。ほれ、次の客が来るから、そっちに構ってもらえ」 「きゃく、いやだ。俺はおまえの愛人だろ」 「愛人にも友人は必要だろう。我儘言うな。キチンと座れみっともねえ。俺の愛人がこうもだらしねえと、俺の顔が潰れる」 「潰してやる。こうだ。ふにゃ」 「阿呆」 俺と高杉のスペースに空気も読まずズカズカ入り込んできた大男に、俺は文句を言ってやろうと思って高杉の首にぶら下がったまま、邪魔者の顔を睨んだ。 「――近藤さん!?」 「トシ。久しぶりだな」 「近藤さんっ!」 俺は高杉を放り出して、近藤さんの首に抱きついた。懐かしい匂いがした。オッサン臭ともいう。でも、誰がなんと言おうと俺は前からこの匂いが好きだったし近藤さんの枕で昼寝くらいはできる。ぐっすり眠れって言われたらちょっと考えるけど。でも、好きだ。 近藤さんはびっくりしたみたいだけど、俺より背も高いし身体もしっかりしてるからよろけたりしないで、受け止めてくれた。 「大学の途中でいなくなっちまうから……心配してた」 「うん。嬉しい」 「会えてよかった。総悟や山崎も連れてこようと思ったんだが、一人で来いって言われてさ」 「誰に?」 「わかんないけど……この人、かな?」 「俺だ」 高杉が呻いた。やべ、忘れてた。 「確かに俺だ。だがな、もう少しこう……まあ、いい。良かったな、十四郎」 「?」 「俺ァ仕事に戻るから、テメェは寂しく一人寝なんざせずにオトモダチと昔語りでもしてりゃあいい」 「とおしろうっ、て」 「近藤よ。十四郎はちっと我儘になっちまったが、ま、今晩は頼むぜ」 高杉はらしくもなくグダグダ言いながら、俺を残して帰ってしまった。 「今のは……トシの友達か?」 「ううん。愛人。奥さんがいて、俺、その奥さんに命を狙われてるんだ」 「ははは! トシも冗談が言えるようになったんだな! よかったよ、」 「冗談じゃねえんだ! たぶん今日は狙ってこないと思うけど。高杉帰ったし」 「ははは、高杉……? え、3Zの!? 今のが!?」 「そーだよ。奥さんは河上万斉。奥さん? 旦那さん? とにかく河上はタチなんだ」 「タチ? ひろし?」 「違う、高杉がネコで、」 「ひろ……」 「違うってば、もお! 近藤さん、抱っこぉ……」 「と、トシ!?」 近藤さんは何にも知らないはずだったけど、どうだったかな。俺とせんせいがセックスしたことは言ってなかったっけ。言ったような気がする。だって近藤さんだもの、俺が全部話さないわけ、ない。 近藤さん座って、座って飲まないなら口移しでマヨネーズ飲ましちゃう! と喚いたらやっと観念してくれて、新しくビールを頼んだ。 「びーる! マヨいるか」 「うんいらない。そこは変わってないんだな」 「だって銀時さんはさ、あんこ混ぜて飲むんだぜ! マヨにビールも旨いと思う!」 「銀時さんて誰。すごいデジャブなんだけど」 「銀時さんは、おれがいちばんいちばんいッッッちばん好きな人ら! ごめんな近藤さん、あんたより好き! らって銀時さんはおれのことだいてくれて、おれのおしりのあなにおっきなおちんぽたくさんくれてしゅこしゅこキモチくしてくれて、はずかしいなとおしろう、おまえのはずかしいあながおれのちんぽひくひくくわえこんでるぜ、みろいんらんてののしってくれてなんどもなんどもおれ、イッ」 「と、トシィィイ!?」 「こんどーさんとはセックスしたことねえし、あ、してえ? する? ここで」 「しねえよ!? なんてこと言ってんのこの子!?」 「あとさ、伊東っていたじゃんあいつもおれのあいじんで、でもかわいそうなくらいちんぽちいさくてはいってるかたしかめねえとときどき外れてんじゃねえかって思うんだ、あ、でもあいつだけのせいじゃなくておれのけつまんこ拡張させすぎて緩んじゃってるせいかもしんねえや、こんどーさん確かめて」 「トシ、落ち着こう、な? 高杉にからかわれてちょっとエッチな話になっちゃったんだよな?」 「違う! おちんぽのあなも拡張されてガバガバなんだけどそっちは銀時さんがビョーキなおしてくれていっしょにけんしんいこうなって、約束したのにッ、おれ、一人で勝手に行っちゃって、だってあの人おれがウリセンまたはじめたのに気づかねーんだもんひでえよいっしょにくらしてるのにほかの男と寝てかえってきてもきづいてくんねえなんて、あ、みる? ちんぽ。ついでにカリ首みてくれよけっこうすげえんだおれのちん、」 「トシ……わかった、すげえなお前のアレ、なんだっけ、でも俺は見ねえし触らねえから安心しろ、な? 水でも飲む?」 「やだ」 「じゃあお茶! 冷たいお茶飲もう。で、落ち着こう」 「こんどうさんのおしっこのむ」 「やめて! ホントやめて! あああ!? ちょ、スイマセーン! 冷たいおしぼりとお冷、ピッチャーでくださーい! 大至急! トシ、やめなさい人来るから。な? いい子だから俺のズボン離して。おしっこ出ない、つうか飲ませないから俺。や、飲ませないてか、それヤバイから。トシ!?」 「おしっこ…….」 「したいの? トイレ行くか?」 「のんで。おれのおしっこ」 「トシ!? いくらトシでも無理、無理無理無理! スイマセーン! 急いでくださーい!」 「としじゃない。とおしろうっていって」 「だってトシはトシだよ。な、ほら水飲んで。おしっこしたい? トイレ連れてってやるから」 「……ぎんときさん、」 「なんだって?」 「銀時さんが、すき」 「銀時さんは俺よく知らねえけど、トシが好きならいい人なんだろうな」 「いいひと……?」 「人が良いんじゃなくてさ。悪いひとかもしんねーけど、ホラ銀八みたいな人。いたろ、俺たちの担任でさ。普段はパッとしねえのにいざってときはキラキラしてるひと」 「……きらきら、」 「銀髪のさ。目が赤くて、メガネかけてて授業中に煙草吸ってんのにペロペロキャンディだって言い張ってた先生」 「……せんせい?」 「そ! 思い出した? 銀八って呼んでたなぁみんな。さかた、だったっけ、上の名前」 「ぎん、」 「そうそう、銀八」 「……したのなまえってさぁ、やらしいいいかただよな、したって、したってさあ、ちん」 「いやいやいや! なんでそっち行っちゃうの、上の名前下の名前っていうだろ!? トシの場合は土方十四郎だろ、俺久々にこの名前フルで言うけど」 「うえのおくちとしたのおくちでじょうずにのめる」 「あああなんてことを! 違うってば! そうじゃなくて、土方とか、十四郎とか」 「とおしろう……それ、おれの源氏名、」 「えええええ!? 本名使っちゃったの、ていうか源氏名使ってたってトシ!? 何してたの!? ホスト?」 「ほすとと、うりせんと、あいじん」 「――それ、本当?」 「ほんと。いや?」 「……今、どこに住んでんの。高杉んち?」 「ころされる! おくさんが、かくじつにおれのタマねらっ」 「わかった! 本宅じゃねえよなフツーに考えて。普通がなんだかこの際置いとくけども! 一人で住んでるのか?」 「そーごは? そーごもかくじつにおれのこと、」 「総悟はさすがに空気読むって!? なあ住所。誰かと住んでるのかだけ教えて。トシ良い子だから」 「いいこのおれと、せっくすしよ」 「しない。トシは俺の友達だからしない。好きだけど、その好きとは違うだろ? だからしない」 「そっか。ともだちの、すき、か」 「そうだよ。トシ、」 「ぎんときさんもそうなのかな。おれのこと、ともだちのすきになっちゃったのかな」 「銀時さんて人がわかんないから、俺はわかんないよ。でも、前は友達じゃない好きでいてくれたのか」 「……わかんない。わかんないよ、もう」 「トシは、友達じゃない好きだったんだな」 「しゅき、いまもしゅき。ぎんときしゃん……ぐう、」 「あっ、待って! 寝ないで、トシィィイ!? 家教えて? それまで頑張って! タクシーで送ってあげるから!」 気がついたらタクシーの中で、近藤さんの膝に頭を乗せて眠っていた。大きな手が頭に乗っていて、ときどき髪を梳いてくれて、あったかくて、でも手触りがゴツゴツして厚みがあって、ああ銀時さんじゃねえんだなって思ったら涙が出てきた。近藤さんはしばらく黙っててくれたけど、不意にタクシーを止めた。 「まだですけど、」 「すいません。気分悪いみたいなんで、下りて歩かせます。ご迷惑おかけしました」 「いいえ。気をつけて」 他人の会話を聞きながら、ああ迷惑を掛けてしまったんだな、と理解した。 「大丈夫か? 飲み物買ってこようか」 「いや、いらない。ありがと」 「うん。だいぶ醒めたな。よかった。ありがとうって言えるなら、普通のトシだ。ははは」 「……おれ、なんか変なこと言ったか」 「変なこと以外言ってないし俺半分も理解できなかったからいいよ! な! 忘れろ忘れろ。また会えたんだ、そっちの方がずっといい」 「そっか……ごめんな」 「謝るなよ! それくらいならまた会おう。こんな溜め込む前にさ、連絡くれよ。な? 前みたいに飲むのもいいし、トシが愚痴りたいなら付き合うし。総悟も山崎も、きっと来てくれるさ」 「うん。そうだといいな」 「あはは、心配すんな決まってんだろ! 俺たちはいつでもトシが好きだよ」 「土方。帰るのが遅れるならそう言え」 銀時さんの声がした。 え、どうして。ここ、どこ。なんで銀時さんがこんなとこに、 「なんだ、銀八じゃねーか! ひっさしぶり、俺だよ俺、こんど、」 「ゴリラはすっこんでろ。土方。どういうことだ、説明しろ」 「あ……高杉が仕事で、そんで、えっと……あれ、なんで近藤さん、が」 「近藤と飲んだのか」 「……たぶん。そうだよな、近藤さん」 「ああ! すげえ酔っ払っ、」 「土方に聞いてんだ。お前、誰と飲んだかわかんなくなるほど飲んだのか? これが近藤じゃなかったらどうするつもりだ。ゴリラはゴリラだから……おいゴリラ。妙な真似しなかっただろうな」 「え、俺!? さ、されたけどしてな、」 「俺、したのか!?」 どうしよう銀時さんが怒ってる、怖い顔で俺を睨んでるのに俺はどうしていいかわからない、なんて言えばいいんだ俺は、 「トシは黙ってて! いや、なんにもなかった! トシとは何にもなかった。誓って、ない」 「……そうだ。近藤さんは俺のこと、友達の好きだからシないんだ」 なにもないに決まってるだって近藤さんはともだちだ、ちょっと今は寄りかからせてもらってるけどそれは俺がタクシーの中で泣いたのを近藤さんが可哀想に思ってくれたからで、 「友達の好きだァ? しっかりしろや、いくつだテメーら」 「俺は、銀時さんに、友達の好きと違う好きだから、せっくすもしたいんだって言った」 「……おいゴリラ。どこまで聞いた場合によっちゃ」 「どこまでって。あんたらがヤったこととか。トシが、銀時さんていう人をずーっと好きなこととか」 「あ、ダメだ近藤さん! それ、言わないで」 「言うよ」 ああ。 近藤さん、昔と変わらない近藤さん。余計なタイミングで余計なことする近藤さん。大好きな近藤さん、でもそれは、言わないでくれ。 「わかった。銀時さんが好きで好きでたまんねえのにトシ、銀八と住んでんだな? そらそうだ、お前んちの住所、店の人が正確に知ってたし俺もおかしいとは思ったんだ。おめーが予め教えといたんだな、銀八」 「……黙れゴリラ」 「たぶんトシは飲むならあの店って決まってて、それは高杉が決めたんだかなんだか知らねえけどいつ酔い潰れても可笑しくねえ飲み方するし高杉以外の奴と飲んだ時の用心にこっそり銀八んちを教えといたんだろ。違うか」 「黙れ、」 「銀時さんて、アンタのことだよな。一文字しか違わねえし、そういや銀八の奴ガッコ辞めたって聞いたよ。男の生徒とヤったとかヤんねえとか、一時期噂になったわ」 「……」 「それが、トシなのか」 「……」 「あれからずっと一緒に、」 「違う」 銀時さんが、銀時さんが責められてしまう。銀時さんが警察に捕まったら、遠くに行ってしまったら、銀時さんがいなくなったら俺は、 「立て、土方。説明しろ。どうしてこうなったか。お前は、どうしてえのか」 銀時さんが俺に尋ねてる。早く答えなきゃ、上手く立てないし説明もできないかもしれないけど、銀時さんに答えなきゃ、 「土方は、あの子のもっと前の代だ。噂の子とは違う。それにあの子とはヤッてねえ」 嘘。知ってるよ。ヤッてねえっていうのは、ケツマンコにチンコを突っ込んでないだけで、指でキモチヨくしてあげたり、もしかして俺にはしてくれなかったけどキスや、口で可愛がってあげたり、 「ヤッたのは土方だけだ」 「いいよ銀時さん。嘘つかねえで。その子とも、ヤッたんだろ。わかってるから俺」 立てた。ふらふらするけど、まだ頭はガンガンするけど、涙も出るしなんだか前はよく見えないけど、 「指だろうがちんぽだろうが、とにかく、触ったんだろ。優しくしてあげたかどうかは、わかんね、けど」 「……」 「セックス、したんだろ。俺と暮らしてたのに」 「……ッ、」 「俺がいたのに! 俺じゃないヤツと寝たんだろ。あの時言ったよな、その子はやめといたほうがいいって。その子はアンタがずっと好きだったんだ、好きって綺麗なもんだろ、隠さなきゃいけないものじゃないだろ? 俺は隠さなきゃって思ったけど、それは、少し考えて、イケナイことしたんだって思ったからで、その子はただ嬉しかったんだ。好きな人に、一回でもいいから触ってもらえて、カラダの中まで手ェ突っ込んでもらえて、こんなこと他の子にはしないって信じてたから嬉しくて嬉しくて、誰かにキラキラをッ、見せたくなったんだ! しょうがねえだろ!? わかってるよアンタがそうしなきゃいられないのも、俺じゃない誰かも必要な人だってわかってるけど! じゃあ俺が他の男と寝てもッ、アンタはっ、なんとも思わねえのか!? 高杉にボロボロに抱かれても、死にてえと思うくらい責められても、ひでえ変態プレイでケツマンコびろびろにされて尿道ガバガバにされてッ、痛くて悲しくて、そんなのに好きな人のなまえッ、なまえも呼べなくて! 助けて、痛いのにキモチイイ死んじゃうッて何度も言っただろ! なんとも思わねえのかよ!? 死ねばいいのか俺は、あなたの名前も言えずに、どんなに辛くても銀時さんとしか呼べずに! そのまま死んじゃえばいいのかッ他の男の手で! やだ! 俺は嫌だ! イくなら銀八の手でイキてえ! うあああああああ」 銀八の手が俺の口を塞ぎ、近藤さんがやべえな解散すっか、また今度続き聞かせろよ銀八って笑って走っていき、ぎんぱちが俺をぐいぐい引っ張って物陰に二人で隠れて、涙が止まんない俺をしっかり抱きしめてくれて、 「ぎんぱちぃぃ……」 「しっ。もうすぐお巡りいなくなるから。それまで静かに」 「ぅううぅぅ、」 「シー、な?」 口で口を塞いでくれて、舌も入って来てぐちょぐちょに絡められてせっかく冷めた酔いがぐるぐる戻ってきて訳が分からなくなって、遠くに銀八の声で、ええ、痴話喧嘩しちゃって、お騒がせしてすいませんでした、もう絶対しないんで、はい、すいません、ってお巡りにたくさん謝るのが聞こえて、ちわげんかって、そういう意味でいいのかなって考えながらまた気を失った。 目が覚めたらいつもの俺の部屋で、もちろん銀八と俺が暮らすいつもの部屋で、俺はいつものベッドに寝かされて、銀八が隣に座って俺を見ていて、気がついたのがわかったみたいに笑ってくれて、もう少し寝ろ、と言って俺の瞼の上に大きな手のひらを置いた。 あったかくて、銀八の肌の匂いと、手触りと、声と、俺の欲しいものばっかりでいっぱいで、いつかバチが当たるんじゃないかと思ったら涙が出た。 ぎんぱちは黙ってその涙を覆ってくれたけど、後から後から溢れて溢れて、俺自身が困るくらい溢れて、しまいにぎんぱちはせっかくの手をどけてしまって、冷たいタオルが目の上に乗せられた。ぎんぱちが見えなくなって寂しく思ったのはほんの数秒で、今度は俺の手に、唇に、ぎんぱちの体温が降ってきて、包まれて、 「十四郎。愛してる」 俺に聞こえないように言ったんだろうけど、そしてそれはこれまで確かに何度も囁かれていたのに、ただ泣くだけで何もしなかった俺が気づけなかっただけなんだろうけど――今度はちゃんと聞こえた。 ぎんぱちのこえ。 おれもだよ。ぎんぱち。 あの日からずっと、あなただけ。 前へ/ 目次TOPへ |