ごめんなさい ※性病土方 土方は俺の部屋にいる。 売春はやめさせた。血液検査も泌尿器検査もした。淋病、カンジダ、クラミジア……複数の性病に陽性反応が出て、血液検査は結果待ちだ。 俺も定期的に受けてる検査だけに、これほど引っかかる値を見て愕然とした。 店では特に検査を義務付けられてはおらず、自費だったから受けなかったと、土方はケロリと白状した。 「ごめんな。ここにいるのに、セックスできなくて」 土方の心配事は、その一点らしい。 「先生は検査してるんなら一応安心だけど、ゴムは付けてシろよ」 「シねえよ。治るの待ってる」 「嘘つかなくていいよ。ほんとごめんな、オススメとか知ってるし行って?」 「行かねえって」 「変わったプレイしたかったら、三丁目の」 「いい加減、黙れ」 最近の会話は、こんなんばっかりだ。 土方は悲しそうに黙り込む。 いきなりデリヘルが来て驚いたこともある。 可愛い男の子だったけれど、金を払って断った。もちろん、手配は土方だ。 「余計なことをするな」 「でも、どっかで抜かなきゃ辛いだろ。最近ずっとうちにいるし、いいアイデアだと思ったのに」 「それが余計なんだよ、わかれ」 土方は小便するときに涙を流す。痛むと聞いた。それに、尿道炎気味でもあるから小便が近い。何度も、何度も土方は苦しむ。 「痛いの、ヤだ……も、終わっ」 トイレで譫言のように呟くのが聞こえる。聞かない振りをしてやるが、出てきたときの顔色は優れない。尿道から膿が出るらしい。 「何したらそうなんだよ」 つい聞いてしまったら、尿道プレイについて詳しく説明された。先の穴に棒を入れ、ネジで調整して少しずつ拡げていくこと。拡張のためのバイブは十数種類が箱におさまっており、少しずつ太い物に変えて慣らしていくこと。初めは痛いだけだが、しばらくすると快感を得られること。 「尿道責めでイッちゃって、痛いのに気持ちよくて死ぬかと思った」 とあっさり感想を述べる土方は、笑ってさえいる。 それでも、時折、 ふと振り返ると土方の視線にぶつかる。 すぐに逸らされてしまうけれど、その視線は鋭くはない。 「ぎんぱち……」 「なんだ」 「……んん、なんでもない」 「トイレ、行くか?」 「いい。行かない」 俺も万が一に備えて少しは知識を仕入れているから、土方には水分を取らせて下腹部を冷やさないように注意はしている。抗生剤が効けば、順調に治るはずだが最初のは合わなかったらしい。 髪を撫でてやると猫のように目を細めて、嬉しそうに擦り寄ってくるのが可愛いらしい。だが、以前のようにそのまま甘えてくることはなく、ハッ、と我に返るのか、そっと離れていく。 「なんで」 「なんでって……汚ねえし、俺」 「汚くはねえだろ。それ言うなら俺だってああいうの利用してんだから、や、してたんだから汚ねえだろう」 「利用……」 「今はしてねえぞ」 「そうなのか。あいつら、売上げ減っちまうな」 売り専トモダチの懐まで心配。お前な、キリないだろ。 「ぎんぱちは……どんなプレイが好きなの」 ねえ、昔の男の話して。 「やっぱり童顔の可愛めで……線が細いのが好き?」 指でイかせてあげたよ。可愛く鳴いてね、いく、いっちゃう、お尻キモチイイって。出しちゃったよその子。ぴゅぴゅ、って。 「目が切れ長でさ、綺麗なヤツがいたんだ、結構話したんだけど……そいつとか、呼ぶ? いいよ、おれ」 クールビューティー? おれは、クールビューティーなのか。 土方のこれは、自分を責めて責めて、せめて俺に不自由させまいとする気持ちの発露だ。同時に俺への憎悪でもある。 お前が言ったのだ、他の男がいいと。だから今、俺はそれに応えているのに、拒絶など許さん、と。 「ぎんぱち」 「なーに」 「だいきらい」 「……うん、ごめんね」 「嘘。大好き」 「十四郎」 「いいよ、嫌いで。知ってる」 「嫌いじゃない」 「うん。それも知ってる」 嘘つき。 知らないくせに。 俺がどれほどお前を愛しているか。 「十四郎、」 「なーに」 「元気になったら、またリング嵌めていい?」 「ふふ、いいよ。なんでも」 いいよ、どうでも。 じゃあリングはやめて、今度はちんこの穴に旗立てちゃおうかな。 あ、そうだ。ぎんぱちとは尿道プレイしてないもんな。いいよ、挿れて。たぶん指くらい入るよ、人差し指でね、尿道の内側から前立腺弄ってもらうとスゴイんだ。キモチイイのに出せないしイッててもやめてもらえないし、もうカラダ吹っ飛ぶくらい気持ちヨくて癖になって何度もなんども…… そっか。やってみたいな。 うん、治ったらしよ? 爪切ってね。中痛いから。ケツの穴と同時責めとか、頭真っ白になるんだ。ほんとすげーきもちくて、きっと客の名前なんか忘れてずーっとぎんぱち、ぎんぱちって叫んでたと思う、助けてぎんぱちって、死ぬ、死んじゃう、キモチイイよ死ぬまでして、死ぬとこ見ててって。 現実問題がぎくり、と俺を脅かす。 やはり生徒に手を出すのは大きな間違いだったかもしれない。慎重に、偽名で遊んでいたというのにこの子供は。 ふふ、と土方は笑った。楽しみだな。ぎんぱちと尿道プレイ。早く治さなきゃ。 前へ/次へ 目次TOPへ |