煌めく蛾!


「いて」
「おっと、あらごめんなさ……げっ」
「え、」
「おほほほほ何でもないわ! じゃあね!」
「おい」
「ちょっと離して! 急いでるのよう」
「しばらく見ねえと思ったらまたいつにも増してケッタイな格好で何やってんだ」
「ひひひ人違いじゃありません!? 私あなたとは初対面ですぅ!」
「そうか? 俺はよく見知った顔だと思うがな」
「……チッ、見知った顔だと思うなら離せよ。言っとくけどバイトだぞ。オカマに宗旨替えとかじゃねえぞ。じゃないや、ないわよ。離してちょーだいお店連れてくわよ」
「ふーん。コレ付け毛か? なんかここ境目が」
「おい引っ張んなこれ付けるのひと苦労なんだぞ! じゃないや、なのよ! チッ、こんなことなら早起きして店で着付けするんだった……」
「早起きて。どんだけ寝りゃ気がすむんだ、もう夜だぞ」
「夜の蝶は今からが活動時間なのよ! 今『蝶? は? 何言ってんの蛾の間違いだろプーッ』とか思っただろ言うなよ俺もそっくりそのまんまそう思うから!」
「……いや………まあ、うん、なんだな、大変だな」
「大変だと思うならお前客になれ。同伴なら遅刻も大目に見てもらえっから付き合え」
「やだ」
「ですよねー! もういいよ、じゃあな」
「あっ、おい」
「あん? だから急いでんの。遅刻したら殺されるから。今まさに命の瀬戸際だからね」
「……一緒に行ってやったらなんとかなんのか」
「へ!? いや、まあ……そりゃ助かるけど。でも、まあなんだ。無理すんな」
「う……そりゃ、喜んでついてくとは言い難いが」
「うんうん、それが通常の感覚デスヨ。おめーはちゃんとしたオネーチャンのいる店でも行ってこい。間違ってもオカマの店に紛れ込むなよ」
「オカマの店なのか」
「ちょっとやっだーなんだと思ったの仮想パーティに出席したって一文の得にもなんないでしょ。家賃溜まってババアがキレてかまっ娘倶楽部に放り込まれたの。ほんと臨時バイトだから。そこんとこ間違えないように」
「あ、おい、」
「は? まだなんかあんの。ほんと付き合わせんぞテメー、じゃないや、付き合ってもらうわよアナタ」
「だから付き合ってやらんでもないが」
「イヤいいよ、顔が露骨に嫌がってるもの。それに知り合いがいたらおれ……アタシもやりにくいし」
「かまっ娘倶楽部ってあの、三丁目のか」
「イヤイヤイヤ、ほんと来ないで。お願いします。もう行ってい?」
「……おー、」


(なにあいつ。嫌味のひとつやふたつ言うかと思ったのに何ともねえし)
(まあ、知り合いが女装してたらビビるよな。ビビって言葉も出ねーよな、はは、あははは……)
(選りに選って土方くんに見られるとかなんなの俺、神の怒りに触れてんの。恋愛の神様的な)
(引いたよなぁ……俺は土方が女装してても引かないけど。むしろ燃えるけど)
(俺じゃあな……ゴツいオッサン隠しきれてねえっつーか端から隠す気にもなんねえくれえ手遅れだしなぁ)
(なんでこんな目に……俺主人公なのに、ん?)


「お兄さん、ソッチの気あんの?」
「やめときなってあの店はゴツイのばっかだって。俺たちが可愛がってあげるからさ」
「てゆーかお兄さん、ヤりたいの。可愛いからヤられときなって」
「俺が一番な」
「は? 俺が先に見つけたんだぞ、俺が一番だ」
「はースベスベじゃん手とか。足はどうかな……」
「刀邪魔じゃね? 持っててあげるからさ、こっちおいで」
「あーここなら人来ねえからいいな。髪の毛サラサラでいい匂いすんねえ、いいねえ」


(なななな、なにやってんのあいつ!?)
(先回りしたの!? アホですか!?)
(びっくりして抵抗すんのも忘れて……って、ちょ、美味しく食べられちまうぞ! しっかりしろよ!)
(オイオイオイそっちはヤバいって、マジ人来ねえからまずいって!……チッ)


「なにしてるのぉお兄さんたちぃ」
「げっオカマ」
「ほっとけほっとけ。オカマのお姉さん悪いね、アンタはお呼びじゃねーよ」
「そうそう。こっちの綺麗なお兄さんとキモチーコトすんだからあっち行った行った」
「そうだなーオカマのお姉さんじゃあ勃たねえなぁ、ハハハハ……ッ!?」

「勃たないの? EDなの? 病気なの?」
「イテッ、ちょ、コイツすげえ馬鹿力……ッ」
「役に立たないチンコなら切っちゃったら? アタシたちの世界にようこそー。アタシは工事してないしする気も予定もないけど」
「あだッ、やめろォォオ!」
「こ、コイツかまっ娘倶楽部の、」
「オイ! 店がどうなってもいいのか、商売できねえようにしてもいいんだぞ」
「是非お願いします助かります」
「このヤロ、」
「野郎じゃありませんーオカマですぅ。アンタたちこそどうなっても知らないわよマジで。っつーかとりあえずアタシをなんとかしないとお店に嫌がらせしに行けないんじゃなーい?」
「おいっ、オカマ一人くらいなんてこたねえッやっちまえ」
「そうねぇアタシ一人ですもんねーだ。やれるもんならやってみろよクズが」


 ギロ、
 ビクッ、


「店に顔出したら股にぶら下がってる汚ねえモン引きちぎってオカマにすんぞ、じゃないやするわよ、ツラぁ覚えたからなじゃねーやご尊顔は覚えましてよ」
「だっ、だからなんだ! ここら辺は俺たちの縄張りだぞ! 俺たちのやり方に従わねーと、」
「どうなんの?」
「てめっ、カタギじゃねえな! どこの組のモンだ」
「さあねえ。どこの組っつーか、今んとこかまっ娘倶楽部のキャバ嬢?」
「ここにゃここのルールってもんがあんだ! この世界で暮らすからには、」
「知るか。俺が従うのは俺のルールだ」
「う……」
「今なら見なかったことにしてやる。どうする」


 お、おい、ヤバいって! ヤバイヤバイマジヤバイ……逃げろ、
 バタバタバタバタ……


「じゃあね、そこの黒髪のお兄さんもさっさと行きなさいよ」
「……こっ、これから蹴散らすつもりだったんだからな!」
「うん、わかってるよ。でもねえ、この辺てああいうの含めて物騒だからね、おめーが知ってる物騒さとはひと味違うからね。悪いこたァ言わねえからとっとと帰んな……じゃないや、早くお帰りなさいな」
「……ち、遅刻だろ」
「ん? まあね、あはははもうどーでもいいや命までは取られ……るかもしんねえどうしよう」
「……」
「まっ! なんとかなんだろ! そんなことより気をつけて帰れよ。ジミーくんとか呼んで一緒に帰ってもらえ……もらいなさいよ。つまんない男にコマされてんじゃないわよッ」
「……行く」
「は?」
「同伴なら怒られねーんだろ。行く」
「は!?」
「その……ど、どんなカッコしてても、テメェはテメェだろ……や、その」
「……」
「あの、」
「……」
「……なんか、言え」
「や、ありがてえ、けど」
「……」
「いいの?」
「……」
「自分で言うのもなんだけど俺よりキッツイキャバ嬢モドキがわんさか居るぜ? 大丈夫なの?」
「……」
「おい、土方」
「……お、お前が」
「?」
「お前が、俺のテーブルにつけば、いいだろ……っ」
「!」
「〜〜〜ッ」


(なにこれなにこれナニコレェェエ!?)
(ひ、土方くんが赤面してるぅぅう!? なんで? なんで顔赤いのなんで目ェ合わせねーのなんでなんでなんで!?)
(照れてんの!? 嘘だろ!? 照れてーのは俺だよ! つーか土方が照れる要素ねえよな!?)
(あっチラッとこっち見た! 何その目! おおお乙女!?)
(まままま、まさか惚れ)
(イヤイヤイヤ。まっさかー! ナイナイナイ。落ち着け俺)
(ナイ、よな?)


「土方くん」
「! なっ、なんだ」
「遅刻とかホントどうでもいいから無理しなくていいよ?」
「……俺を連れてくのは、嫌か」
「へっ」
「俺はダメか」
「いや。ダメじゃねえけどおめーこそ嫌じゃねえの。これから仕事だし、俺オカマのフリしなきゃいけねーし自分でも結構キツイと思うよ?」
「……別に………中身がお前なら……いい」
「まさかと思うけどおめー、こういうのが好きなヒト?」
「違ッ、オカマが好きなわけあるかボケ!」
「うん。だよね。あ、店行くならオカマを貶める発言は控えろよ。さもないとパー子とツートップのマヨ子誕生させられっからな」
「連れてってくれんのか!?」
「え? ああ、まあ……そんな行きてえなら、行くか」
「終わるの待ってていいか?」
「へっ、や、いいけど!? 無理すんなよ、嫌んなったら帰れよ。あ、でも一人で帰すとあぶねーから誰か……えーと」
「待ってる」
「えっ? マジ? 本気で言ってんの!? うん、じゃあ……終わったら、屯所まで送るわ」
「明日非番だし」
「え?」
「帰らなくて平気だから」
「え? え、えええ?」

(こ、コイツ……ッわざとか? いやでもさっきチンピラに囲まれたばっかりでそういうのは……なんで? ほんとにいいの?)



(察しろよクソ天パッ、は、恥ずかしいだろ! クソっいつもの万事屋に当てられるならともかく……女装のコイツまで煌めいて見えるなんざ重症だ俺、抱かれてえ……ってわああああ!)




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神アイコンさまリクエスト

「パー子姿でも煌めく万事屋さんに
惚れ直す土方さんなお話」

煌めいてるのか……!?
リクエストありがとうございました!






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