オワリとハジマリ(W副長シリーズ)


 ドカーン!!

「まだ残ってたか! チッ」
「時限式ではないほうです、地雷式の」
「誰か踏んだってことか!? 誰だッ」
「あ……坂田副長、です」
「!?」
「奇跡的に外傷は軽いようですが、」
「あのバカ……ッ、病院へ! 緊急搬送手配!」



「良かった。木っ端微塵かと思った」
「……」
「もうッ! 爆発物処理班に任せろって言っただろーが!? お前爆弾にやたら縁があんだから! 少しは懲りろッ!」
「……」
「聞いてんのか!?」
「……」
「銀時?」
「あ、銀時って、俺のこと?」
「おい、」
「キミ、どなた?」



「身体に傷が少なかったのは不幸中の幸いだが、トシのことまで忘れちまうとはな。あ、トシって最初に来た奴だけど」
「黒髪の、前髪V字の子でしょ。すげえ泣いてたけど……悪いとは思うよ? でもさぁ」
「根本的に人格まで変わっちゃいなそうだな、今回は」
「?」
「や、もうこれ言い出すとややこしくなるから。おめーは坂田銀時。なんやかんやで真選組の副長だ。俺は局長の近藤。なんか思い出さないか」
「いや。全然」
「まあ、屯所に戻ればいろいろヒントもあるかもしんねえし、とりあえず体治せ。なっ」
「いて! ゴリラみてえなツラしてると思ったら力までゴリラ並み!?」
「お前ホントに記憶ねえの!?」


「おけーりなせィ……つっても俺のことも忘れやしたかィ」
「うん。さっぱり」
「残念でさァ、あんなに愛し合った仲だったのにッ」
「えっ、マジ? つーかあそこの陰から前髪V字の子がめっちゃ睨んでんだけど」
「チッ気づかれたか目敏い野郎でィ。あ、旦那、今のァウソです」
「え? どれが? 愛し合った仲がだよな当然」
「当然て、アンタ。ほんとに」
「いてててて。頭痛え……なんか思い出せそうだったのに」
「……まあ、屯所の中でも見物してくだせェ、俺のオススメはあの蔵ん中ですが、話がうまく運ぶとつまんねえから最後に見るといいですぜ」
「? そうなの? わかった」


「旦那ぁ、困りますよ早く思い出してください! 土方副長の仕事ぱっつんぱっつんで、もう機嫌悪くて! また俺ぶん殴られる生活に逆戻りじゃないですか!」
「えーと、キミホントに俺の知り合いだった?」
「……旦那、ホントに記憶失くしてます?」
「失くしてるよ、だってキミが誰だかさっぱりわからないもの。つーか記憶の機能自体やべえかも、キミの顔三秒経つとまた忘れるもの、もっかい病院行ったほうがいいかなこりゃ」
「いえ……たぶん、機能は正常だと思います、ぐすん」
「えーと、キミホントに俺の知り合いだった?」
「知り合いじゃありませんでしたとも! 忘れてください俺のことなんか! うわあああああん」


「よう。より一層アタマ悪くなったって聞いたぜ」
「え、この人真選組のヒトじゃないよね、目付き段違いに悪いよね。誰コイツ屯所に入れたの」
「……やべえ、俺も俺をここに連れきた奴の顔が思い出せねえ」
「つーこた、誰かに連れてこられたんだろ。で? お名前は」
「万事屋だ」
「ばんじや?」
「俺は漢字で喋ったつもりはねえんだが? よく『ばんじや』だってわかったなテメェ、さては……」
「さては?」
「ふん。ところで俺とテメェの間柄だが」
「うんうん。そこは聞きたいよね」
「キスするだの乳首触るだの、そんくれえなら最後までするだのっつー話になったことがあった」
「うんうん。で、また前髪V字の子があっちで破壊行動してんだけど、それに心当たりは?」
「ククッ……あるぜ」
「?」
「前髪V字のヤツに猫耳でも付けてみるんだな。ついでに立派な尻尾もあるはずだ。テメェの部屋の押し入れかなんかじゃねえか」
「マジで? なんで知ってんの」
「万事屋だからな。じゃあな」


「坂田副長、隊士一同よりお見舞いの品であります」
「ありがと。なにこれ」
「DVDでありますッマスター動画は坂田副長がお持ちのはずですが、我々は坂田副長にハイライトを編集していただきました! よかったら! 治療の一環として! ご覧ください」
「へいへい。治療の一環としてね。了解ーあんがとな」


「坂田副長ッ」
「こんにちは。キミは……その隊服ってことは」
「自分は一介の平隊士でありますが、一度坂田副長直々にご指導いただいたことがあります」
「え。なんの」
「バランスボールであります! 最初自分は土方副長のお部屋で、土方副長と特訓をしておりました」
「土方副長ってあれだよね、あそこからこっち睨んでる前髪V字の子だよね」
「げっ……急ぎます、土方副長と特訓をしていたところ坂田副長がいらして次回からは坂田副長のお部屋で坂田副長が特訓をすることになりッ何度か扱いていただきました!」
「何を?」
「ややや、ナニをじゃなくて! 厳しい訓練をという意味で……ぎゃああああ土方副長誤解ですッ自分何にもしてませんんんん!」


「ぐすん」
「土方くん、隊士虐めちゃだめだろ。キミ副長なんだからさ」
「……副長は、副長を、虐めてもっ、いいんだぞ」
「よくわかんねえな。俺を虐めたいの?」
「俺は……銀時を虐めたくない」
「じゃあ俺は土方くんを虐めてもいいの?」

 ……こくん、

「え、可哀想だよ。土方くん可愛いし」
「かっ、可愛いのか!?」
「綺麗な顔だし、虐めたら可哀想。自分を大事にしないと」
「ぅ……大事に、してもらってた」
「俺に? だろーな、俺がどんな奴だったかイマイチぴんとこねえけど、土方くん虐めるような酷え奴じゃなかったって信じる」
「……ぐすん」
「あ、沖田くんにね。最後にあの蔵に行ってみろって言われてるんだ。もう大方見尽くしたし、ちょっと行ってくるわ」
「ま、待て! 俺も行くッ」
「ええーでも土方くんは俺のせいで仕事増えちゃったんだろ。誰だっけ……あいたたた、アタマ痛え、思い出せねえ」
「ああ、山崎か」
「ジミな奴だったよ確か。土方副長に怒られるって泣いてたよ?」
「いいんだ山崎は。そういう係だから。ついでに言うと山崎のこと思い出そうとするとときどき俺も頭痛するから。それ正常だから」
「あ、そなの? おめー人見てSとM使い分けるねえ」
「え、」
「ん? 隊士には厳しいんだなーって思って。やっぱりちゃんとした副長なんだね、土方くんは」
「なんだ……」
「じゃあ俺、蔵行ってみるわ」
「俺も!」
「そう? じゃあせっかくだから……あ、高杉ってヤツに聞いたんだけど、俺の部屋の押入れに、猫耳? と、尻尾? あるんだって。知ってる?」
「知ってる……」
「蔵行く途中で寄ってい?」
「……いい、けど」


 ガサゴソ、ガサゴソ


「いやホントにあったわすげえな高杉」
「なんで棒読み!?」
「よし、蔵行こうぜ。ああ土方副長、仕事は? ひと段落した? ならちょっーっとこの耳付けてみて。や、キミ可愛いからさ。似合うかなと思って。わーやっぱ思い通りだわ、可愛い可愛い本物みてえ。尻尾はどうすんのかな? やっぱケツから生やさねえと尻尾って言わねえよな、ズボン脱いでみて。面倒くせえ、全部脱げ」
「!? ぎんとき……? ひゃあッ、いきなりは、無理だ」
「え、どうやんの? つーかどうやったら尻尾生えんのかなぁ、俺わかんねーなアイタタタタ頭痛えッ割れそう!」
「おいっ!? しっかりしろ! 尻尾は、お、おしりの……」
「え? 聞こえない。耳もやられてんのかなあ」
「おしりの! ぁ、な」
「嘘だ。俺が記憶喪失だからって騙そうとしてる」
「嘘じゃねえ! この、き、機械の、ほうを……おしりの、あな、に」
「ウソばっか。入るわけねえじゃん」
「入るもん! ローション、使って」
「えええヤダ。信じらんない。そんなの見たことない」
「クソッ、こ、こうやって……あん、」
「えっ土方くん自分のケツの穴に指入れてんの!? 信じらんなーい、恥ずかしくないの?」
「うえっ、だって、いつもこう、やって」
「えええ!? いつも自分のケツの穴に指突っ込んでんの!? うわあ変態だ」
「ぐすッ、これで、入、るからっ、ああん!」
「うわーホントに尻から尻尾生えたわ。素っ裸で耳と尻尾って、変態だな」
「ひぐっ、こっ、これでも、思い出さねえか……?」

 カチッ
 ブーーン

「ひゃあああああ! だめぇ、バイブ止めてぇぇえ!」


「おーい今の撮ったか? 撮ったよな、迷惑掛けた詫びに今からこの猫拷問室まで鎖で引っ張ってくからよ、撮り放題でいいぞ。今日のは特別に提出する必要なし。ただしこの後拷問室で俺が土方虐めるシーンは完全非公開。見たものは直ちに粛清する。以上」



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どの段階で記憶が戻ったかはご気分で(笑)
総集編ぽいかも?


くるみ様リクエスト
「W副長で[記憶喪失になった坂田副長。
全員色々あれこれして記憶を戻そうとします。
土方さんも、それプラス夜のご奉仕で
色々、以下同文。 日常に戻って
(言葉責めして)ほしい土方さん、頑張ります]」

リクエストありがとうございました!




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