仮定を立てたら検証すべし


 大人の事情な依頼を終わらせたら、口止め料を兼ねて多めにギャラをくれた。新八と神楽は連れていかなかった仕事だったしギャラは全部俺の懐に入れることにして、俺の暴れん棒が最近ご無沙汰でさみしい思いをしてたから、思い切ってずっと気になってた店に行ってみた。
 嬉し恥ずかしSM倶楽部! 一回来たことあるけど高いんだよね、おいそれと来られないんだよね。合法的かどうか知らねーが手が後ろに回らない環境で、思いっきり尻ぶっ叩いて言葉責めして『銀時さまお願いっ銀時さまの(ぴーー)舐めさせてぇん』て言わせたい!浪漫だよね、特殊性癖? 知るか。他人の性癖に興味ない。
 俺は俺の浪漫に忠実になろうと思いました。作文。

「……なのになんで邪魔すんの」
「はっ? テメェこそ俺の邪魔すんな」
「ひーじかーたくーん。キミの性癖にケチつける気はないけれども、なんでよりによって今日という日を選んじゃったかなァ! 気を利かせろよとりあえず帰れ」
「帰れるかアァァ! 俺は変態じゃねえ」
「イヤイヤイヤ変態とは言わねえよ? でもここにいる時点で特殊なヤり方を好むかただってことは明白なわけで」
「ちげーから! 俺は違うからァァア!」

 土方くんは大人しく順番待ちしてたのに、俺を見て露骨に顔色を変えた。腹の据え方が足りない。知り合いに会うのは俺的には全然おっけーだ。
 ただ、こいつと同じ日に同じ店を選んだっていう、そのことがムカつく。なんなの。俺の真似してえの。友達になりたいの。俺は嫌だ。それにコソコソしようとするところがまたいただけない。しょうがないだろ、会っちまったもんは。狼狽えるくらいなら来るな。嬢に失礼だろ。

「違うってなに。ここですることったらひとつだよね。言い逃れのしようもないよね」
「ちが、俺は……」
「地位のある人ほどこういうプレイ好むらしいよ。だからっておめーの気持ちなんぞわかりたくもねえけど」
「俺だってわかってもらいたくねえし! 真っ平だから! 俺はテメェと違うから」
「違わねえよ。フツーのヤり方が物足りなくて、ケツぶっ叩いてヒィヒィ言わせて鳴かせてえんだろ、ああそうかおめーはいつも沖田くんにぶっ叩いてヒィヒィ言わされてるほうだからたまには言わせる側に」
「そんなんじゃねェェエ! そもそもヒィヒィ言わされてねえから! 誤解だから!」
「いやいや見栄張るなよ、どう見たってドSの餌食になってるだろ」
「餌食ってなんだ!? 好きで餌食になってるんじゃねから!」
「うんうん。だからたまには好きで餌食にしようってんだろ。女のケツぶっ叩いて」
「女のケツから離れろぉぉお!? テメェの頭ん中はそればっかか」
「そりゃあココ来たんだから今はソレばっかですよ? 夢と希望が溢れて垂れ流しになって大変なことになりそうだから来たんだし」
「はっ犯罪予備軍んんん!」
「わかんねえヤツだな、犯罪じゃねえもん。合法的(多分)にSMプレイをだな」


「次のお客様。お待たせいたしました」


 土方のほうがムカつくけど先に来たんだからしょうがない。先に呼ばれるのはしょうがないから、俺は大人の対応で、そこで口を噤んだ。土方は明らかに慣れておらず、キョロキョロしながら案内人についていく。
 そこで俺は重大なことに気づいた。


 そっち、Mな人のほう。


 なるほど。土方はMだったか。そうだな、沖田くんに虐められても嬲られても涼しい顔してるもんな。ドMなんだ。うわあ、変態だ。日頃の鬱憤を晴らすどころか、もっと苛めて欲しくなっちまったんだ。えええ、沖田くんの虐めが物足りないなんて相当なドMじゃねえの。大丈夫なの。いや、手遅れだな、うん。
 どんなプレイするんだろう。

 俺の番まではまだ時間がありそうだ。俺は土方のプレイについて考察することにした。暇だから。

 沖田といえど、上司を縛ることはまずするまい。その辺が物足りなかったのか。縛られたい願望が爆発して、沖田にうっかり『縛って』なんて口走らないためのガス抜きか。それならわかる。めちゃめちゃわかる。ココは客のプレイを隠れて見せてくれるから覗いたことあるけど、M男はパンイチだった。土方は男らしくパンツなんかスッパリ脱ぎそうだ。女王様の命令によるけど。パンツ脱ぎたいのに脱がせてもらえなくて、『お願いしますぅ全部脱がせてくださいぃん』てのもアリだ。あれ、パンツ脱ぎたくて涙を流す土方ってなかなかイイんじゃね。

『お願いしますっ、全部……全部脱がせてくださいっ』
『ダメよ。その薄汚いちんぽを晒すことは許さない』
『じょ、女王様ぁ……お慈悲を』
『逆らうなんてダメな雄豚だこと。お仕置きだから覚悟しな』
『ああああッ、もっと、もっとぶってくださいッ』

 ――悪くない。

 みっともなく泣いて、鼻水垂らしてお願いするとなお可。せっかく穿かせてもらってるパンツがガマン汁でべちょべちょになって、ちんこが透けて見えたらもっと可。

『なんてこと、触りもしないでこんなに濡らして。だらしないちんぽは嫌いだよ』
『ああっ、だらしないおちんぽでごめんなさい! 叱ってくださいッ』
『私に命令する気かい。雄豚の分際で』
『もっ、申し訳ありません! 雄豚なのに女王様様におねだりしてぇ……ひぃん』
『もっと股開きな。お前のみっともないベトベトちんぽをよく見せな』
『ああっ、おちんぽ、俺のいやらしくて汚いおちんぽ見てください! ガマン汁まみれの恥ずかしいちんこ見てぇぇえ』

 ――なかなかイイ。

 土方は恥じらいながらも欲望に勝てず、女王様に股を開く。もちろん女王様はハイヒールで土方のべっとり濡れたちんこを踏みつける。土方は痛みに悶絶しながら射精するんだ。

『アタシに断りなくイくなんて、本当に締まりのないちんぽね』
『ごめんなさいッ、締まりのない淫乱ちんぽでごめなさい! どうかお仕置きをッ」
『じゃあ尻を向けな。もっと、よく見せるんだよ』
『ハイッ女王様、おれの汚いお尻をご覧ください!』

 そんで鞭打ちの刑に遭ってまたイく土方。もっと女王様の逆鱗に触れて、泣きながら女王様のヒールを舐める土方。

 ――ものすごく、イイ。


「スイマセーン、コースの変更ってまだできます?」

 いいこと考えたもんね。スタッフにチップを握らせて、俺は鼻息も荒くお願いをした。

「さっきの客。ここにいた黒髪の、前髪V字型のヤツがプレイしてるとこ見たいんだけど」
「かしこまりました」

 やったーーッ! 金の力は偉大なり。今日の俺は無敵だ。土方のドMプレイを想像するのもイイけど、そりゃあ実物見たいよね。その方が興奮度はるかに高い。土方がビシバシ叩かれてヒィヒィ喜んでるとこ見たら、銀さんの暴れん棒だってしばらくは残像で満足できるってもんだ。あれ? 土方の残像で? 違う違う、『俺の嫌いなヤツが辱めを受けている図』でヌけるってこと。え? お姉さんじゃダメなの。うーん……お姉さんより土方だな、うん。せっかく大枚叩くんだから、欲望には忠実にならなきゃ。二度とこんな機会はないに違いないから、しっかり目ん玉に焼き付けておこう。何を? 土方の無様な姿をだ。決して痴態じゃない。結局ヌくんだから痴態とも言うんだけど主たる目的はそっちじゃなくて、土方が泣き叫びながらガマンできなくてイくとこが見たいだけだから。あれっ結局同じなの。土方がイくとこ見るの。うん、それは見なきゃダメだ。画竜点睛を欠くって昔の偉い人が言ってた。土方が悶えながらイくとこは必見だ。

 女王様に確認を取るので少しお待ちを、って言われて、俺はソワソワしながらその時を待った。俺の中で土方はもう一糸纏わぬ姿にされて、手を縛られ天井から吊るされて、片脚もギッチギチに縛られて天井に括り付けられ、大股を広げさせられていた。それでも触って貰えず泣く土方。お願い、おちんちんに触ってくださいって言って、女王様にちんこ鞭打ちの刑に遭って絶叫しながらイく土方……。

 ――俺がぶっ叩きてえ。

 ヒィヒィ泣くのは無視して尻に鞭の跡がつくまで叩きまくって、従順になってきたところで飴をやるんだ。ちんこを優しく撫でてやる。土方は涙を流して感謝するだろう。ありがとうございます、雄豚の汚いちんこを銀時さまの手で慰めてくださってありがとうございます、って言うんだ。やべえ俺のちんこがギンギンになってきた。つうか未だ嘗てない元気さだ。いくら最近ご無沙汰だからってこれは酷い。服着てるのが辛いくらい痛い。早く開放してやらないと銀さんの銀さんが大変なことに……



「御用改めである。入口は封鎖した。従業員も客も一列に並べ、許可なく外に出ることは一切まかりならん」



「……」
「テメェもだ万事屋ァァァア! テメェは真っ先に調べてやる! 俺はっ、俺はなぁ! 仕事で来てんだよ変態ぃぃい!」
「……」


 そっちの可能性、すっかり忘れてマシタ。
 そっか、そういうことか。そうだよな土方が私服でSM倶楽部にいたら真っ先にそっちを疑わなきゃいけなかったよ、何やってんだ俺のバカ。ちんこ痛い。

「身体検査するからそのダラしない着流し脱げ。あ、いいわ俺が脱がすから」
「脱がす!? いやらしい」
「だ、か、らッ! 捜査! 捜査だっつってんの!」
「脱がせれば? どーぞ脱がしてください? そんで何にも出てこなかったらどうしてくれんの」
「釈ほ……」
「尺? そんなんじゃ銀さんの銀さんは言うこと聞かないからな。プレイしに来たくれえ溜まってんのにテメーの尺なんかじゃ収まりつかねえから!」
「だァァれが尺するっつったよ!? しゃ、く、ほ、う!するっつってんだ!」
「尺? 棒? そうだな、俺は穴舐められんのは好みじゃねえし、でも棒だけじゃダメだから。キンタマもナメナメしろよ」
「話を聞けよォォオ! もうヤダこいつ!」
「またまた。嫌な奴のちんぽとタマを無理やりナメさせられるのがイイんだろ、わかってるってこのドM」
「何ひとつわかってねえよぉおお! おい山崎、こいつの身体検査お前が」
「嫌だ! 土方クンじゃないと捜査には応じマセン。任意だよねコレ、捜査状ないよね!?」
「鼻息荒ッ! 気持ち悪ッ!?」



 真選組の麻薬取締捜査の一環で、土方はこの店担当だったんだそうだ。この界隈を一斉検挙するんで、私服の隊士が散り散りにこの辺の店に張り込んでたんだって。人手が足りなくて、ここは副長自らが潜入したらしいけど大丈夫なの真選組。
 そんなの俺の知ったこっちゃない。もちろん俺はシロで、直ちに解放されて表にほっぽり出された。でも諦めないから。

「土方くんのハダカの尻を引っぱたくまで、俺諦めないからっ」
「へへへ、変態ィィイ!?」

 だってあそこまでリアルに想像しちゃったんだもの、もう後には引けない。銀さんも、銀さんの暴れん棒も引き返すことなんてゼッタイにできない。他人にぶっ叩かせるくらいなら俺がする。俺が俺好みの縛り方して、俺好みに土方を泣かせる。そのほうが何倍もいい。銀時さまお願い、なんて言われた日にゃ俺の暴れん棒は暴発だ。あれ、目的なんだっけ。土方を痛めつけて悔しがらせることだっけ。そんなのもういいや、土方が泣いて俺に縋り、俺はその唯一の救いとして土方に優しく触れる。土方は泣いて、銀時さまありがとうございますって言って俺の言うことを素直に……
 あれあれ。なんか方向性違ってきてなーい?
 もういいや、方向性なんて知るか。俺は俺の浪漫に忠実になろうと思いました。作文。途中で邪魔が入るからおかしなことになるんだ。それだけだ。
 土方が辱められて泣くところを想像したら興奮する。もちろん土方の汚点を後からチクチク弄るのも楽しいし、痴態をそのまま堪能するのも楽しい。どっちがいいかって言われたって甲乙つけがたいんだからしょうがない。
 さすがにこれはしょっ引かれるかなぁ、と呑気に考えながら、俺は土方の尻をひと撫でしてその場を立ち去った。そのあとで土方がへなへなとその場に座り込んだのは、俺の知るところではない。



「副長、立ってください。まだ容疑者山ほどいるんですから」
「――お前、全部やっとけ」
「えええ!? ひと晩かかっちゃいますよ! ちょ、副長!? どこへ」
「うるせーーーッ! 厠だっ、しばらく話しかけんな!」
「副長、もしかして尻撫でられて……」
「イってねえし! 別にッそういうんじゃないから! うわあああああん」



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イっちゃった、かも(笑)

E様リクエスト
「似てる二人があはんな店で遭遇する話」

近々王道ソー○°でもかち合います。
似てる二人だからしょうがない。
リクエストありがとうございました!




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