余人を以て代え難く(ホストパロ)


 金時の一日は昼過ぎに始まる。
 売れっ子ホストの金時は、起きるとすぐにメールチェックを始める。俺はたまにしか泊まりに行かないけど、金時をうちに泊めても同じことだ。
 うちは母親しかいないし、たまに夜勤に行くからそういうときに金時を呼ぶ。でも金時は忙しくて都合が上手く合わないから、呼べることは滅多にない。そんな貴重なひとときでも、金時はメールを欠かさずする。俺は遅いランチを用意しながら、金時がメールし終わるのを待つ。

「ごめんね。もう終わるから」
「いいから。ゆっくりやれ」
「うん……ごめん」

 金時のメール相手は女性客だ。テンプレな文面は作らないんだ、と前に金時は言いにくそうに俺に打ち明けた。ひとりひとりへの文面を丁寧に考えて、心を込めて返信する。金時からメールすることもある。売れっ子の地位をキープするために必要な作業だから文句なんて言えない。

『いっぱい稼いで十四郎に美味しい物食べてもらうからねっ』

 金時は俺を抱きしめながらそう言ってくれた。ホストを恋人にしたんだ。そんなことでヤキモチを妬くのは間違ってると思う。大丈夫、金時は俺を大切にしてくれる。きっと、お客とは違うやり方、のはず。

「そんなこと誰にでも言うに決まってるじゃありやせんか、バカじゃねーの」

 総悟は真顔で言ってのけた。ぶん殴ろうとしたら逃げられた。代わりに山崎を殴っておいた。

「ひどい! 俺まだ何にも言ってないのに!」
「まだ?」
「だって……ホストは決まった恋人なんか作らないって聞きましたよ。作ってる暇ないって」
「誰に聞いたって?」
「テレビですすいません! 人じゃないですけど! でも納得できますよ」
「現に俺がつき合ってる」
「ホストって男だろ。トシなんか勘違いしてない?」
「するか! アンタと一緒にすんな」
「ええ!? お妙さん女の子だし、勘違いじゃないもん! お妙さん俺のこと好きだもん」

 クラスメイトには全然信じてもらえないけど、金時は俺の恋人だし俺はちゃんと愛されてる。もちろん俺の気持ちは言うまでもない。
 金時に俺のバカ友達の話なんかするつもりはなかった。でも俺の様子がいつもと違うのは金時にはお見通しで、気がつけば洗いざらい聞き出されてた。

「そっかぁ。ま、そう思われてもしょうがない、ホストなのは間違いないんだし」

 金時は笑ってくれたけど、俺は申し訳なくてなんで喋っちまったんだ俺のバカ、と自分を呪った。

「十四郎が信じてくれればそれでいい。大好きだよ。十四郎だけ」

 俺だってその言葉が聞ければそれでいい。それだけで幸せだ。金時に抱きつけば、いつだって金時は優しく抱き締めてくれる。キスもしてくれるし、その後も。俺はあんまりそういうことをしたことがなくて、金時にされるがままだけど。

「そりゃ高校生でエッチしまくりじゃ俺が困る。十四郎は知らなくていいの。俺が教えてあげるから。ね」

 ベッドの中でそんなふうに囁かれたら腰だって抜けるってもんだ。金時は俺を扱う手も本当に優しい。優しすぎて俺はいつも泣いてしまう。金時とひとつになるとき、俺は初めてだったから怖くて大泣きして金時にしがみついてしまった。金時は時間をかけて慰めてくれて、痛くしないって約束してくれた。少しだけ痛かったけど、俺はちゃんと金時を受け入れられて、嬉しくてまた泣いた。金時は俺が泣き止むまで辛抱強く待ってくれた。
 でも、金時とそういうことしたのはほんの数回だ。金時は忙しい。夜は特に。当たり前だ、金時は夜に働いているんだもの。


 高校二年の文化祭シーズンがやってきた。委員会の仕事も、クラスでやる出し物の担当も決まって準備に追われる毎日。金時が来てくれたらいいな、なんて思うけど、金時が来たら女子がとんでもない勢いで群がるだろうし、それは嫌だ。嫉妬、とも違うような気がする。あんなに綺麗なひとを、うちの学校の女子みたいな肉食系に晒したくない、みたいな。金時には綺麗でいてほしい。あの金色の髪のように、キラキラと。だから誘いたいけどちょっと悩む。
 なんて金時のことを考えていたら、女子に呼び出された。もうほんとやだ。俺には金時がいるのに。

「で、告白されたの」
「やだって言ったのに! 女子の仲間がつるんでて、聞くだけ聞いてやれってうるせーんだ」
「で、されたの」
「……された。でも断ったから!」
「わかってる」
「なあ……金時とつき合ってるって、やっぱり言っちゃダメか?」
「ダメ」

 つき合い始めた頃から金時は、自分とつき合ってるって学校で言っちゃだめだよ、としつこく念を押してきた。

「まさか高校生がホストと繋がってるとは思わないけど、万が一ってことがあるし。お姉さんがうちの客だったりしたら、ちょっとまずい」

 と、金時は珍しくむつかしい顔で俺に言い含めた。

「特定の恋人がいるとね、いろいろ面倒なことが起きるんだ。ごめんね。内緒にすんの、俺も嫌なんだけど」
「いいよ。金時の仕事、邪魔したくない」
「……ごめんね」

 わかってる。俺のことが金時の客の耳に入ったら、金時の売り上げが落ちてしまう。売れっ子が売れっ子でなくなったら、店の中で金時の立場が悪くなる。金時が辛い目に遭わされるのは嫌だ。それくらいなら、俺はずっと黙ってるべきだ。
 でも、たまに俺に告白してくる女子がいるとなんだかげんなりするんだ。俺には金時という、誰よりも綺麗でかっこいい恋人がいるのに。寄ってくんなって思う。
 それに金時は俺が女子に告白されたと知ると少しだけ機嫌が悪くなる。俺に何かをするわけじゃないけど、黙っていることが多くなったり、口を開いても言い方がほんの少しきつくなる。それが悲しい。

「十四郎、学校にアクセサリーってしていける?」
「だめだろうな。女子がよく没収されてるし」
「そっか。そうだよな、俺の高校もそうだったもんな」
「なんで」
「もう。鈍感。虫除けにプレゼントしようと思っただけ」
「えっ。何を」
「指輪だろ、そこは」

 金時は俺の左手を取り、そっと薬指を撫でた。それでやっとわかって、赤面する。わかんない俺のバカ。それに、金時がそんなこと考えてくれて、嬉しい。
 でもこんなことはお客にだっていうのかもしれない。俺と出かけた時だってしょっちゅう金時のケータイは鳴る。そうすると金時は俺から離れて、三十分でも四十分でも話し込んで戻ってこない。離れるのはお客との会話を俺に聞かせないためだし、俺を気遣ってくれるからこそ離れていくんだってわかってても、さみしくなるのだけは止められない。金時の仕事の邪魔になっちゃいけないのに。さみしいなんて、思いたくないのに。


 文化祭準備期間はどういうわけか、周りが急に彼女持ちになる。総悟はチャイナとしょっちゅうケンカしてるけど、俺たちから見たら両想いなのは一目瞭然だ。山崎でさえいつの間にかたまとかいう彼女ができてた。近藤さんは相変わらず志村姉一筋で、これはつき合ってないしこれからもつき合わないと思うけど、頭の中は恋一色だ。

「土方さんもいい加減現実見なせェ。顔『だけ』はいいんですから、その辺の女子騙くらかして食っちまえばいいじゃありやせんか」
「だけってなんだ!」
「そんで食い散らかして嫌われろィ。憎まれて後ろから刺されりゃいいのになあ」
「総悟は言い過ぎだけどトシは彼女作ったほうがいいって。俺に構わず先に行ってッぐすん」
「いやもう先に行ってるし」
「またホストのカレシですか。違いますって。つき合ってないですよそれ」
「黙ってろ山崎のくせに」
「くせにって言いますけど! 俺はたまさんという彼女いますから。今年はたまさんと回るんだー! ぎゃああああ」

 やっぱり山崎をぶん殴った。
 金時のことは本当はこいつらにも言っちゃいけなかったのだろうけど、金時に止められる前に俺はもう喋ってしまった。金時に初めて会ったときから俺はもう金時が好きだったし、いつも一緒にいるこいつらには隠しようもなかった。イジられ、冷やかされながら俺はとても綺麗な金髪を持つ男のことを話した。それからいろいろあって金時とつき合えることになって、その嬉しさが隠せるわけもなく、こいつらにはすぐバレた。
 こいつら以外には金時のことを言っちゃいけないんだから、文化祭に金時を呼ぶなんて悩む余地もなくできっこなかった。そんな当たり前のことに俺はしばらく気づかなかった。俺は本格的にバカになってしまったのかもしれない。

 文化祭当日、俺たち風紀委員は交代で校内をパトロールした。担当じゃない時間は多く、総悟たちはそれぞれに思い思いの相手と過ごしている――総悟はチャイナと模擬店荒らしをしてるとしか思えないけど。近藤さんも志村姉に吊るし上げられて喜んでいた。

「土方先輩、お一人でございまするか」

 松平栗子に見つかってしまった。この子は体育教師の娘で、下手に手を出すと親父が激怒して怒鳴り込んでくるし、素っ気なくしても親父が難癖つけてくる、超厄介な女子だった。本人は悪い人間じゃないのかもしれないけど、もはや本人がどうって問題じゃない。俺は一度この子に告白されて断り、親父に学校中追い回されたことがある。

「お父様は黙らせたでございまする。よかったら今日は私とご一緒しませんか」
「……黙らせたのかよ」
「私の交際相手にいちいち首突っ込むなでございまする! マジウゼーでございまする」
「つき合わねーぞ」
「わかってるでございまする」

 誰かを連れ歩かないといけないわけでもない。でも親しい友達はみんなどっかに行ってしまった。することもなく、学校はお祭り騒ぎだというのに疎外感は否定できない。
 金時にメールしたいな、と思ったけど、俺は金時のことばかり考え過ぎる。これじゃ金時にも迷惑だ。少しは自分の生活にも目を向けないと。自分を見てないから、金時がお客にメールしたり電話したりするのが気になるんだ。金時の仕事を邪魔しないように、俺は俺の生活をしよう。
 今日だけだから、と松平にしつこく念を押して、俺は彼女の申し出を承諾することにした。



「ねえ十四郎。俺に言うことあるよね」

 その夜金時が珍しく俺を呼び出した。嬉しくて急いで待ち合わせ場所に行ったら、金時はじっと俺を見て、重々しくそれだけ言った。怒ってるみたいだ。

「え……会えて、嬉しい」
「そうじゃなくて。俺も嬉しいけど」
「あれ。今日仕事は?」
「休み。そんなこと気にしなくていい」
「でも……なんか怒ってるか?」
「うん。怒ってるよ」

 それから金時は大きなため息を吐いて、今晩泊まりに来られるか、と尋ねた。

「いいけど。じゃあ一度帰って用意してくる」
「いい。そのまんま来い」

 親にメールで『友達んちに泊まる』とだけ知らせて、金時について行く。歩いたのはほんの五分くらいで、金時はタクシーを捕まえた。タクシーなんてあんまり乗ったことなくて、金時が先に乗るもんだと思って見てたら強く押されて先に押し込まれた。
 行き先を言って金時は黙り込んだ。外の景色も気になるけど、金時のほうがずっと心配だ。こっそり手を握ろうとしたら露骨に引っ込められた。外ではダメってことかな。

 金時のマンションでも、部屋に着くまで金時は無言だった。明るい照明の下に出て初めて、俺は違和感に気づく。

「金時っ」
「……」
「その髪! どうしたんだよ」

 綺麗な金色の髪が、明るい茶色に変わっていた。茶髪も似合うけど、俺は金色のほうがいい。

「後で染め直す。店のスタイリストにやってもらうから大丈夫」
「染め……金髪は?」
「地毛だけど、たまに発色良くなるように染めてる」
「え、知らなかった」
「うん。言ってないもん」
「……」
「十四郎、金髪気に入ってたでしょ。染めてんだって言ったらがっかりされるかなって思って」

 確かに好きだったけど。でもそれは金時の髪だから好きだったんであって、嘘吐かれてたのがショックだ。それに、俺が気に入ってたからって。じゃあ、それは、

「……俺の好みだと思ったから、金髪にしてたのか」
「もともと金髪だよ。でもこんなキラキラするわけないだろ。十四郎はキラキラしてるほうが好きだろうと思って」
「俺の好みに、合わせたのか」
「そうだよ。俺はホストだからね。気に入られるためなら髪の色くらい変える」
「俺は客じゃない!」

 ちょうど金時は部屋のドアを閉めたところだった。ガチャ、と冷たい音がして、鍵を閉めたんだなとわかる。でも帰りたい。一秒でも早く、ここを出たい。

「客じゃない……と思ってた」
「客じゃないよ。十四郎は店に来たことないもの」
「そうじゃなくて! 金時は俺が……好きじゃないのか」

 やっぱり総悟たちの言う通りだった。舞い上がってた俺が馬鹿だった。ホストは恋人を作らない。山崎の言う通りだった。涙なんか出てきてカッコ悪い。金時に嘲笑われる前に、本気でお前とつき合うと思った?なんて言われる前に、ここを出たい。
 金時はまた、重いため息を吐いた。

「その前にさ。なんで俺が茶髪にしたか、聞いてくれないの」
「知らねっ、どうせ、他の誰かの好みなんだろっ」
「違うよ……あんなド派手な金髪じゃ、高校に潜り込めないでしょう」


 一瞬だけ、煮えた頭が冷えて涙が引っ込んだ。予想外過ぎてなんのことかよくわからない。俺はぼやっと金時を眺めた。


「今日、文化祭だったでしょ。十四郎教えてくんなかったけど」
「だって。来られないだろ」
「バラしちゃダメって言ったの俺だしな。でも見たかったんだよ。遠目でもいいから」
「え……」
「一緒にいられなくてもいいから、十四郎がどんな学校生活送ってるのかなって。こっそり見に行った」
「……あ、」
「そしたら十四郎が、可愛い女の子と仲良く歩いててさあ。たまたまかなって見てたら、なにあれ。なんで一日中くっついてんの」
「あれは! 一日中って、」
「十四郎こそホストと真面目につき合う気なんかないんじゃないの。俺は好きだよ。十四郎だけ。言ったはずだけど」
「……」
「信じられなかった? まあ、しょうがないか。俺、ホストだし」
「ちが、」
「ホストやめようかな。十四郎がいないんじゃ、頑張る意味ない」

 見に、来てくれたんだ。
 俺はすっかり諦めて、金時は来ないものだと思ってたのに。髪の色まで変えて、無理して来てくれたんだ。胸がいっぱいになって、また涙が溢れてくる。

「ごめんなさい……っ、来てもらうの、諦めてた」

 金時は黙って俺の顔を撫でてくれた。優しい、あったかい手。大好きなのに。

「あの子は……今日だけ、一緒に回ってくれって、言われて」
「体育教師の娘だっけ。松平栗子ちゃん、だよね」
「!? なんで」
「前に十四郎が言ってたから。顔は、まあ想像通りだったな。よく見てるね、十四郎の言ってた通りだった」
「……」
「俺ホストだもの。女の子の顔は覚えてるよ、見たことなくても見当くらいつくさ」
「きんとき、」
「すっげー嫌だった。他の女に十四郎取られるかと思ったら、腹わた煮えくり返った」
「……」
「すぐ十四郎と引き離そうかと思ったけど、高校の中だしね。それくらいは、理性働いてよかった」
「……いいのに」

 本気で引き離しに来てくれればいいのに。だいたい金時がバラしちゃダメだって言うから、ああいうのがくっついて離れないんだ。松平には悪いけど、きっぱり断ったのになんでまだ話そうって気になるのか俺にはわからない。金時にフラれたら、俺は二度と金時に話しかけられないと思う。想像しただけで涙が溢れて止まらない。

「良くない。十四郎、まだ高校生なんだよ」
「だからなんだ! ガキだからっ、本気で好きにならないってのか!」
「そうじゃない。高校にホストと交際してるなんて知れたら、進路も進学も、ダメになるだろう」
「!」

 俺の、ためだったのか。
 お客にバレないように用心してるって言ってたのに。嘘、だった。しかもこれは、優しい嘘。

「きんとき……っ」
「ごめんね。俺、意外と独占欲強いみたい。自覚なかったわ」
「そんなの! もっと早く言えっ」
「そうだね。ごめん」
「きんとき、好き……っ」

 涙でぐしゃぐしゃの顔だけど金時に抱きついたら、金時は苦しいくらい強く抱きしめてくれた。いつもの優しい手じゃなくて、少し乱暴なくらい強く。

「ほんとは十四郎に同級生の恋人ができたら、絶対引き止めないようにしようって決めてたんだ」
「やだっ、離れない!」
「俺も。離せなくなっちゃった。金髪じゃない俺でも、好きでいてくれる?」
「そんなの……当たり前だろ、俺は金時が好きなんだ。髪の色なんか、関係ない」
「可愛い女の子が告白してきても?」
「俺は金時じゃなきゃ嫌なんだ。わかれよっ」
「行かないで。どこにも」
「行くわけっ、な」

 言葉の途中で金時の唇に口を塞がれた。いつもと違う、体ごと吸い尽くされそうなキス。どうしていいかわからないけど、俺も必死で応える。伝わったかな。俺も金時がいなくなったら、どこにも行けないって。

「ホスト、やめちゃうの」
「うーん……すぐには難しいけど」
「高校卒業したら、一緒に住んでもいい?」
「嬉しい。じゃあそれまでに昼間の仕事見つけて、もっと十四郎と一緒にいられるようにする」
「うん……」
「いや?」
「俺のせいでホスト辞めるの」
「そうじゃないよ。俺が十四郎のために辞めたいの。女にメールしてる間十四郎待たせるの、俺ももう嫌だ」

 金時の腕の力がもっと強くなる。金時の声が、耳だけじゃなくて体を通って聞こえてくる。いちばん近くにいる、って実感できる。

「十四郎何にも言わないんだもの。気を遣ってくれてるんだろうなって思ってたけど。もしかして俺にそれほど興味ないのかもって心配になってさ」
「そんなわけないだろ……もしかしてそんでガッコ来たのか」
「うん。誘ってもくんないし」
「でもなんで文化祭の日程が」
「そりゃ調べるよ。好きなコのことだもん、必死で調べるに決まってる」
「……そっか」
「十四郎は? 俺がメールとか電話とかしてても平気なの」
「平気じゃない。平気じゃないけど、金時の仕事だから、邪魔しちゃいけないって」
「……っ、ごめんね。我慢させちゃって」
「金時の邪魔になるくらいなら、我慢なんてなんでもねえ」
「我慢してたんだ。やっぱり」
「あっ、それは! 我慢ていうか、や、我慢すんのが嫌な訳じゃなくて、」


 金時はやっといつもみたいに笑った。それから、またたくさんキスしてくれた。

「俺も、十四郎のためならなんでもする。ホストやるの嫌いじゃないけど、十四郎に嫌な思いさせるほうが辛い。だから、新しい仕事探す」
「でも、」
「ホストって一生できる仕事じゃないんだよ。若いうちだけだもの。そろそろ次のこと考えなきゃってわかってたんだけど、十四郎のおかげで踏ん切りついた。約束する、卒業したら昼間の仕事してる俺と一緒に暮らそう。大事にするよ、一生」


 金時の言葉は嘘じゃないって、誰が信じなくても俺にはわかった。だから俺は頑張って、俺から金時にキスをした。
 金時はびっくりしてたけど、優しい笑顔になった。その顔が、何よりも好きだ。
 幸せだ、俺。



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志眞様リクエスト
「ホスト金時と学生土
/付き合ってるけど金時に気を使って
(女性客が気になって)遠慮しまくる土方くんを
自宅に呼んでドロドロに甘やかす」

リクエストありがとうございました!




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