山崎退の受難


【山崎退の観察(×監察)日記】

○月▲日
 副長が旦那とつき合い始めたらしい。
 もちろん副長は何も言わない。でも旦那が浮かれて俺にペラペラしゃべった。俺が急ぎの報告のため副長を探してたら珍しく副長が団子屋にいて、横には旦那がいて、旦那は命知らずにも副長の前でペラペラと俺に自慢してきた。挙句『ちょっと土方借りてくねー!』などと宣い意気揚々と副長の手を取った瞬間、旦那は副長にフルボッコにされた。合掌。


○月□日
 あれから旦那は副長にベタベタしなくなった。
 旦那が一人のときに、大丈夫なのかと聞いてみた。前回の様子を見るに、旦那はどこでもかしこでも副長のカレシとして周囲に見せつけたいタイプなんじゃないかと思ったからだ。でも意外にも、『何が?』とキョトンとされた。あれ、大丈夫みたいだな。やせ我慢?

○月■日
 月末だというのに沖田隊長が副長の部屋にバズーカをぶっ放した。月末締めの書類が結構あったのに……書類は無事だったが副長の部屋の廊下側が完全にイカれて、吹きさらしになった。
 局長が『万事屋に直してもらえばいいじゃん』と言いながらニヤニヤしたけれども副長はニコリともせず、『民間業者を無闇に出入りさせるな』と却下して、指定業者を呼んだ。旦那に安く直してもらえばいいのに。勘定方が修繕費足りなくて頭を抱えていた。

▲月○日
 今日は副長と見廻りだ。憂鬱だ。副長は最近いつにも増してケンカっ早いからだ。今日も路駐のバイクのせいでパトカーの横を擦り、怒り狂った副長は拡声器でバイクの運転手が出てくるまで怒鳴り散らした挙句、観念して出てきたドライバーをボコボコにした。もちろん出てきたのは旦那で、バイクも旦那のだった。見ればわかるよね。拡声器いらないよね。バイクはチャイナさんが勝手に持ち出したらしい。無免のほうが罪重いと思ったが黙っておいた。
 旦那はやり返しもせず、ひたすら謝り、副長の気が済むまでぶん殴られてた。ちょっと気の毒だが本人が幸せそうだからこれも黙っておいた。

▲月◎日
 つき合い始めたのは旦那によると先月らしい。でも自分が見る限り、副長の態度は先々月と先月で変わりはない。
 旦那が屯所に来た。今までも勝手に来たことはけっこうあったはずだ。俺が不覚にも万事屋一行に騙されて、蚊みたいな天人対策として連れてきてしまって以来、万事屋は仕事がなくなると屯所に押し売りに来ては勝手にどっかを修理したりして請求書を叩きつけてくることがあった。今まで副長は文句を言いつつも黙って支払ってたはずなのに、最近は押し売り仕事はもちろんさせないし、旦那を屯所に入れさえしない。
 今日の旦那は局長の個人的な用事で呼ばれたようで、着くや否やまっすぐ局長室に行って二時間くらい出てこなかった。副長は一切顔色も変えず、旦那が来てることなんか忘れたみたいに普通に見廻りに出て行った。

▲月●日
 昨日から副長の荒れ方がハンパない。
 まず鉄がやられた。マヨネーズの買い出しを頼まれた鉄は、カロリーハーフをしこたま買ってきた。そして今日はカロリーハーフな気分じゃないと言う副長に素振り千本追加された挙句、立合い稽古と称する私刑を食らって泣いていた。
 沖田隊長が例によって嫌がらせをして、副長のおかずにタバスコをかけまくった。副長は黙って俺の皿と取り替えて、あんなに貶したカロリーハーフマヨをかけて食べ終えた。もちろんすり替えなど知るわけもない俺が爆死したのは言うまでもないが、いたずらをスルーされた沖田隊長もポカーンとして、なんだか寂しそうだった。

▲月○日
 副長がますますおかしい。局長とさえ口を利かない。必要最低限は話すけれども、今日局長がなんの脈絡もなく『お妙さんがさぁ』と言い出したら副長は黙って立ち去った。
 相変わらず旦那とは喧嘩ばかりに見える。今日の副長は歩いて見廻りだったが、旦那とバッタリ出くわした。旦那は『偶然だね』などと言って微笑んでいるが果たして本当に偶然なのか。副長は嫌そうな顔をして、仕事中だから、と立ち去ろうとした。旦那はごめんね、とえらく殊勝なことを言いながら見送った。このお人が謝るところを二度も見るなんて驚きだ。恋は人を変えるんだなぁなどと感心していたら、副長がいきなりキレた。キレポイントが全くわからない。哀れ旦那は、理由もわからず副長にボコボコにされたがやっぱり幸せそうだった。

■月×日
 副長は久々の非番だ。昨日の夜からいないけれども、行く先はきっと万事屋だろう。今日は平和に過ごせそうだ。

▲月▲日
 昨日の強風で、屯所の庭に生えてる植木が何本か折れた。植木屋は忙しくてすぐには来られないとのことだ。副長に報告すると、しばらく考えて『万事屋を呼ぶ』と言った。『呼べ』ではなくて『呼ぶ』なところがポイントだ。俺が呼びに行くんじゃないのかどうか、そこは大事なところなので聞き返すとぶん殴られた。どうやら自分で呼ぶらしい。信じられない。

▲月△日
 昨日から旦那が一日中屯所にいる。そして信じられないことに、真面目に仕事をしている。さすがに本職の植木屋じゃないから、手早くといっても限度があって時間がかかるのは仕方ない。時間をかければそれなりに仕上げる旦那の器用さのほうが特筆すべき事項だと思う。鉄がときどきお茶を出しているようだ。二人で『ブラザー』とかなんとか言って盛り上がっていた。
 偶然かもしれないが鉄はその日副長の報告書を松平公に届ける任務を言い付けられていた。先方の都合で夕方に行くことになったと、俺も聞いてる時に副長に報告していた。鉄が旦那に三時のおやつを出し、またラップ談議に花を咲かせていると突然副長がキレた。さっさと行けと怒鳴られた鉄は、夕方に行くことを副長に思い出させようとしたが火に油を注ぐだけで無駄であった。旦那はちょっと肩を竦めて仕事に戻った。副長は旦那にも何か言うつもりだったのだろうが、肩透かしを食った形になって、旦那の背中を睨みつけていた。

▲月×日
 副長がまた非番を申請した。珍しい。先月末に休んだばかりなのに。

▲月◎日
 副長が連休を取った。またかよ。

■月▲日
 最近副長の機嫌がいい。局長ともとっくに仲直りしたようだ。お妙さんの素晴らしさについて語る局長の無駄話に、うんうん、と親身になって聞いている。ストーカーを増長させる真似はやめてほしい。

■月○日
 今日は副長と見廻りだった。途中で旦那を見かけた。旦那はケーキ屋のショーケースに張り付いていて、周りなど見えていない、むしろ邪魔な物が視界に入ったら排除しそうな勢いであった。先日のことを思い出した俺は旦那が副長を見つける前に方向転換をしようと試みた。
 ところが副長はそっと旦那の背後に回り、旦那に手で目隠しをした。それどころか『買ってやろうか』などと口走った。ケーキの観察を邪魔された旦那は確実に殺意を抱いた様子だったのに、副長の声を聞いた途端にデレデレとだらしなく口許を緩めた。土方はケーキ食べないよな、ケーキはやめてお前の好きなもん買おう、そんで一緒に食べようなどとうすら寒いことを言う旦那に、副長は鼻で笑ったがまんざらでもない顔をしてマヨネーズを買いに行った。旦那はマヨラーに宗旨替えしたのだろうか。まさか。

■月×日
 また副長が休暇を取った。いいんだけど。

■月◎日
 休暇明けに副長に判子をもらいたい書類があったので、揃えて副長室に持って行ったら旦那がいた。眠ってるから静かにして、と言われた。そして副長の髪を優しく撫でてた。ここ屯所。

■月■日
 潜伏先から戻って副長に報告しようと副長室に行くと、旦那の声がした。今日は帰ると言っているが、副長は『庭でバーベキューするから下拵え頼む』とか言ってた。え、そうなの。バーベキューするの。俺聞いてないんだけど。報告しようと声をかけて障子を開けたら、旦那の膝に副長が乗ろうとしてるところだった。副長は俺の報告を聞く気はないらしく、『報告書にまとめてこい』と言われて部屋から追い出された。

□月●日
 最近屯所内バーベキューが多い。万事屋一家も必ず紛れている。副長は旦那の横が定位置だ。局長すら近寄れない。
 夜、鉄が布団を副長室に運び込んでいた。沖田隊長が呼び止めて、布団の中に盗聴器を仕込んでいた。

□月△日
 沖田隊長が手招きするので、嫌な予感がしつつも行ってみるとUSBを渡された。音声データだから文字に起こせという。もう嫌な予感しかしない。でもやらないと俺の命が危ない。助けて副長。
 でもその副長は旦那と修学旅行よろしく副長室で布団並べて仲良く眠ってるので、助けを求めることもできない。山崎退人生最大のピンチ。

□月▲日
 文字起こしをした。転職しよう。



【山崎退による音声データ文字起こし】
坂=坂田 土=土方

(雑音/布団の音か?)
土「泊まってくよな」
坂「うーん……あんま神楽一人にすんのもなぁ」
土「チャイナもここに泊めれば良かったのに」
坂「無理。あれでも年頃の娘だぞ」
土「チャイナに敵う隊士はいねえ」
坂「いちばんヤバイのがいんでしょうが。お宅のドSと一つ屋根の下に寝かすわけにゃいかねーよ」
(静寂)
坂「泊まれねえけど、十四郎が寝るまではいるよ。心配しないで」
土「やだ」
坂「十四郎」
土「目が覚めたらお前がいないなんて……やだ(涙声)」
坂「俺もさみしいよ。けど」
土「泊まれ。泊まんねえと斬る」
坂「ええー。嫌だ(クスクス笑い)」
土「嫌か」
坂「今斬られちゃったら、十四郎と一緒にいられなくなっちゃうから嫌だ」
土「そっちか……俺も、それは嫌だ」
坂「十四郎は、こういうのが出来なくなるのが嫌なんでしょ」
(ゴソゴソ音。布団が動く音?)
土「んあっ……!ちが、」
坂「かわいい」
土「ぎんとき……っ、まだ、早、」
坂「泊まってく。じっくりしていい?」
土「あっ、帰ん、ねえっ……?」
坂「帰れねえ。こんなんなっちまった」
土「は……っ、おっ、きい」
坂「な。帰れねえよ」
土「うんっ、帰、んねえ、で、はぅっ」
(ちゅうっ、と何かに吸い付く音)
坂「おめーのお願いじゃあ、聞かねえわけにいかねーだろ」
土「良かった……ぎんとき」
坂「なあに」
土「今日、近藤さんとしゃべったか」
坂「しゃべってねえかな」
土「鉄、は」
坂「おめーの前以外はしゃべってねえよ」
土「……山崎は?」
坂「誰だっけソレ」
土「そうか。そうだな。ふふふ」
坂「ずっと一緒にいたじゃん」
土「だって銀時、いろんな奴と仲良いから」
坂「仲良いって、依頼人とはそりゃ少しは……」
土「やだ。少なくとも俺の知ってる奴とは仲良くすんな」
坂「わかったわかった。もうしない」
土「ほんとか? ぁ、」
坂「ほんと。それにそんな心配しなくても、こんなことすんのは十四郎だけだろ」
土「あっ……ぁ、そこ……っ」
坂「十四郎のキモチイとこ知ってんのも俺だけだろ。それとおんなじ」
(ちゅうっ)
土「あ、んんっ……はあ」
坂「な? わかった?」
土「わか、んねえっ、もっと、わからせてっ、ああ! ずっとここにいて……っ」




「沖田隊長。限界なんですけど」
「任務完了してねえのに?」
「以下エンドレス繰り返しです」
「ま、だろうな」
「じゃあそういうことで。ほんともう勘弁してください、毎日毎日報告書持ってくたんびにイチャイチャひっついてる二人見るだけでダメージ大なんですから」
「だがこれでひとつハッキリしたろィ。旦那が押しかけてきて居座ってんじゃねえ、土方さんが引っ付いて帰さねえんで仕方なく旦那は連泊してんだ」
「そうだとしても……旦那がそう仕向けたとしか思えませんけどね、俺には」




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その通り。
近藤さんと仲良くしたのも、
鉄と盛り上がったのも全部布石だよ。

ちな様リクエスト
「付き合い始めの頃は好きなのにツンツンして
上手く甘えられないけれど、ひたすら
甘やかされて最終的には銀さん無しじゃ
生きていけなくなっちゃう土方さん
(裏の有無はどちらでも)」

リクエストありがとうございました!




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