日が落ちて、忍と二人で夕飯を食べたりテレビを見たり、風呂に入ったり。或いは明日提出の課題をやったりと、そんなことをし始めてようやく「いつも通り」な日が戻ってきた気がした。

「トクベツな日、って、嬉しいけど案外疲れるもんだな……」

 というよりか、今までこんな風にたくさんの人に誕生日を祝ってもらうことがなかったからそう感じるのかもしれない。
 去年までは通信制の学校だったり、そもそも全然学校に行ってなかったりでリアルには友人なんてほとんどいなかった。必然的に誕生日を祝ってくれるのなんて家族くらいになる。
 だから、去年スーザンたちに祝ってもらったときだってかなり驚いたし嬉しかった。だというのに、今年はその比じゃない。疲れるのも当然だなとも思えた。

「――ああ、でも、なんつーか」
 こんなに幸せな疲労感は、生まれて初めてだ。そう思うとただただ嬉しかった。居てもたってもいられなくて折り畳み式の携帯を開く。ウェブに繋いでブックマークからツイッター画面を呼び起こす一連の流れは、もうすっかり指先に染みついてしまっていた。





ヤギ@meemee-yagisan
 今日はたくさん祝ってもらえてしあわせ こんなに誕生日祝ってもらったの初めてだわ





 ツイートボタンを押すことをためらったのは一瞬。僅かなロードの後に、一番上に俺のツイートが表示されたTLが現れる。やっぱりちょっと恥ずかしかったかな、と思うのもつかの間。
 掌の中で携帯が震えて、次々にリプライ通知メールを受信した。

『めーちゃん今日誕生日なの? おめでとう〜!』
『めーちゃん生誕祭FOOOOOOOOO!!!!!!L( ^ω^ )┘』
『はぴば! 良い一年を過ごせよ!』

 どれもこれも、もうすっかり顔なじみになったフォロワーたちからだ。アカウントだけで誰か解るくらいには親しい彼ら彼女らからのリプライの山に、自然口元が緩む。スーザンが風呂に入っていて居ない今、それを隠そうとは思わなかった。

「……どーも、」

 ありがとーございます、と声には出さず呟く。
 ああ、今日は本当に良い日だ。しみじみとそう思った時、また携帯が震える。新たなリプライかそれとも、とメールを開いて、目に飛び込んできたアカウントに俺は思わず目を見開いた。

「ワタルだ、」

 見ようか見まいか。逡巡の末に俺はカコカコと携帯を操作して、通知メールの続きを画面に表示させた。そして、





ワタル@lovelove−goat
 ヤギ、誕生日おめでとう お前が生まれてきてくれて良かった





 いつもの長文メールとは違った、それでも若干重たいリプライ。喜んだらいいのか苦笑したらいいのか、迷った末に俺は、メール画面からツイッター画面に戻って、そっと星形のボタンを押した。

「……まあ、ありがとう、でいいか」





- 7 -
[*前] | [次#]


topmokujinow
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -