昼休み、食堂にて。

「今日は俺たちのオゴリな!」

 どうしても食堂で食べたい、と言う西崎とシュウに付き合って久しぶりに食堂に来てみれば、席についての西崎の第一声はこれだった。どやあ、と胸を張る西崎に「ああ、これがしたかったのか」と食堂に拘った理由をすぐさま察する。

「めーちゃんが今日誕生日なんやって、鈴木から昨日聞いてな」
「それで、プレゼントとまではいかないけど何かできたらいいねって話になってさ」

 西崎の言葉に補足のように続けて、だから、とシュウは言った。

「俺たちの自己満足で悪いけど、付き合ってやってくれよ」

 俺が謙遜して断りの言葉を述べるだろうことを見越した上でのシュウの発言に、うっかりときめきかけてしまったのは気のせいじゃないと思う。

「ま、そんなわけやから、めーちゃんは値段とか気にせんでなんでも好きなもん頼みぃや!」

 再び「どやあ!」とキメ顔を作って見せた西崎に、盛大にイラッとしたのも、気のせいじゃない。うん、気のせいじゃない。

「……それじゃあ、」

 見慣れない食堂のメニュー表を適当に開き、俺は一番上に目を遣った。そこにババーンと写真と共にのっているのは「ハンバーグランチ」の文字。

「『ハンバーグランチ』」
「おう!」
「――と、」
「おう」
「『特選ジューシー和牛ステーキ』と『ふんわり(はぁと)オムライス〜デミグラスソースがけ〜』と『海鮮たっぷりピラフ』と『だしときのこの優しい雑炊』と『ごろごろ魚介のパエリア』と、あと……」

 タッチパネルの画面をフリックして次々にページをめくりながら、目に付いたメニューをかたっぱしから上げていく俺。メインディッシュの肉料理ページもご飯ものページも一緒くただ。
 いつまでも止まらない注文に、徐々に西崎の顔色が悪くなっていく。

「ちょちょちょ、めーちゃん待ちい!」

 ようやくストップコールが掛かったのは、もうすぐメニュー表のご飯ものページが終わろうかという時のことだった。正直ひたすらに料理名を読み上げるのにも疲れてきていた俺は、内心「ようやくか」とほっとする。

「め、めーちゃん、そんなに食べるん……? いや、食べれるならかまへんのやで! せやけどな、ちーっと、さすがにそんなにぎょおさん注文されるとな」

 財布の中身が、その、としどろもどろになる西崎。最初はそれを黙って見つめていた俺だけれど、だんだんと本気で焦っている様子がおかしくて我慢できなくなってくる。

「――ぶはっ」

 ついに耐え切れなくなって噴き出せば、きょとんとした顔の西崎がこちらを見返してくる。

「ばっかだな。嘘だよ、嘘!」
「なっ……めーちゃん、悪質やで!」
「いやだって、まさかこんなマジにするとは思わなかったし」

 ケラケラ笑う俺と、顔を真っ赤にして怒る西崎。その隣でシュウと忍は「だろうと思った」と口元の笑顔を隠せないままに呟き、自分の分の注文を済ませていた。





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