06.


(06の10あたりのおはなし)









 二木せんせーって、こんなんでも本当に「先生」なんだなぁ、と。
 いつもと変わらずけだるげな格好をせんせーを見つめながらすごく失礼極まりないことを考えていると、ふとそれに気付いたせんせーと目が合った。

「どうした、俺に惚れたか?」

 ニヤリと笑ってふざけたことを言い始めるせんせー。いつもなら「ねぇよ」と半笑いになりながらもバッサリ切り捨てているところだろう。
 けれど、冗談のように誤魔化しながらも、その実どこか本気っぽい雰囲気を漂わせるせんせーに、なぜだかそうすることができなくなってしまう。

「そうですね――って言ったら、せんせー、どうするワケ?」

 緩みそうな口元に力を入れて、敢えて真顔で問うてみる。正直言うと、試している、に近い。大人をからかうなんて我ながら悪趣味だなと内心苦笑していると、「え」と二木せんせーが動揺したような声をあげた。
 おや、と。ちょっと意外に思う。せんせーなら、からかってんじゃねぇよ、とか俺より一枚上手なところを見せてくるかと思ったのに。
 今のせんせーは、俺の言葉が本当なのかどうかをはかりかねて、どうしたらいいかわからないみたいだった。

 さっきまでの余裕が嘘みたいだ。きょろきょろと忙しなく視線の向きが変わるのを見ながら、クスリと笑みを零す。

「なーんて! ハハハ、冗談ですってばー!」

 それを合図に、さすがにかわいそうになってきてへらりと笑って言えば、たちまちせんせーはホッとしたような顔をした。あからさますぎる反応が少し複雑だけれど。

 冗談、ということにしておいてあげよう。
 今のところは、まだ。



(結論:めーちゃんが策士になる)

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