05.
(04の04あたりのおはなし)
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「ずっとお慕いしておりました。私にあなたを守らせてください」
俺みたいな一回り以上も年下の子ども相手に、騎士のようにひざまずいて、宮木さんはそう言った。とても正気とは思えない発言だけれど、宮木さんの表情は真剣そのもの。決して冗談なんかで言ったわけではないとわかる。
けれど、俺が「守られる」なんていうガラじゃないのも事実で。
どうしたものか。しばし頭を悩ませた結果、少しだけこの年上のストイックそうな彼をからかってみることにした。
「……宮木さん」
「はい」
「俺の従者になる、って。それ、どこまで含まれてるんですかね?」
「……どこまで、と、いいますと」
俺の言葉の意味をはかりかねてか、宮木さんは僅かに首を傾げた。つややかな黒髪がさらりと流れる。いつもは色のついたサングラスに隠された、今は露わになっている青い瞳には困惑の色が滲んでいた。
その目がまっすぐに俺だけを見つめている、という事実に、どうしようもなく優越感を覚えてしまう。
「つまり、どこまで『従者として』やってくれるのか、っていうことなんですけど」
言いながら、一歩前に踏み出す。周囲にたくさんの人がいるのは分かっていたけれど、今はその程度じゃ俺の行動は止まらなかった。
「……おい? 八木?」
宮木さんと視線を合わせるようにしゃがみ込めば、俺の行動を不審に思ったらしい二木せんせーの声が聞こえる。申し訳ないけれど、今は無視させてもらおう。
すっと手を伸ばして、僅かに顔にかかっていた宮木さんの髪を耳に掛けてやる。そのままの流れで後頭部を固定するように頭に手を添えれば、宮木さんは僅かに身じろぎした。
「重陽さ、んッ!?」
呼びかけを遮るように唇を塞ぐ。スーツに包まれた肩がびくりと震えた。僅かに抵抗を見せるように動いた手を反対の手で押さえながら、やわらかい唇をむさぼり続ける。
ようやく唇を離したときには、宮木さんは頬を紅潮させ、息苦しさにか目を潤ませていた。
――かわいいなぁ、と。
一回り以上年上の相手だってわかっていても思ってしまう。むくむくと沸いて出る加虐心を止めることなどできそうになかった。
「こういうコトも、教えてくれるんですかね? 手取り足取り、……腰取り?」
ねぇ、宮木さん?
(結論:めーちゃんがサドっぽくなる)
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